第1240話 続旅の2組。(トレーシーとジーナ。)
スミス達、王都行きの一行。
「ん~・・・」
スミスがマリと将棋をしていた。
「・・・」
対面のジーナは読み物をしている。
出発して早3日目・・・スミスもジーナもやる事が無くなっていた。
「ジーナ・・・今日は西の町でしたよね?」
チビッ子状態のパラスがジーナの肩に乗って聞く。
「はい、今日は西の町です。
西町局長は私達より後の出立でしょうからご不在でしょう。
ですが、スミス様は庁舎に挨拶に行かないといけないでしょうね。
まぁそれも今日と明日の領内での宿泊時にでとなると思います。」
「ん~・・・西の町は何があるのかな?」
「特産品祭りからいうと柑橘系の塩漬けの野菜ですね。」
「・・・甘い物は?」
「無いのでは?」
「そぉかぁ・・・」
パラスがガックリとする。
「いや・・・街に比べれば多少値段は高いけどあると思いますが、飴とかが多いと思いますね。」
「ん~・・・飴かぁ。」
パラスが腕を組んで考える。
「ご主人様クラスはそうそうありませんよ・・・それこそ王都にでも行かないと手に入りません。」
「んん~・・・ジーナは何か料理長に習ってたよね?」
「え?ジーナは料理をするの?」
スミスが聞いて来る。
「料理と言うかプリンとフレンチトーストの作り方を教えて貰っています。
向こうで食べたいので。」
「あ、材料一緒だものね。」
「ええ、それに・・・」
ジーナが懐から手紙を出す。
「これは?」
「ご主人様から王城の料理長宛に書かれた私が厨房へと立ち入る許可を得るお願い書です。
流石にプリンを王城以外で作ると勝手に流行る可能性がありますので作るなら王城でしか出来ないと思い書いて頂きました。」
「用意周到だね。」
スミスが呆れる。
「一応、スミス様の分もありますが。」
ジーナが聞いて来る。
「僕は料理は出来ないですね。」
「ふむ・・・ご主人様はアリス様を篭絡するのに料理をしましたので・・・スミス様も必要かと。」
「うん、ジーナ、用意が良すぎるかな?
ちなみにタケオ様は知っているの?というより知っているね?」
「はい、ご主人様もアリス様もご存知ですし。
アリス様からは『その辺が面倒だったらレイラお姉様に任せれば良いのでは?』と言われました。」
「・・・うん、ジーナ止めてね?
レイラお姉様は止めるのが結構難しいからね?」
「そうでしょうか。
レイラ殿下はご主人様にも妹のアリス様にも普通にご対応されておりましたし、私達親子にも気さくに分け隔てなく接して頂いた方ですが。」
「そりゃあ、ジーナとヴィクターはタケオ様の直属の部下だし、部下に取り立てた経緯も知っているから無下には扱わないよ。
ジーナに何かあればタケオ様は怒るだろうし、王都がゴタゴタするだろうしね。
何よりもタケオ様とアリスお姉様の逆鱗に触れるのはレイラお姉様でもしないと思うよ。」
「はぁ・・・ではスミス様には?」
「・・・ジーナ、エイミー殿下と家具屋に行く時の特訓覚えているかい?」
「・・・あぁ。
意外とスミス様が物覚えが悪かったあれですね。」
「ごめん、ジーナそこは忘れようか。
まぁレイラお姉様は面白そうな事は率先してやるんだよ。」
「・・・ご主人様のようですね。」
「・・・タケオ様の方が力加減はしてくれている気がしますが・・・どっちもどっちなのかもしれないね。
なので、そういった話は持って行かないでくれるかな?」
「善処します。」
「そこは否定しようか・・・一応僕がお付の際の上司なんだよ?」
「そうなのですが・・・王家のご意向を無視は出来ませんので・・・ある程度は頑張ります。」
「うん、頑張ってね。」
スミスは王都に着くのが嫌になって来ていた。
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王都からのトレーシー達の馬車。
「ん~・・・何もないね。」
トレーシーがのんびりと荷台に横になっていた。
「いや・・・トレーシー・・・気を抜き過ぎだろう・・・」
アンダーセンも荷台に居た。
今は嫁たちが御者台に居る。
子供達は昼寝をしていた。
「そうかなぁ・・・エルヴィス領に入って何もないし、昨日は村、今日は伯爵家がある街の西の町だろう?
もう安全圏だよ。」
「まぁ一番の難所はエルヴィス領に入った際の野宿だけだったな。」
「いや~・・・火起こしは魔法師専門学院以来だったね。
久しぶり過ぎて子供達に良い所が見せれなかったね。」
「いや・・・卒業生の方が上手かったのはわかるが・・・
王家専属魔法師部隊ではしなかったのか?」
「出張なかったね~。
王城に引きこもりしてました。」
トレーシーが言う。
「アンダーセンは?」
「第1騎士団より王都守備隊の方があったが・・・それでも頻繁ではなかったし、年に数回程度であとはほとんど村や町の宿に泊まったな。」
「ほぉ~・・・出張が多いのも大変そうだね。
肉体労働お疲れ様!」
「おーい、トレーシー・・・お前学院長になって変わったか?」
「変わったつもりはないけど変わっているだろうね。
まぁ王都に居て、仕事とはいえ野宿をする時は結構な厄介事の真っただ中というのは確かな事だよ。
こういった異動ならあっても当然だけどね。
文官業がそこそこ長いからね~。
今さら兵士は出来ないよ。」
「そうか・・・気が向けば鍛えてやるが?」
「・・・ん~・・・遠慮しようかな。
まだ太ってもきていないしね。」
「所長の喫茶店が出来ればそんな理由は通用しないと思うがな。」
「どういう事?」
「所長の料理を食べ過ぎると太るぞ。」
「太るという事は甘いのかぁ・・・甘いのは嫌いじゃないね。
でも食べ過ぎるという事はないんじゃない?
嫌いじゃないけどお腹いっぱい食べるという事はないよ?」
「ふっ・・・そうじゃないが、そう思っておけば良い。」
「え・・・どういう事?」
アンダーセンの言葉にトレーシーが訝しがるのだった。
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