第1272話 結構早く着きそうだ。(魔王国から誰が来るのだろう。)
幌馬車の先を行く武雄達は。
「・・・少し早いですか・・・」
マイヤーが馬を操りながら器用に地図を見ている。
「マイヤーさん、器用ですね。
私なんて馬に乗るだけでも必死です。」
「所長は乗り始めて数か月じゃないですか。
私はもう数十年ですよ。
それに見ていると言っても大まかに見ていて現在地の確認程度です。
これぐらいそのうち出来ますよ。」
「俺出来ないや。」
後ろのベイノンが手を挙げている。
「お前は出来ないとおかしい。
はぁ・・・それにしても所長が居て良かったです。
休憩時に同行者全員と速度が落ちて来たら馬達にケアをして貰って助かります。
私達でも出来ますが他の馬や同行者へまでする余裕はあまりないので。」
「私は回数制限ないですからね。
これぐらいは手伝わないと。
カトランダ帝国に行く時は禁止されましたが、今回は良いでしょう?」
「ええ、助かります。
それとヴィクター殿はどうされますか?」
マイヤーが「会わせます?」と聞いてくる。
「・・・少なからずヴィクターは妹さんには会わせるべきだとは思っていました。
先方には一応生存は知らせていますが、昨日まで普通に話していたのに次の日には居なく、手紙が来たと思ったら隣国で奴隷の執事です。
兄妹なのです直接言いたい事もあるでしょう。」
「まぁ・・・山ほど言いたい事があるでしょう。
特にヴィクター殿は領主でしたし、一家全員でですからね・・・」
マイヤーが複雑な顔をさせる。
「ですが、今回向こうも誰かを連れて来ています。」
「魔王国国王陛下とブリアーニ国女王陛下の侍女ですか・・・
内容はヴィクター殿より説明されていますが・・・所長も勘案しているでしょうが、一番の問題は本当に侍女なのかですね?」
「確か現魔王国王は武力の頂点でしたね。
ヴィクターの妹のシモーナさんを通じて王都中央の陛下が買い求めるであろう所に卸して貰っているはずです。」
「・・・魔王国の中央に卸して貰った。
それでウォルトウィスキーの追加の要請を出してきた・・・明らかに向こうの魔王国王がこのウォルトウィスキーを要望している・・・そして魔王国王の選定が開始されている可能性がある。」
「・・・最短で1年での交代を実現する為に動いているのなら、実務的には引継ぎが始まってもおかしくないですよね。」
「そうですね。
今の王都に近い状況でしょう。
ウィリアム殿下が出て行きクリフ殿下が入るのと同様な・・・いやもっと面倒な量の仕事をしているはずです。
王の交代というのは紙数枚で終わる物ではなく、色々今から作らないといけない資料もあるはずです。」
「となると、陛下自身が来るとは考えられない。
だが・・・陛下が欲しがっている酒か・・・アランさんなら誰を行かせると思いますか?」
「所長では?」
「却下。次点でお願いします。」
「総長でしょうか。
確実に持って来させるのであれば。」
「確か・・・文官という考えは無くて、王軍が文官も武官もこなしていると言っていたような。」
「両方やるなんて無茶ですね。
どちらかに専念させた方が良いと思いますけどね。」
「王軍の中が組織立っているのでしょう。
第何個軍があるかは知りませんが・・・
総監局、経済局、軍務局・・・名称が違うだけか、もしくは各軍で全ての部署を内包しているか、どちらかでしょう。」
「確かテーア殿は第4軍と言っていましたね。」
「ウィリプ連合国に拠点を作れるくらいの組織ですね。
ついでに言えばカトランダ帝国には他の軍が対応していたと言っていましたよね。」
「・・・知識面の情報を流す・・・
前者でも後者でもあり得ますね。」
「ええ、まぁ今はどこが来るかの方が重要ですね。
どこが来るにしても信任が厚いでしょうね。」
「もしかして一緒に来る貴族の執事というのが本命なのかもしれませんね。」
「あぁ・・・私がしたような事ですね。
侍女と護衛はその方の補助ですか。
あり得なくもないですが、少々違和感がありますね。」
「そうですね、私が言っていてなんですが、ブリアーニ国の侍女が浮きますね。
違う見方をすると隣国の侍女が行く為の護衛とか。」
「ほぼ確実にエルフですからね。
ウィリプ連合国の事を思い出すと人間には警戒してそうです。
うん、確かにエルフの護衛はあり得ますか。
でもそうすると魔王国の東側の貴族の者を付ける意味がないと思うのですよね。」
「確かに。
なら両方とかはどうでしょうか?」
「エルフと東側の貴族の護衛・・・違和感がまだ残っていますね。
ん~・・・どの想定も何かしら違和感がありますね。」
「所長、マイヤー殿。
もしかしてエルフの国の女王と魔王国の陛下が来るんじゃないですか?
それで供回りで王都に来ていた貴族が同伴するとかはどうですか。」
「それはないでしょう。」
「それはないだろう。」
ベイノンの言葉に武雄とマイヤーが拒否する。
「いや、だってアズパール王国で仮定するなら。
クリフ殿下かウィリアム殿下が陛下と一緒に魔王国に行くような物と考えられます。
そうすれば西側の誰かが王都に居たら一緒に来やしませんかね?」
「・・・たかが穀物の輸送と本数が少ないので希少と思われる酒の為に女王と国王が来る?
無いとは言いませんが、普通ならしないと考えますよ。
ん~・・・どの想定もいまいちですね。想定をしても意味がないという事ですかね。
なら現状では侍女と執事が各々の仕える所で結構高位であるだろうとしておいて良いのかもしれませんね。」
「「そうですね。」」
武雄の妥協案にマイヤーとベイノンが頷くのだった。
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