第1257話 147日目 貴重な考察の時間。(なーに言ってんの。)
武雄はアリス達が湯浴みに行っているのでのほほんと書斎で読み物をしていた。
「・・・」
「タケオ、何を読んでいるのですか?」
ソファで同じく本を読んでいるパナがタケオに聞いて来る。
「・・・パナ、当然の如くそこにいますけど。
アリスが入っている間に湯浴みに行きなさい。」
「・・・そうですね。
タケオの回答を聞いたら行きます。」
「はぁ・・・これと言って特別な物ではないですよ。
夕霧達が魔法陣の話をしていましたから過去の伝記を流し読みしています。
メイドさんに聞いたら古い物を持って来て貰えましたからね。」
「伝記ですか。
この時代・・・いや、いかなる時代や世界でも伝記物は脚色があるのが普通ですよ。」
「そうですね。
だからこそ読むべきですよ。」
「そうなのですか?」
「魔法陣関係・・・つまりは何かしらの召喚をした記述があるのなら人間側でもしていた可能性があるのがわかりますからね。
魔物が大量に発生しただの、精霊が召喚されたとか・・・いろいろ大言壮語な話の所を見て列記していくんですよ。」
「・・・何の為ですか?」
「まぁ・・・王都か地方かを確認しておくのと、もしかしたら同じ伝記物でも過去の伝記書物と今販売されている伝記書物とで内容に差異がある可能性もありますからね。
そういった事を確認したいんですよ。」
「昔と今で話が変わっていると?」
「グリム童話とか日本の昔話何かも古今で違うという事が多々あるようですよ?」
「・・・まぁ童話ですからね。
情操教育に相応しくないのなら時の政府により変えられるでしょうね。」
「ええ、時の政府にね。」
「・・・含みがありますね。
タケオ、王都では魔法陣の事を知っていると考えているのですね?」
「少なくとも1つの部署・・・王家専属魔法師部隊は知っていないといけない事でしょう。
現に国内でやられている可能性があるんですよ?」
「ふむ・・・でもそういった話にはなっていないですよね?」
「他部署宛の報告書には記載はないでしょうね。
王家専属・・・誰に忠誠を誓っているかという事でしょう。
もしこの魔法陣の存在が発覚し、やり方が流布したりすれば・・・王都が危うくなるでしょうからね。」
「アズパール王は知っている可能性は?」
「あの陛下が・・・ん~・・・知らなそうですけど、知っていても不思議ではないでしょうね。
知っていてあの態度と褒美をしたなら策士です。
そのぐらい優秀なら国家は安泰ですが、逆に暴風雨に晒されるかもしれませんね。
今の所そういった兆しはありませんが。」
「ふむ・・・タケオは王都に行ったら聞くのですよね?」
「聞きたいとは思いますが、ちゃんと話されるかはわかりませんね。
むしろいきなり聞きに行ってすんなり話されても疑うかも知れませんね。」
「どちらにしても・・・真偽が難しいのですね。」
「難しいというより面倒ですね。
信頼関係がどれほどかという所が信じられるかのポイントでしょう。
ほら、パナ、湯浴みに行きなさい。」
「わかりました。」
パナが退室していく。
「ふふ・・・伝記か・・・
・・・それにしてもこんな事を1人の力で出来たら苦労はないでしょうね。」
武雄は軽く読みながらページを捲るのだった。
・・
・
書斎の廊下側の扉がノックされ武雄が返事をするとコノハとビエラ達が入って来る。
「タケオ~、アリスもうすぐ出て来るわよ。」
「はい、わかりました。」
武雄は読み物は飽きたようで今は落書きをしていた。
書くのを止めると席を立ちソファに移動する。
「ビエラ。」
「はい!」
座った武雄の前にビエラがやってくると武雄がビエラの髪を乾かしだす。
「あ~♪」
ビエラが目を細めながら髪を乾かされている。
「タケオ、何を書いていたの?
パナちゃんが伝記物を読んでいると言っていたんだけど・・・書いていたわよね?」
コノハがチビッ子状態になり机に移動する。
「コノハ、こっち終ったらすぐ髪を乾かしますからね。
ノートに垂らさないでくださいよ?」
「は~い。
ん~・・・ん?・・・タケオ・・・伝記物読んでなんでこんな内容を書いているの?」
コノハがノートから顔を上げて、武雄にジト目で質問してくる。
「・・・いや、ふと思ったんですよ。」
「それにしたって・・・人工ダイヤモンドって・・・
何々・・・
1.正八面体を作り、内側に一回り小さい正八面体を用意する。
2.内側の八面体の内部に木炭を細断し満杯にさせるこれを炭素体と呼称し、密封。
3.高高度から自由落下をさせ、擬似的な無重力を作り出すとともに内側の炭素体を均一状態にさせる。
その時点で炭素体の中心に埋め込んだ媒体を利用し、炭素体を急加熱し、融解を起こさせる。
これを融解炭素と呼称する。
4.内側の八面体から外側の八面体に向け全角からエクスを同時発動。
内側から外側に一旦衝撃波を当て、衝撃波の重なりから増幅を促すとともに・・・均一的で爆発的な圧力を内側の八面体内部にある融解炭素に当てる事によりダイヤモンドの生成を目指す・・・
タケオ・・・何を考えているの?」
コノハがジト目で聞いて来る。
「・・・宝石が出来たら便利かなぁっと。」
「はぁ・・・タケオが考えているのがモンロー・ノイマン効果に似ていなくもないのが怖い所ね。」
「モンロー・ノイマン効果?」
「あ~・・・今日はいいわ。
後日覚えていたら説明するわよ。
はぁ・・・まぁタケオ、いろいろ不備が目立つんだけど・・・」
「考察は自由でしょう?」
武雄が悪びれもせずに言ってくる。
「それはそうだけど・・・良くもまぁ合成ダイヤモンドを思いついたわね。」
「実際宝石でなくても研磨材としてだったり剣に塗布出来たら固くなりそうではないですか?」
「タケオ、剣は鍋とは違うわよ?」
「ダ・・・ダイヤモンドコーティング。」
「はぁ・・・剣やナイフに施しても意味ないわよ。
どちらかと言えばナイフを研ぐ為の研磨剤が一番合っているわ。」
「研磨剤か・・・研ぎ石に練り込むとかはどうですか?
小太刀の研磨材として作っても良いかもしれませんね。」
「あ~・・・うん、やってみたら?」
「考えただけでも費用が膨大で無理ですよ。
今は考えるだけに留めておきます。」
「まぁそれもそうだね。」
コノハが呆れながら頷くのだった。
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