第1267話 手配をしに行こう。(行程を見る者と精神狂化させる者。)
武雄がローの店からエルヴィス邸にと向かって結構ゆっくりと歩いている。
「あ~・・・結局、何軒回ったんだっけ・・・
まぁ予定通りの本数が手に入ったから良いか。
それにブルックさんが幌馬車を持って来てローさんの酒屋の人達と一工夫しながらウォルトウィスキーを載せて、ブレアさんとオールストンさんが何やら道具を用立てたからと荷馬車に積み込んで伯爵邸に向かったんだよね。
・・・あれ?なんで歩いているんだろう?
まぁ近いから良いんですけど・・・」
武雄が首を傾げながら歩いている。
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総監部のキタミザト家が間借りしている一部屋にて、ヴィクター、マイヤー、ベイノンが地図を見ながら話し合いをしている。
「ん~・・・総監部の情報ですとこの辺に深めの轍があるそうです。
あとは・・・ここが少しあるとの情報ですね。」
「最初の所までは・・・日暮れ前に通れそうですね。」
「はい、あとは夜になった際の通過となりますが・・・幌馬車ですよね。
一応今回の人員は試験小隊側は問題なく出来ますが、所長達は初めてでしょうからゆっくりと行きましょう。」
「了解です。
マイヤー様、休みの頻度は高めますか?」
「そうですね・・・1時間進んで10分休憩が精々でしょうかね。
そうしないと夜の22時までに着きません。」
「マイヤー殿の行程も結構キツキツですね。
日中に出来るだけ距離を稼ぐとは。
いや、言っている事は真っ当ですし、そうしないと時間の節約が出来ないのはわかっているのですけど。」
「東町まで馬で1日、朝出て夕方に着く距離となると、馬車なら東町の手前の村に泊まって早朝出て次の日の昼前に着くのが普通と考えるでしょう。
それを1日中にとなると・・・日中にどれだけ稼げるかが夜の到着時間に関係するのは当然。
所長に頼んで休憩毎に馬にケアしていくか。」
「確かに・・・それも良いですね。
それは皆でお願いしましょうか。」
「そうだな。
ヴィクター殿、休憩毎に我々にはスープでお願いします。」
「畏まりました。
料理長に伝えます。」
「あと・・・そうだな。
幌馬車で仮眠する組を作りますか?」
ベイノンが言う。
「ん~・・・夜間行軍用の松明材がある上にか?」
「シーツ買いましょう。」
「3、4枚くらい重ねればまだ仮眠は出来るかもな。
あと薄手の毛布もか。
ベイノン、ブルック達は調達を終えているはずだから、仮眠の支度をさせてくれ。」
「わかりました。
すぐに言ってきます。」
とベイノンが会議室を出て行く。
「ふむ・・・馬にケアをするとして・・・ブルック達の事だからちゃんと予備の車軸は入れるだろうから少しの無理は出来ると考えて・・・やはり夜間で距離を縮めるのが得策ですかね。」
「日中にどこまで行けるか・・・最大はどこですか?」
「馬と同じ速度が常に出せると仮定するなら東町まで、ですが、幌馬車は車軸への負担もありますから休憩と車軸の交換も視野に入れると・・・
東町との間の村を昼でしょうか。
そこで昼食と整備、そうすれば夜になって速度を落としても21時ぐらいには着けるはずなんですよね。
余裕を見て夜の部分は休みを多く入れるとして22時です。」
「なるほど・・・
私も御者としては夜間は初めてですから・・・試験小隊の方々には夜間は御者の方をお願いした方が良いのでしょうか。」
「そうですね、ヴィクター殿には馬で先導して貰った方が良いかもしれませんね。
ですが、それも現地で考えながらにしましょう。」
「はい。」
マイヤーとヴィクターが頷きながら話をするのだった。
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エルヴィス邸の玄関前。
「あ~?」
「「「!?」」」
アーキン達が用意した馬の前をクゥを抱えたビエラが謁見していた。
馬たちは直立不動だった。
「ビエラ~・・・馬達を脅してどうするのですか?」
ミアがブルックの用意した幌馬車の御者台に座りながら呆れている。
「あ?」
「脅していないって言っても凄く馬達が怯えていますよ?」
「あ!」
「「ヒヒンッ!」」
ビエラが号令すると馬達がビシッとする。
「あ~!」
そしてミアにビエラがしたり顔をする。
「いや・・・ビエラ、問題ないって言っても・・・
馬達に『死ぬ気で運べ!』って言っていましたよね・・・これ脅迫じゃないですか?」
「あ~。」
ビエラがうんうん頷いている。
「『この者達は気概がある』って、いや、ほんと大丈夫ですか?
・・・主は確かに強行軍すると言っていましたけど、夜間の移動だけですからね?
戦地に飛び込めとかそう言う事ではないんですよ?」
「あ~?」
「まぁ米とかを入手するのに早く着いて準備するという事ですけど。
確かに主達が上手く交渉出来れば私達の口にも多く入るのは確かですね。」
「あ~♪」
「きゅ~♪」
「おぉう。この自堕落ドラゴン親子が美味しい物の為に動くとは。
ですけど、出立して早々に潰れても意味はないのですよ?
1日中走るのですから無駄に体力を使う必要はないですよ。」
「あ~。」
「だから『気概があれば問題ない』とかそういった話じゃないですって。」
ミアが呆れるのだった。
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