第1274話 トレーシー達到着。
エルヴィス伯爵邸がある街の城門。
「と・・・到着した。」
ジーニーが御者台で顔を伏せて呟く。
皆に顔は見せてないが疲れた顔をさせているのは当然だった。
「ん~・・・時間が少しかかったね。」
前の幌馬車からトレーシーがやって来てジーニーに声をかけている。
「はい・・・途中で車軸がおかしくならなければ予定通りでしたね。」
「まぁね。
でも、長距離移動ではあって当たり前だよ。
それなりに出来ていたしね。」
「おーい、トレーシー、出迎えが来てるから一緒に挨拶してくれ。
卒業生達も一緒に。」
「わかった。」
「「はい!」」
荷台からも返事があり、慌ただしく降りてくるのだった。
・・
・
「気を付け!」
アンダーセンとトレーシーの子供達以外の皆が一堂に並びトレーシーが号令をかけると皆が背を正す。
目の前には、アーキン達4名と兵士長と小隊長2名が並んでいる。
アーキン達が城門横でトレーシーを待っている時に兵士長達が話しかけ、フレデリックから軍務局にも連絡があり兵士長達も待っている事が判明し、一緒に城門横の兵士詰め所でのんびりと待っていたのだ。
「第二研究所所属アンダーセン以下4名とその家族、到着しました。
異常、事故共にありません。」
アンダーセンが1歩前に出て敬礼をし報告をする。
「・・・あ!
エルヴィス家所属内定者 魔法師専門学院卒業生3名到着しました!」
アンダーセンが研究所の事しか言わなくて一瞬、ジーニーが固まってしまっていたが直ぐに1歩出て報告する。
「私はエルヴィス伯爵家兵士長のアバン・デビットです。
お疲れ様でした。
無事なようで何よりです。
積もる話もありますが、今日は止めましょう。
研究所の方々は試験小隊のアーキン殿達と打ち合わせをしてください。
卒業生3名は私達と話をしましょう。
以上です。」
兵士長が皆に話す。
「はい。」
「はっ!」
皆が敬礼をする。
「では、えーっと・・・卒業生はこっちに。」
小隊長が手を振っている。
「はーい、お疲れ様です。」
ブルックが軽く挙手の敬礼をして声をかける。
「ブルック、それは?」
アンダーセンが聞いて来る。
「研究所での敬礼はこういう形になりました。
以後、お気を付けを。
さて・・・この子達が新人ですね。
このままアンダーセン殿とトレーシー殿の部屋に行って貴女達の部屋にも行きます。
2人とも荷物をアンダーセン殿達の馬車に入れてください。
まぁ大した量は無いと思いますが、素早くね。」
「「はい!」」
パメラとケイが返事をして幌馬車に走って行く。
「元気だわ・・・
奥様方、長旅ご苦労様です。
部屋はこの後、行きますのでもう少しお待ちください。」
ブルックが後ろに居るセシリーとデリアに頭を下げる。
「いや、構いません。
それで・・・キタミザト殿はこちらには居ないようなのですが、明日とかですか?」
セシリーが質問する。
「あ~・・・所長やマイヤー殿達先行してきた試験小隊員は急用で東町に行っています。
戻りは1週間後程度ですのでそれまでは面会は出来ません。
エルヴィス伯爵との面会が戻られたらありますので、その時までお待ちください。」
「所長とマイヤー殿達が?」
アンダーセンが口には出さないが「戦か?」と聞いて来る。
「いえ、魔王国との交易で初回の米が手に入るので受け取りに行っています。
ついでにウォルトウィスキーとウスターソースを売り込むのではないでしょうか。」
「はぁ・・・いつもの所長だな。」
アンダーセンが緊張を解くのだった。
「えーっと・・・まずはトレーシー殿のご一家の部屋からですね。
その次にアンダーセン殿のご一家の部屋です。
待っている間に準備は終わらせています。」
とパメラとケイが自分の荷物を持って戻って来る。
「荷物持ってきました!」
ケイが報告する。
「トレーシー、子供達に隙間を作るように言ってくれるか?」
「わかった。」
トレーシーがパメラとケイと一緒に幌馬車の荷台に向かって行く。
「今日は部屋に行って終わりか?」
「はい、明日の昼ぐらいに試験小隊の訓練場に来てください。
その時に軽く説明をして、制服を作りに行き、各所の見学をします。
地図は部屋に置いておきましたので確認してください。
ご家族はご自由にされて結構ですが、まずは街の散策でしょう。」
「了解した。」
アンダーセンが頷く。
「・・・アーキンさん、普通出迎えってこうなのですか?」
ミルコが首を傾げながら聞いている。
「そうだぞ。
どうした?」
「いや、前回、ミア殿達が居ましたから。」
「今日は所長もミア殿もビエラ殿も居ないからなぁ・・・居たら同じことをしただろうな。」
「・・・アーキン、マイヤー殿達は何をされたんだ?」
「所長とアリス殿とエリカ殿、ミア殿とビエラ殿とクゥ殿、コラ殿と一族、鷲の一族、狼の一族、ベルテ一家と夕霧殿達が整然と並んでお出迎えしていましたが?
されたかったですか?」
「・・・止めてくれ。」
「でしょうね。
マイヤー殿達のご家族の顔が引きつっていましたね。
それと子供達はアリス殿と握手をしていましたよ?」
「あ、それは羨ましい!」
後ろのデリアが声を上げる。
「アリス殿も所長と一緒に東町に行きましたので、後日の面会になります。」
「あ、わかりました。」
「積み込み終わったよ。
ついでに2人も積んでおいた。」
トレーシーが戻って来る。
「・・・あっちには挨拶は不要か?」
アンダーセンが兵士長達を見ながら言う。
「はい、あっちとは話が終わっています。
こっちはこっちで動いて良いそうです。
あ、ちなみに受付これからしますから。」
「あぁそこは構わない。」
「はい、では、幌馬車に乗って移動しましょう。」
ブルックが号令をかけるのだった。
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