第1289話 お出迎え。(先手タケオ。)
シモーナ達が町の受付で言われた酒場の前にやって来る。
「シモーナ様でしょうか。」
ベイノンが声をかける。
ブレアとアーリスも近寄って来る。
「はい!魔王国のファロン子爵領から来たシモーナです。」
「はい、ようこそお出で下さいました。
キタミザトは所用で外しています。
すぐに戻って参りますので中でお待ちください。」
「あ、はい。
わかりました。おばさん、良いですか?」
「ええ、構いません。」
「では、後ろの人達に言ってきます。」
「わかったわ。
あの~・・・幌馬車や馬はどうしましょうか?」
シモーナが降りるとレバントがブレア達に聞く。
「はい、こちらで店の横に移動させておきますので部屋の方でゆっくりなさってください。」
「わかりました。」
レバントが頷くのだった。
・・
・
シモーナ一行をブレアが先導して部屋の前に来る。
「こちらでお待ちください。」
と後ろのシモーナ達に言い、ブレアが部屋の扉をノックし返答を確認して扉を開ける。
中は小さな会議室とも取れる少し多めの人数で宴会が出来るようになっている個室だった。
「失礼します。
魔王国からの商隊の方々をお連れしました。」
「はい、ご苦労様です。
皆様、お疲れ様です。キタミザトはただいま所用で外しています。
すぐに戻りますから、お茶でも飲んで待っていましょう。
さ、お座りになってください。」
「はい。
では、シモーナ様はこちらでお願いします。」
ベイノンがシモーナを案内する。
「はい!ありがとうございます。」
シモーナが恐々座ると次々と他の面々も席に案内される。
「あの・・・失礼ですが、お二方ともキタミザト子爵様の奥方様ですか?」
シモーナがアリスに聞く。
「え?」
「ん?」
アリスとエリカが顔を見合わせる。
2人して笑いだす。
「いえ、私が妻になります。
こちらの女性は今回の受け渡しの立会人です。
私は・・・あ~・・・自己紹介はタケオ様が戻ってからにしましょう。」
アリスが楽しそうに答える。
「これはとんだ失礼をいたしました。
ご容赦願います。」
シモーナが頭を下げる。
「いえいえ構いません。
それよりも旅路はどうでしたか?
私達は基本的に他の町にも行かない事がほとんどなのです。
越境するとはどんな感じなのですか?」
「そうですね。
これと言って何か感傷があるというわけでは」
アリスとシモーナが話をし始めるのだった。
一方の付いて来た面々はというと。
「・・・じー・・・」
「っ・・・ダ・・・ダニエラ。あれって。」
「言うな・・・わかっている。」
クゥがヴァレーリとブリアーニをガン見していた。
「「・・・」」
フレッディとカストは目を瞑っている。
もう我関せずのようだ。
「♪」
タローマティは楽しそう。
「・・・おい、タローマティ。」
ヴァレーリがコソッと聞いて来る。
「バカ主、何ですか?」
タローマティが呆れながら答える。
「バカとは何だ。」
「いえ・・・」
そう言いながらタローマティがアリスの肩にいる正体不明の精霊を一瞥するが、こっちの名前が聞こえているはずなのに表情も変えずにこっちを観察しているだけだった。
「はぁ・・・なんですか?主。」
「なぜにドラゴンが2体いるんだ?」
「知りませんよ。
主はさっき感知していましたよね?」
「あぁ、デカいのは気にしていたが、部屋の中にちっこいのが居るとは・・・
デカいのに気を配っていたのは確かだがこっちを気にはしていなかった。」
「主のミスですし、それにわかっていたからといって何か出来たのですか?」
「それは出来んが。」
「ならしょうがないと諦めるしかないでしょう。」
「そうだな・・・
だそうだカールラ。」
「はぁ・・了解。」
ヴァレーリとブリアーニは諦めるのだった。
・・
・
扉がノックされアリスが返事をすると武雄と武雄に抱っこされたビエラとマイヤーが入って来る。
「失礼します。
遅れて申し訳ありません。」
「失礼します。」
「・・・あ゛!?」
武雄とマイヤーは軽く会釈をしたが、ビエラはヴァレーリを見るなり指で指して怒る。
「主~・・・ビエラが『陛下が何でいるんだ!?』とか言っていますよ。」
ミアが胸ポケットから顔を出して武雄に報告する。
「・・・ビエラか・・・」
ヴァレーリはその言葉しか言えない心の中では「やっぱりお前か、しかし随分形が変わったな」と思っている。
「・・・ビエラ・・・一国の王が一応敵対している国に来るわけないでしょう?
それとお客様を指さない。」
「あ~?」
「主、『じゃあどうしろと?』と言っています。」
「そもそも言わない。」
「あ!」
ビエラが「そういう事じゃない」と怒っている。
「じゃあ・・・手をこうやって掌を軽く上を向けて『こちらが陛下です』とか言っておきなさい。
それと・・・普通一国の王・・・女性だから女王と呼ばれているかもしれないですが、そういった人が物の受け渡しで来るわけないでしょう?
一国家がそんな暇なわけないでしょうが。」
「あ~!」
ビエラが武雄が言ったように掌を軽く上に向けて「いや!だってこいつ魔王国王陛下だよ!」と言っている。
「主、ビエラは魔王国王陛下だと言い張っています。」
「わかった、わかった。
後で聞いてあげますからね。」
武雄が軽く流す。
「むぅ・・・」
ビエラがむくれる。
その言葉を聞いてフレッディとカストが大きく頷き。
「「・・・」」
ヴァレーリとブリアーニは軽く俯くのだった。
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