第1259話 最近の王城では。(パットが不信任。)
「そう言えば第3皇子一家の相談役はどこに行ったのですか?」
パットがウィリアム達に聞く。
「エリカさん?
私達の名代でエルヴィス伯爵家に行ってアリスとタケオさんの挙式に参列して、ついでにエルヴィス家の今の政治体制と政策の実効性の見学をしに行って貰っているわ。
そう説明したと思っていたけど。」
アルマが言う。
「相談役なんですよね?
何で今の忙しい時に居ないんですか?」
「忙しい?エリカさんの受け持ち分は終わっているわよ。
エリカさん、何だかんだと言って自分の提案書や概要書なんかは終わらせて文官に引き継いでから行ったからね。
今は文官達でエリカさんの書類の精査をしている最中でエリカさんは空いた時間を実地研修に当ててるの。
パット・・・基礎すら終わらなくて、仕事も出来ない者が他人の批判はダメよ。」
レイラが笑顔で怒っている。
「うっ・・・」
「そうね。
基礎すら出来ていないんだよね。
あのぐらいの基礎はエリカさんもエイミーもすんなり見てわかるのにね。」
「ぼ・・・僕は学院を卒業して間もな」
「エイミーちゃんは在学中よ。
パットぉ・・・温い中で育っても意味ないわよぉ?
あの程度、うちのスミスもわかるんだけど?」
レイラがパットを弄りだす。
「うぅ・・・」
「レイラお姉様、スミスはレイラお姉様達に教育されているのです。
パットと比べるのは些か・・・」
エイミーもパットを擁護しない。
「はぁ・・・パット、早く基礎部分を終わらせてね。
クリフ兄上に業務を移管する時にパットが補佐をするんだからね。
最低限の事を教えるにしても覚える事がいっぱいなんだよ?
あと1年を切っているし、僕も領地の事をやらないといけないから時間を多く割けれないんだからね?」
ウィリアムがため息交じりに言う。
「う・・・はぃ、わかっています。
ですが、時間がないのなら相談役が不在というのは・・・」
「パットの傍にエリカさんを置けるわけはないでしょ?」
レイラが呆れている。
「僕の近くにですか?」
「そぉ!卒業し立てで女性に手を出す子もいるからね。
パットは後継者、その近くにエリカさんレベルを置いて万が一があってはいけないからね。
これは第1皇子一家からの要請よ!
パットの嫁は第1皇子一家が王城に入ったのちに選考があるでしょうね。
今は女性に手だし厳禁。
勝手に手を出さないように護衛している第1騎士団も承知済みな事よ。」
「だ・・・大丈夫ですよ。」
「大丈夫な訳ないじゃない。
エリカさん、立ち姿凄くカッコいいのよ!
王城内で結構人気だし、本人無自覚だけど。
そんなエリカさんを見たらパットが手を出す可能性があるからね。
まぁエリカさんレベルを妃にするのは今のパットでは無理だけど。」
「あの~・・・僕は後継者なんですよね?」
「そうよ。」
「無理な事あるのですか?」
「うん、無理。
パットではエリカさんを満足させられないわ。
公私共にエリカさんからの忠誠を受けるに値しないし。」
「酷くないですか?」
「酷いもなにも・・・エリカさんはお金に不自由はしていないし、権力が欲しいと願っても居ない。
パットは何をエリカさんに提示出来るの?
パット、権力だけであのレベルの嫁が来ると思っているの?
権力のみをひけらかす輩には相応の嫁しか来ないわよ。」
「・・・」
パットがガックリとしている。
「まぁパットがエリカに手を出そうものなら我がその場で殴るがな。
そういった意味でもエリカはエルヴィス伯爵家で研修をさせているのだ。
その間にパットが仕事に邁進出来る状況を作り、大人の女性に慣れさせないとな。」
アズパール王が言う。
「そこまで信用ないのですか?」
「「ない。」」
アルマとレイラが即答する。
「パットに好きな子が居れば良いんだけど・・・居ないんでしょう?」
「断言しないでください。」
「居るの?」
「居ませんが・・・」
「ふと大人の色香にやられて手を出されても困るからね。
今は準備期間よ。
まぁ第1騎士団とか友人と外に行って女性でも見て来なさいよ。
ただし!手出しは厳禁!
良いなと思う娘が居たならリストアップしときなさい。
第1皇子一家が選定するから。
その後話し合いなさい。」
「とっても理不尽な気がします。」
「王立学院の時に候補でも居れば良かったけどね。
男友達と遊んでいたのでしょう?」
「女性からは声はかからなかっただけです。」
「・・・はぁ・・・違うわよ。
パットの周辺の男子は女性をパットに近づけないようにしていただけよ。
万が一、既成事実を作ろうとする女性が居ないとも限らないしね。
そうなれば彼らの父親の首が危ないからね。」
「・・・そうなのですか?」
「そうよ。
王家の者が入る王立学院で子弟達が何も指示されないなんてあると思うの?
現に今回はスミスとジーナの件で相当、文官内で指示が飛んでいると聞いているし、王都守備隊と第1騎士団なんて魔法師専門学院に行かせる予定の女子を数名、王立学院に入れたと聞いたわ。
この気の使い方は異常なんだけど・・・パット、貴方が思うより王立学院というのは政治が絡むのよ。」
「そうなのでしょうか。
確かに周りには女子は来ませんでしたが・・・
あれは貴族の女子ではなかったからかと思っていました。」
「王家、貴族に関わらず権力者側の後継者に娘を嫁がせたいと思う親は多いはずよ。
それを取り巻きが遮断していたんでしょう。
今回のグレースちゃんは・・・大丈夫かしら?」
レイラがエイミーを見る。
「あそこは王都の仲良し組でしょう。
王都の商家や文官達が多いと考えます。
スミスとジーナ、アルダーソンとボールドは一緒に行動するでしょう。
全員がタケオさんの関係者に連なっていますし。」
エイミーが頷きながら答える。
「ふーん・・・王立学院も大変そうだな。
まぁアルダーソンとボールドはわからないが、スミスとジーナは問題ないだろう。
あの2人ならほのぼの過ごしそうだ。」
「はい、お爺さま、2人は問題ないかと。
あとの取り巻きはどうなるかわかりません。」
「楽しく過ごしてくれれば良いがな。
エイミーもだ、今年で卒業だからな。
楽しめ。」
「はい、お爺さま。」
エイミーが軽く礼をするのだった。
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