第1241話 午後の訓練場。(初回の訓練結果。)
試験小隊の訓練場。
「はい、終了。」
アーリスが懐中時計を見ながら答える。
「「・・・」」
大人達が汗だくで膝に手を付いていた。
「ふむ・・・ブレア殿、どうですか?」
「まぁアーリス殿の言う事は出来ているんじゃないか?
流石に初めてだからな。
このぐらいが精々だと思うが・・・」
アニータとミルコが一生懸命、得意なエアロとストーンを丸くする努力をしている横で大人達が必死にアーリスの考えた効率と省力が出来る訓練を実施していた。
まぁそうは言っても王都守備隊、王国最高峰の部隊なのだ。
初めてだし汗だくではあるが皆が規定の時間内に言われた事を終わらせ、ゆうに20mくらい板と離れても最小魔力量でストーンを維持出来るようになっていた。
「はぁ・・・辛い・・・魔力が残っているのに辛い、何この精神的にゴリゴリ削るのは・・・」
「確かに魔力量は全然減らないが・・・
これを慣れろとは・・・」
「流石に疲れるな。
今まで気にしなかった所を気にしている気がする。」
「難しいなぁ・・・維持ってこんな難しかったか?」
「これは良い訓練だな・・・慣れれば良い感じに魔法の制御が上手くなりそうだ。」
皆の弱音を余所にマイヤーは平気そうだ。
「「・・・」」
アーキンとブルックは精神的に疲労困憊だった。
一方のアニータとミルコは。
「ん~・・・維持が難しい。」
「上手く丸くならないなぁ。」
2人共課題が残ったみたいだった。
「2人ともそのぐらいで一旦止めるか、そして離れる練習をしてみよう。
なぁに、毎日していれば丸くなるぞ。
今日は丸くなる方法と離れる事を覚える訓練だからな。」
アーリスが言ってくる。
「「はい!」」
アニータとミルコが立ち上がる。
「よし!じゃあ、板の前に行って両手でエアロとストーンをして維持してみようか。
座ってやるのと立ってやるのでは感覚がちょっと違うからな。
注意するように。」
「「はいっ!」」
2人が板の前で不慣れだがエアロとストーンを発動し、維持する。
「ほぉ流石若いな。飲み込みが早い。
最初より滑らかに発動したな。」
「いや・・・これは才能では?
魔法師専門学院の生徒ではここまですんなりとは無理ですよ。」
「それこそわからんぞ、逸材というのは居る所には居るものだしな。
今年入るかもしれないし、来年入るかもしれない。
たまたま俺らが知らなかっただけだろう。
だが、結構すんなりとアーリス殿の言う事を飲み込んだな。」
「これはアーキンとブルックが厳しく教えたからだろう。
理解を早くしようと本人達が考えた結果なんだと思うぞ。
全く・・・これほどの逸材でこれほど素直に言う事を聞いてくれるのなら教えがいもあるという物だな。」
「あの2人は素直です。
嫌な事は顔に出ますし、楽しい事なら笑っています。
喜怒哀楽がちゃんとしていますね。
ある意味この子達を魔法師専門学院に入れなくて正解でした。
あそこでは笑っていると怒られる時がありますから。」
「まぁ・・・兵士育成が目的だしな。
厳しい事も教えないといけないからな。」
「はい。」
「お、2人とも後ずさり始めたか・・・」
大人達は2人の初めての特訓を見守るのだった。
アニータとミルコはゆっくりと後退る。
それこそ牛歩のように。
「「・・・」」
2人も真剣だ。
「あ!」
アニータのエアロが四散してしまう。
記録3m。
「・・・あぁ!」
ミルコも下に落してしまう。
記録4m。
「ふむ・・・初回にしては結構行ったな。
正直1m行けば良い方だと思ったが。
で、どうだ2人とも。」
「難しいです~。」
「維持するイメージが大変です。」
「うんうん、そうだな。
まぁ今の距離が2人が最小の魔力量で賄える距離なんだ。
これ以上の距離を当てる時は思いのほか魔力を使っている可能性がある。
この距離を伸ばせるようにするのも1つのやり方という事だ。
わかったか?」
「「はいっ!」」
「アーキン、ブルック、講義はこれまでだ。
一応、1か月同じ事をして結果が出ないようなら他の事をしよう。
それまではこれも訓練の1つとして組み込んでくれ。」
「「はっ!」」
アーキンとブルックが返事をする。
「で、次は何をするんだ?」
マイヤーがブルックに聞く。
「ファイア、アクア、エアロ、ストーン等の初級魔法の無詠唱で50m先の目標に正確に当てる訓練ですね。
出来るだけ最小限でさせていますが・・・まぁこれはいつも通りでしょうか。
良し!アニータ、ミルコ、目標を作るよ。」
「「はーい・・・」」
ブルックとアニータとミルコが射撃場の50m先に歩いて行く。
「作る?」
「はい、ストーンを大量に作って小山を作るんです。
まぁ・・・結構な量になるので3割くらい使うんですよ。
で、その後に初級魔法を容赦なく連続で撃たせて5割くらい消費させ、最後に森と訓練場との境界を作るストーン作りでほぼ魔力量が空に。
で、最後の1時間は剣技をして肉体をボロボロにさせます。
これで魔力量も増えますし、体も鍛えられるので器の強化も出来ます。」
「おぉう、流石に厳しいな。
そうか・・・アーリスの訓練もそうだが1か月後に魔力量を計りに行った方が良いかもしれないな。」
「魔力量が増えていると良いんですけどね・・・」
アーキンが難しい顔をさせるのだった。
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