第1287話 151日目 来たね。(魔王国の者接近中)
昼前、武雄達は街道から東町に入る分岐点から50mくらい離れた草原に陣取っていた。
「・・・うん、林の中より良いですね。」
武雄がさっきまで居た林の中の事を思い出していた。
「所長、やはり身を隠すには林ではないでしょうか。」
「マイヤー様の言う通りです。」
「・・・襲撃するわけではないのですから良いんですよ。
こっちの方が日当たり良いし・・・伏せながら見るにはこっちでしょう。」
武雄が目線を落とすとそこには小銃改1と小銃改3がレバーを引かれて中に薬きょうがない状態でいつでも構えられるようにされていた。
「あ~♪」
「主、ビエラがあっちから集団を感知したようですよ。」
ミアが言ってくる。
とすかさずヴィクターが小銃改1で伏せ撃ちの体勢を取り街道の奥を見ている。
ちなみにビエラは武雄に同行し、クゥはアリスと同行していた。
「来ましたか・・・ミアはどうですか?」
「私の方はまだです。
・・・まだです。」
「ビエラ感知の距離は?」
「あ~・・・あ。」
「ビエラ的に距離はあまり気にしていないそうです。
『こっちかぁ』程度だそうで。
ドラゴンは移動速度が速いですから距離という物を気にしていないみたいですね。」
「あ?」
「私達妖精は逃げる為に距離と種別は確認していますよ。
200mで十分です。」
「あ~・・・あ゛!?・・・あー・・・」
ビエラが最初はミアの言葉にウンウン頷いていたが驚いた声を出した瞬間から眉間に皺を寄せている。
「どうしましたか?」
武雄がビエラを見る。
「あー・・・」
「ビエラ・・・『尻が疼く』とは何ですか・・・
もっと良い言い回しが無かったのですか?」
ミアが呆れている。
「ビエラ的に凶悪そうなのが来たのですか?」
「あ~・・・タケオ、相手と敵、ダメ・・・あー。」
ビエラが直接言おうとしたが諦めてミアに託す。
「ふむふむ・・・
主、ビエラ的に『魔物の中でも高位だから敵対厳禁』だそうです。」
「ビエラをもってしても相当危険と・・・
ヴィクター?」
「・・・なんとなく一団としては視認していますが、個別の判断は出来ません。
見た感じ移動速度は標準的な商隊と判断します。」
「はい、了解。
マイヤーさんはどう思いますか?」
「率直には言うと・・・いや、なんでもありません。
想定の範囲内と言えば範囲内です。
問題ないと思います。」
「範囲内ですか・・・
悪い方に範囲内というのは面倒ですね。」
武雄とマイヤーが何とも言えない顔をさせるのだった。
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会談場所の酒場にて。
「アリス殿、懐中時計良いですね。」
エリカがアリスの懐中時計を見ながら言っている。
「ステノ技研には連日注文書が来ているそうですよ。」
「私の分いつ来るんだろう・・・」
「頼んでいるのですか?」
「ええ、ウィリアム殿下が第3皇子一家の幹部用としてまずは15個を依頼しているはずなんですよ。」
「んー・・・月産20個は達成できたとは聞いていますけど。」
「他の皇子一家も頼んでいそうだし、王城内の各局でも頼んでいるそうなんです。」
「あ~・・・大変そうですね。
こればっかりは無理強いは出来ませんから・・・」
「異動までに手に入るかなぁ。」
エリカが難しい顔をさせる。
「きゅ!
きゅ~・・・」
「アリス、エリカ、クゥが来たって。
ついでにたぶん結構高位の魔物かなぁと言っているわ。」
チビコノハが言う。
「そうですか。
でもクゥちゃん、まだ遠いでしょう?」
「きゅ。」
クゥが頷く。
「感知した距離はわからないけど・・・順調という事ですね。」
エリカが懐中時計を見ながら頷く。
「ベイノン殿、皆に連絡。
あと1時間程度で来ると伝えてください。
これから試験小隊の方々は最終確認をここでしますから集合。」
「はっ!」
ベイノンが返事をし、皆を呼びに行くのだった。
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シモーナ一行。
「もうすぐ東町ですね。」
「やっとかぁ。
着いたら会談かな?」
「どうでしょうか。
でも一応、キタミザト子爵様が来ているそうですからね。」
「服は・・・これで良いよね?」
「基本的には受け渡しですから畏まらなくても良いと思いますし・・・私は持ってきて居ませんよ?
おばさん、それしか持ってきていないでしょう?」
「それはそうだけど。」
「なら気にしても仕方ないじゃないですか。」
「貴族様かぁ・・・人間の貴族・・・大丈夫かな?」
「平気じゃないですか?
魔王国と交易をしてくれるのですから寛容だと思いますし、昨日の村でも圧政はしていませんでしたし。」
「・・・うん、そうね。
普通である事を願うわ。」
シモーナとレバントが気楽な会話をしている。
「・・・」
ヴァレーリが眉間に皺を寄せながら馬に乗っている。
「ダニエラ・・・どうしたの?」
ブリアーニが聞いてくる。
「いや・・・フレッディ、カスト、第3種警戒発令。」
ヴァレーリがボソッと言う。
「「!?」」
フレッディとカストが驚きの顔をさせる。
「だ・・・第3種ですか!?」
「すぐに!」
フレッディが護衛達に耳打ちし始めると護衛達が緊張をし始める。
「・・・ヴァレーリ陛下?」
ブリアーニが小声で聞いて来る。
「ブリアーニ、進行方向にドラゴンが居るぞ。」
「嘘・・・ここアズパール王国でしょう?」
「あぁ・・・まさかこんな所でドラゴンとはな・・・
はぁ・・・無事に通れたら良いのだが・・・気を抜くな。」
「わかったわ。」
ブリアーニが真剣に頷くのだった。
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