第1278話 149日目 練るか。(炊くという事を考えてみよう。)
タケオとアリス、エリカとカサンドラは同室。
ヴィクターとアーリスとベイノン、マイヤーとオールストンとブレアが同室になっていた。
タケオ組とエリカ組は2人部屋、ヴィクター組とマイヤー組は4人部屋を借りていた。
2人部屋の武雄とアリスはパナとコノハの今日の話を寝る前のティータイムで聞いていた。
「タケオ様、コノハの話はどう思いますか?
私達がするんですって。」
「タケオ、ご飯を食べたければ努力するしかないわ。」
「しょうがないですよ。」
アリスは不満を言い、コノハとパナは「仕方ないじゃん」と言っていた。
「まぁ精霊達だけでさせる訳にもいきませんからね。
そこはアリスとエリカさんとカサンドラさんに協力して貰うしかないでしょう。」
「そうですか・・・まぁ美味しい物が食べれるのなら頑張りますけど・・・」
アリスが武雄に擁護されないので渋々コノハに協力をする事を承諾する。
「ちなみにですが、コノハ、籾摺りはした事ないのですが、どんな物なのですか?」
タケオがコノハに聞く。
「簡単に言うと外の皮を取るのよ。
これが大変でね。
米用の木臼でやらないといけないの。」
「コノハ、小麦とは違うのですか?
あれも臼を使いますよね?」
「ん~・・・何て言えば・・・
小麦は粉にする事を目的にしているから皮の取り方はあまり気にしなくても良いんだけど。
米という穀物は中の粒の形を残して皮だけ取り除きたいのよ。
なので上下で1粒分の良い感じの隙間がないといけないし、ある程度重さもなくちゃいけない。
とまぁ、意外と食べるまでの加工に神経を使う穀物ね。
でも同じ重さの小麦と比べれば米の方が断然エネルギーになるのよ。
腹持ちも良いし、良い穀物なのよ。」
コノハが言う。
「・・・ベルテ一家にも聞きましたが米が主食じゃないのですよね・・・
それに米を小麦と同様に挽いて粉にして水を加えて団子にするくらいの材料だそうですよ。」
「ん~・・・それはちょっとおかしいわね。
煮るというのはわかるのよ。
穀物の1つではあるから他の豆とかと煮込むとかなら不思議ではないしね。
でも挽く事のみをするのかぁ・・・ちょっと経緯を知りたいかな。」
コノハが考えながら言う。
「・・・いや、待てよ・・・」
タケオが考えながら呟く。
「ん?」
コノハが武雄に顔を向ける。
「小麦が先にあった場合はどう思いますか?」
「米より先に?」
コノハが首を傾げる。
「なら小麦のように粉にするのではないですか?」
アリスが言う。
「何とも言えないなぁ。
でも確かに小麦を粉にするという考えはたぶん他の穀物をパンとかにする為に磨り潰す加工方法の延長上から来るはずなのよ。
でも米の炊くというのは煮込む事の延長上にあると思うわ。」
「小豆や大豆もそうですけど・・・
日本人って炊くの好きですよね。
固い穀物を柔らかくしようとしたのでしょうか。」
「そうね。
そうかもしれないわね。
あと農耕型集落か狩猟型集落かという違いも多少はあるかもね。
米が作られる地域は農耕型集落が多いはずね。」
「農耕型・・・人々が定住すると考えると農業をしている間に、固い穀物をとろ火で煮込んでおくという調理法が出来ますね。
逆に狩猟型は確かに腐敗が早そうな獣肉をすぐに調理しなくてはならないし、一気に火をかけて焼いてしまうのが簡単な調理法となってそれに合わせて小麦や穀物も一気に焼けるように粉状態にしておくと。
うん、確かに集落がどういった生活をしているかによって穀物の扱い方が違うだろうとは想像が付きますね。」
「そうですね。」
アリスも頷く。
「となると、エルフは粉にする事を日常的にしてきて、米を入手した。
小麦のように粉にしてもパンみたいに膨らまないし、水を入れての団子くらいにしか出来ない。
なら小麦一辺倒になりますね。
エルヴィス領のライ麦みたいな扱いですね。」
武雄が頷く。
「なるほど、予備の主食ですね。」
アリスが頷く。
「スミス坊ちゃんのように蔵で燻ぶっていたのを売れたとなると喜びもするか。」
「ですね。
エルヴィス伯爵家もだいぶ助かったようですし、新たな売り先まで確保出来たのはありがたいですよね。
タケオ様、米も売れるのでしょうか?」
「ん~・・・コノハ、炊くのを気が付かない事なんてあるのですかね?」
「あり得ると思うわ。
だって小麦は粉にするのが割と楽だからね。
米のように気を使う必要もないとなると挽く事しか頭にないというのは強ち否定は出来ないわ。
あとはジャガイモとかと煮込むというのはあるだろうけど・・・米とジャガイモを一緒に煮込んだら・・・べとべとになりそうね。」
「想像したくないですね。
という事は知らない可能性が高いと。」
「そうね。そう思っていても良いかもね。
エルフの国にも普及させる?」
「・・・教えなくてもとは思いますが、唯一の生産地ですからね。
作付けを止めてしまう可能性もあると今後こちらのみでの生産となると供給体制が些か不安ですよね。」
「そうね。
定期的に定数確保したいわよね。」
コノハが頷く。
「ふむ・・・コノハ、木臼はありますか?」
「あるわよ。
見る?」
「ええ、構造を見てみたいですね。」
「お、タケオ気になっちゃう?」
「臼は水車や風車で自動で動かすのが一般的ですけど、今はミシンのおかげで半自動が可能になりましたからね。
これを使えるなら使わない手はありません。
それに実物を当日に見せられてもやり方が想像出来ませんからね。」
「あ、なるほど。
じゃあ寝る前にタケオに木臼を見せるか。」
コノハがそう言いながらどこからともなく木臼を出すのだった。
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