第1277話 そんなこんなで武雄は書類作成。(コノハは主をこき使う。)
タケオとヴィクターは早々に東町局長との会談を終え、宿に戻って割り振られた部屋で書き物をしていた。
「・・・こうですか?」
「はい、この通りです。」
パナが武雄が書いている資料を見て頷く。
「パナ殿、先ほどのシイタケの栽培ですが、コノハ殿が積極的にするのはなんとなく想像が付くのですが、パナ殿が積極的になるのはどうしてですか?」
ヴィクターも武雄と一緒にシイタケ栽培の資料を作成していた。
正確には東町に提出するのはヴィクターが書いた物になる為だった。
「私達医者はある意味菌と戦い、使う事もある為、身近な存在です。
菌から良い薬が出来る事はままありますのでね。
その過程で菌の栽培、培養方法というのも習得するのです。
それにコノハに任せるとキノコ栽培が大規模になり過ぎる可能性がありましたからね。
今は規模よりも始める事が大事だと思い私が口を出す事にしました。
後でコノハにもこの内容は見せて確認しないといけないでしょう。」
パナが頷く。
「パナ、確かペニシリンはカビから発見されたのでしたよね?」
「そうですね。
ですが、今は作れたとしても普及は難しいでしょう。
ペニシリンは濃度がそれなりに高くないと効能は十分に発揮できませんし、保存条件の要求水準が高いです。
今はケアが出来る魔法師を雇って常駐させた方が堅実です。」
「そうなのですね。
ちなみにエリカさんと民間療法の話をしたのですよね。
まだ結果が来ませんがどうでしたか?」
「とりあえず、便秘に効く薬草と下痢に効く薬草と虫下しの薬草は手に入りそうです。
あとは手洗いを徹底するようにと言っておきました。」
「・・・うん、手洗いはわかりますが、虫下しですか?」
「ええ、タケオはあまり馴染みないかもしれませんが、この世界の畑で採れた野菜には寄生虫の卵があったりするので年に1回くらいは飲んでいた方が良いですね。」
「そう言えば昔、家の畑で採れた野菜を食べている人達は小学校のプール開き前に飲んでいましたね。
ギョウチュウ検査もしていましたし。」
「セロハンぺったん。」
「何故知っていますかね?
あれ日本人しか知らないはずですけど。」
「そういうわけではないですよ。
まぁ今の所、伯爵家内にはいないようですけど。」
「年に1回はした方が良さそうですね。」
「ええ、お勧めです。
セロハン作った方が良いですか?」
「誰が検査するんですか。
年に1回の虫下しで様子見で良いでしょう。」
「わかりました。アリスやエリカに言っておきます。」
パナが頷くのだった。
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「アリス!美味しい!」
串に刺された川魚の塩焼きを頬張りながらコノハがアリスに感想を言っている。
「コノハ・・・何本目ですか・・・食べすぎですよ?」
「アリス何を言ってるの!明日は交渉でしょう?
交渉が長引くかもしれないし、その後もやる事いっぱいだから食べて力付けなきゃ!」
「いや交渉は明後日よ?」
「え?」
「え?」
アリスとコノハが顔を見合せる。
「はは、明日は事前準備ですよ。」
「場作りでしたね。」
エリカとカサンドラが苦笑しながら魚を食べている。
「・・・今日はこれくらいにしようかな。」
コノハがゆっくりと串を皿に置きながら言う。
「それに交渉はタケオ様がします。
私達は付き添いですよ?
ねぇ、エリカさん。」
「そうですね。
あと魔王国の幹部に近い者を見て他国への認識を高める目的がありますよね。」
「何言ってるの、一番大切なのは米の受け入れ検査よ!
間違いなく米が来たか見ないといけないわ!」
「検査するのはなんとなくわかりますが・・・500kg見るのですか?」
「そうよ。
初回は全数検査が当たり前よ。」
「・・・どうやって500kgも?」
アリスが考えながら言う。
「米が入っている袋を詰め替えるのよ。
向こうの袋からこっちが用意した袋にね。
米だけを移動し、ゴミは違う袋に入れる。
だから底が浅い皿で見てから入れるのよ。」
「地道ね。」
「石なんか入っている可能性があるからね。
地道で結構。
アリスとエリカとカサンドラもこっちだからね。」
「「「えええ!?」」」
3人が驚く。
「何驚いているの?
精霊が一人で出来るわけないでしょう?
交渉の場に居ても良いけどその後は3人で袋の詰め替えよ。
私も補助としてはいるから4人でね。」
「・・・しないとダメ?」
「ダメ。」
「私は見学したいのですが。」
「却下。」
「私は護衛なんですけど。」
「護衛中でも手は違う事が出来るでしょう?」
「「「・・・」」」
3人とも難しい顔をさせている。
「タケオは米が手に入ったら絶対すぐに試作すると思うんだけどなぁ♪」
「はぁ・・・ちなみに想定作業時間は?」
アリスが諦めながら聞いて来る。
「ん~・・・基本は移すだけで大きなゴミを取るのが目的だからね。
3時間もあれば終わると思うわよ?」
「ちなみにタケオ様には何をさせるのですか?」
「籾摺りね。
すり鉢とすりこぎ棒は・・・やめよう、時間がかかるわ。
木臼貸そうっと。
タケオとヴィクターで6合か7合分は作って貰おうかな。
玄米で・・・ん~・・・精米は無理かぁ。
とりあえず玄米で作ってみるかなぁ。」
コノハが工程を考えるのだがアリス達は見守る事しか出来ないのだった。
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