第1251話 続旅の2組。(スミスとジーナの反省会。)
挨拶が終わった後の食堂。
スミスとジーナは2人で端の席でお茶を飲んでいる。
回りは今宿泊している人達向けの夕食の準備を始めていた。
「ジーナ、あれで良かったと思いますか?」
「問題ないかと思います。
スミス様の最後の挨拶はどうされたのですか?」
「あの2人は2年ちょっと前の街が襲撃を受けた時の遺児でね。
アリスお姉様が挨拶をしているかもしれないけど、僕も言わないとと思ってね。」
「2年前・・・アリス様が英雄になった戦いですね。」
「うん、ヴィクター達との戦争で関に行っている時だから本隊が留守の間にね。
あれは何だったのだろうね。」
「んー・・・難しいですね。
その時は私も屋敷に居ましたがそういった話はお父さまからも何も言われていませんでしたし、普通に騎士組もお父さまに付いて行ってましたから・・・普通に考えれば陽動なんですが・・・
確か襲撃はゴブリンなのですよね?オークではなく。」
「うん、ゴブリン200体だね。
守備側は兵士80名・・・全部捜査系の居残り組だよ。」
「本当に人間がその人数で良く守れましたね・・・
それにしても・・・んー・・・ゴブリン単体で動かすのは流石にどの貴族領もしないはずなんですよね・・・あれらは低能なので言う事を聞かないんですよ。
ゴブリンは畑仕事、オークは畑仕事と家畜というのが魔王国での貴族達の常識みたいな物ですし、出すならオーガですが・・・あれらも扱いがなぁ。」
ジーナが首を傾げながら考えている。
「・・・ジーナの魔物への考えがやっぱり僕達と違うね。」
スミスが呆れながらお茶を飲む。
「牛と馬と同じです。
ゴブリンとオークはちょっとだけ言う事を聞かせやすいという事で重宝していますね。
でも戦場に出すのは恥だと思うんですよね。
それに連れて行っても何も役に立ちませんから。
統制がとれないような物を連れて来るなんて施政者としておかしいです。」
「うん・・・そうなのかもね。
でも実際にあの時は戦争が引き金かのように現れたね。」
「そこなんですよね・・・
この辺でゴブリンを連れて行けるのは・・・やはり魔王国側でしか囲っていないですね。
自然発生というには少し多いですから魔王国側が仕掛けたというのが普通の考え方でしょうか。
ですが、居城を攻めるにしてもゴブリンを選定する意味はないですよね。
もっと強い・・・オーガ100体とかの方が確実ですし、さらにゴブリンだけというのも不自然ですよね。
誰かしら指揮をする者がいないと攻める方法を考えないただ歩くだけの集団でしかないわけですから。」
「ジーナの話を聞くと不思議に思うね。
ジーナならオーガを向かわせる?」
「ん~・・・私なら手持ちのオーガを200体程裏城門の方からというのが確実性があるかと思います。
ですが、私としては街を襲う意味がないように思うんですよね。
街の攻略は時間がかかると言われていますし・・・
それに本質的な所で言うとアズパール王国と魔王国は種族が憎しみ合っての戦争をしていないんです。
どちらかと言えば領土の奪い合いかと。
もっと言えば両国とも現状の国境線が一番安定している感もあります。
なので無理をして・・・策を弄してまで領土を欲するというのは・・・ちょっとわかりません。」
「うん、そこは否めないね。
仮に魔王国の中央が動いたとしたら?」
「王軍がゴブリンをですか?それはないですね。
あれは武力が秀でた集団ですから自分達の行動を邪魔するような事はしないです。
それに流石に魔王国の王軍が動くとなると本気の侵攻作戦ですからゴブリンよりも自分達が乗込んでくると思います。
ヴァレーリ陛下の息がかかった者がご自分達を囮にしてゴブリンをコソコソと街に襲撃させるとは思われないかと。」
「そうなの?」
「はい、私もお会いした事はありませんが、剛毅な方と伺っていますし、魔王国で剣や魔法も含めた何でもありの御前試合で優勝した方ですので堂々と正面から当たりたいと思うかと。
ヴァレーリ陛下は戦闘で率先して相手に向かわれるだろうというのがお父さまの評価です。
なのでその意を汲んでいる王軍の幹部がそういった事をするとは思えません。」
「そうかぁ。
だから皆は魔王国ではないと言っているんだね。」
「はい、ですが、次期陛下がどういった方になるかによって王軍も変わります。」
「策略が好きなら変わるかもしれないんだね?」
「はい。
それも含めてのミアの軍団構想です。」
「頼もしいね。」
「ご主人様の先見の明があったという事です。」
「うん、僕もそういった事が考え付けるようにしないといけないね。」
「はい、ですが、ああいった考えは王都では異質なのではないですか?」
「・・・ジーナもそう思う?」
「はい。」
「ん~・・・やはりあまりこの手の持論というかタケオ様の考えを言うのは場を見ないとダメだね。」
「それがよろしいかと思います。
第3皇子一家やエイミー殿下はご主人様もアリス様も知っていますのでその手の話をしても問題ないかとは思いますが、他の王家や貴族には注意が必要かと思います。」
「うん、十分注意する事にするよ。
確か同い年に王家が1人と貴族が2名だったね。」
「はい、グレース殿下とアルダーソン殿、ボールド殿の3名になります。」
「最初の挨拶が肝心だって話なんだけど。」
「スミス様・・・今から心配される事ではございません。
王都の城門を過ぎた辺りで問題ないかと思われますが。」
「わかっているんだけど、どう挨拶して良いんだろうね。」
スミスがため息をつくのだった。
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