第1250話 続旅の2組。(謁見。)
食堂の扉前。
軽く段取りをジーナが皆に話している。
「あの~・・・トレーシー研究室長やアンダーセン試験小隊長より前なのですか?」
ジーニーが手を上げながらジーナに質問していた。
「はい、この度はスミス・ヘンリー・エルヴィス様とエルヴィス伯爵家の兵士にご内定の方との挨拶としておりますので・・・アンダーセン殿達はハッキリ言ってついでです。」
「まぁ、そうでしょうね。
ここにスミス殿ではなく所長やアリス殿が居たら私達が先頭でしょう。」
「はぁ・・・で・・・私が先頭なのですか?」
ジーニーが難しい顔をさせる。
「はい。
トレーシー殿より成績順の方が良いとお伺いしていますが・・・トレーシー殿違いましたか?」
「いえ、この順番で問題ないかと。」
「なら問題ないでしょう。」
ジーナが頷く。
「お母さん?これから何があるの?」
トレーシーの子供がセシリーに聞く。
「この地の領主様になる予定の方に会うのよ?」
「じぃじみたいになる方?」
「ん~・・・じぃじみたいにはならないけど、じぃじが期待している男の子に会うのよ。
失礼のないようにね。」
「はーい。
で・・・あのお姉さんの肩に居るのは人形?」
「それは・・・後でお父さんに聞きましょうか。
今は聞いてはいけませんよ。
失礼になってしまいますからね?」
「はーい。」
「あ~・・・良いのかその説明で。
まぁこの子からすれば祖父は議長なんだが・・・それに精霊を後でか・・・」
アンダーセンが考える。
「良いんじゃないかい?」
トレーシーがお気楽に答える。
「構いません、スミス様もクラーク議長にお会いしておりますし、今回の事はそこまで形式的な事ではありません。
今日の事は王都での会話で話題の1つに出来る程度の事です。
精霊についてはアンダーセン様なら聞いているのではないですか?」
「ええ、聞いています。
それなりに説明をしておきます。
では、ジーナ殿。」
「はい、では、行きますよ。」
とジーナが扉をノックし中から「どうぞ」という返答があったのちに扉を開ける。
「スミス様、失礼いたします。
今年からエルヴィス伯爵家の兵士として勤める魔法師専門学院のご卒業生並びに第二研究所 研究室長と同試験小隊長ご一家が挨拶に参りました。」
「わかりました。
お通しください。」
「はい。
皆様、こちらになります。」
とジーナが皆を先導し、準備した所に皆を通す。
「皆様、初めましてですね。
この度、王立学院に入学するスミス・ヘンリー・エルヴィスです。
王都への移動中ですが、皆様に会えた事というのは旅の刺激になりますね。
さ、座ってお茶をしながら話を聞かせください。
ジーナ。」
「はい、スミス様。
すぐにお茶の用意をいたします。」
ジーナが恭しく頭を下げ礼をすると室内の端に置かれたお茶を人数分入れ始めるのだった。
・・
・
「試験小隊で頑張りたいと思っています。
よろしくお願いします。」
順番が最後のパメラが礼をする。
「はい、キタミザト子爵様の下で頑張ってください。」
「はい!」
パメラが返事をして座る。
「さて。」
スミスは席を立ちジーニーとケイを見る。
「「え?」」
ジーニーとケイが驚いている。
「ブロウズさん、ケードさん、遅くなってしまったかもしれませんが、貴女達に感謝を。
貴女達のお父上は2年前の街の防衛戦において、立派に務めを果たして下さいました。
僕はまだ未成年という事もあり、戦場には立てませんでしたが、姉アリスと共に戦い街を救って頂きました・・・本当にありがとうございました。」
スミスが深々と頭を下げる。
「「っ・・・はい!」」
ジーニーとケイがすぐに立ち上がり少し涙目になりながら返事をする。
「貴女達のお父上のような職務に忠実な方に仕えて頂けた事はエルヴィス伯爵家にとって掛替えのない財産です。
僕も今年から王立学院に入り多くを学ぶ事になっていますが、貴女達のお父上のような方が就職して頂けるような街を造れる施政者にならないといけないと思っています。
まぁですが、成果というのはすぐには中々出せないでしょうから、これから兵士になる貴女達に苦労をかけてしまいますね、
そこはよろしくお願いします。」
「はい!お任せください。」
ジーニーが返事をし他の卒業生の面々も頷いている。
「僕のような年下に言われてもあまりピンとは来ないでしょうが、期待しています。
それと・・・ケードさんとコーエンさんはキタミザト子爵様の部下という事ですが・・・こちらも苦労があるでしょうが、頑張ってください。」
「「はい!」」
ケイとパメラが返事をするのだった。
・・
・
「先発隊の方々には僕もお会いしました。」
「街ででしょうか?」
アンダーセンが聞いて来る。
「いえ、この移動し始めた初日です。
街から出立した日に会えまして休憩がてら少しお話をさせて貰いました。
道中何事もなくのんびりとした旅が出来たとおっしゃっていましたね。
僕達はこれから王都に向かいますが、道中は何かありましたか?」
「スミス様、特にお話をするような面白い事はございませんでした。
スミス様の方はいかがでしたか?」
「僕の方もこれと言ってないですね。
そういえば領内の町の特産品を集めた祭りをしたのですが、この町からも野菜の塩漬けという物が出ていました。
一風変わった味でしたので、お試しになると良いかと思われますね。」
「なるほど、では今日中に町中で売っているか確認をしないといけませんね。」
「そうですね。
街へはもうすぐ着くでしょうから安全にお進みください。」
「はい。
スミス様も王都までの道中お気をつけてください。
街道に魔物等は見受けられませんでしたが用心に越したことはありません。」
「ありがとうございます。
今日は話せて良かったです。
次話す機会は私が里帰りをした時でしょうか。
その際はよろしくお願いします。」
「はい。
その際は王都の土産話をお聞かせ頂ければと思っています。」
アンダーセンが頷くのだった。
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