第1244話 午後の訓練場。(練習はしっかりとしないとね。)
ドン・・ドン・・ドン・・2秒毎に発砲音がこだましている。
王都でした時よりも若干早いペースで武雄が的に撃ち込んでいく。
ちなみに標的は射撃位置から30mくらいの所に武雄がアースウォールで土を盛りそこに手書きで的を作っていた。
「・・・」
武雄は休まず撃ち込んでいく。
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試験小隊の面々はと言うと皆の前で1対1の組手を3分間し、次々に交代していくという事をしていた。
ちなみに東西に分かれて座っているが、一方は5人、もう片方が4人で並び西で出たら東の最後尾に、東で出たら西の最後尾に座るという風に対戦相手が毎回変わるようになっていた。
「はぁ・・・終わった。」
ミルコが組手を終えて控えの人達がいる位置に来て座る。
「ミルコ、あともう半歩分相手の方に踏み込んだ方が良いな。」
隣に座っているオールストンがミルコに今の組手の感想を言う。
「そうなのですか?」
「あぁ、体格差というのが関係しているかと思うがちょっとミルコは離れすぎている。
もう少しだけ近づいた方が相手に有効打を与えられると思うぞ。」
「ん~・・・あれ以上近づくと相手の剣の威力が受けきれるかわからないのです。
アーキンさんやブルックさんの時にも踏み込めと言われたんですけど、あれよりも近くで剣を受けると力負けしてしまって。」
「ふむふむ、なるほどな。
ミルコ、相手に剣を当てるのは苦手か?」
「・・はぃ。」
「うん・・・まぁそれが普通だ。
だが兵士をしているとどうしても当てなくてはならない時があるし、斬らなくてはいけない時がある。」
「はぃ。」
「今の距離だと上達したとしても防御のみだろう。
踏み込む訓練をしていないといざという時に踏み込もうと思っても踏み込めないものだ。
こればっかりはな・・・慣れが必要だ。
そして相手を斬れないという事は一緒に行動している者達の負担にしかならない。
わかるか?」
「はい・・・わかります。」
「率先して斬れとは言わない。
だが、他の隊員の負担にならない程度の剣技と覚悟を覚えような。」
「はい。
で、質問ですが・・・お姉ちゃんはどうでしょうか?」
ミルコが今組手をしているアニータを見る。
「アニータは・・・踏み込み過ぎだな。
あれでは当てたとしても剣の威力が十分に伝わらないだろう・・・
アニータとミルコを足すと良い距離なんだが。
まぁ教える方としてはミルコの方が楽だな。」
「そうですか?」
「あぁ、あそこまで勢い良く踏み込むのを抑えろというのは難しいだろう。
あれは苦労するな。
ミルコはあと半歩だからな、後は覚悟だけだ。
こっちは数を熟すだけだろう。」
「そうですか。」
「そうだ。
で・・・だが・・・怖くてあっちを見たくないんだが・・・」
オールストンが目線をとある方に向ける。
「所長がビエラ殿と話をしていますね。」
「成獣状態のな。
あ・・・所長がため息交じりに頷いているな。」
「この距離からため息がわかるって相当ですね。」
「相当だな。
お・・・ビエラ殿が奥に行くか。」
「所長何をするんでしょう?」
オールストンとミルコが首を傾げるのだった。
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武雄が伏せ撃ちの格好で小銃改3を構えスコープで対象を見ている。
と武雄が引き金をひくと「ドンっ」と音と共に弾丸が飛んでいき1000m先でひらりとビエラが避けていた。
「・・・なぜに避けれますかね?」
武雄がスコープを覗きながら呆れていた。
「タケオ、あれはたぶん弾丸の風を感じているのでは?」
武雄の隣で座りながらスコープで覗いているパナが言う。
「いや・・・・迫って来る弾丸がわかるのって反則でしょう。」
「というよりも避けれるんですね。
ドラゴンとは機敏なのですね。」
「パナでも驚きますか。」
「はい、各神話でもドラゴンは動きが遅いとは出て来ませんが・・・
あの体躯であの機敏というの反則ですね。
あ、ビエラが高笑いをしていますね。」
「・・・当たれ!」
武雄が引き金を引きビエラを狙うがまた軽快に躱されるのだった。
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一方の的組は。
「きゅ!」
ビエラから20m程度武雄の方に陣取っているクゥが大きく鳴く。
「グルゥ♪」
ドラゴン(ビエラ)がひらりと右に移動し躱す。
「あ~・・・クゥ?ビエラ?
何が楽しくて狙われているんですか?」
クゥと一緒にいるミアが呆れていた。
「きゅ♪」
「グルゥ♪」
「馬鹿じゃないですか?」
楽しそうな2人にミアがジト目で答える。
「グルゥ・・・ルゥ!」
ドラゴン(ビエラ)が今度は左に移動し小銃改3の弾丸を躱す。
「・・・それにしても・・・
2人とも主が撃ったのを確認してから移動するとはどういう事ですか?」
「きゅ?」
「グルゥ?」
「この距離をわかる訳ないでしょう!?
そんな事出来るのは貴女達2名だけです。」
「きゅ~?」
「クゥにポンコツ呼ばわりされるのは甚だ遺憾です!
これでも妖精の中では群を抜いて感知は出来るんです!」
「きゅ♪」
「その言い方は酷い・・・ま、まぁ良いです。
主が私を必要としてくれますからね。
それに主が新しいスイーツを作ったら初めに食べさせてくれますし。」
「きゅ~!」
「へへ~んだ。
部下の特権です。」
「ドガッ!」
凄まじい音にミアとクゥがビエラを見る。
「・・・グルッ??・・・」
ビエラも恐る恐る尻尾を見ている。
出血もなく焦げた感じもしていない、見た目的に無傷だった。
「当たったのですね・・・
くっ・・・ビエラ!一応ケアをかけておきます!」
ミアが驚きながらもすぐに駆け寄りビエラにケアをかける。
「グ、グル!」
ビエラが何回も頷く。
「いえ!怪我をしない事が重要です!
ビエラ!避ける幅を大きくするのです!」
「きゅ!」
「グルっ!!」
3人とも焦りながらも的確に避けるようにするのだった。
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