第1238話 午後の訓練場。(アーリス発独自育成法の実践。)
射撃場に来た武雄と鈴音以外の面々がアーリスとアニータとミルコの後ろに立っている。
「では、まずアニータとミルコに最小のファイアを撃って貰いましょうか。
20mくらい先で四散させましょう。
はい、ファイア。」
「「ファイア。」」
アーリスの号令でアニータとミルコが同時にファイアを撃つ。
「うーん・・・ちょっと多い感じか?」
「「そうですね。」」
マイヤー達が2人の様子を見ながら評価している。
「良かった・・・初期のように多くはない。」
「ここまで幾度となく怒ってたからね・・・」
アーキンとブルックは安堵のため息をつく。
皆の前でアニータとミルコが緊張して失敗するかと内心ヒヤヒヤしていたようだ。
「なるほど。
確かに若干多いか・・・まぁ毎日最小のイメージを続けるとして次は威力の調整訓練なんだが。
アニータ、ミルコどうやっている?」
「えーっと・・・アーキンさんやブルックさんが当てた時の威力をイメージして同じになるように発現時の魔力量を調整しています。」
ミルコが言ってくる。
「うん、それが一般的な方法だな。
では・・・ちょっと変えてみようか。
まずは・・・ここ。」
アーリスが木の板を地面に刺す。
「からのここ。」
アーリスが板から15mの所の地面に線を書く。
とミルコとアニータが線の方に行く。
「違うぞー、こっちだ。」
アーリスが板の所で2人を呼ぶ。
「「?」」
2人が首を傾げながら板の方に行く。
「手本を見せようか。
まずは板の前で自分の最小のアクアを発動。
両手で良いかな。
この状態を維持したまま自分が下がる。」
アーリスがゆっくりと後退り15m離れた線まで行く。
「「!?」」
ミルコとアニータがアクアの水の塊りとアーリスを見比べている。
「これに慣れると発動初期の魔力量でそのまま当てられる。
結果、総消費が抑えられるという事になるんだが・・・どの距離まで最小の魔力量で出来るのか自分で確認するとその距離が自分に取って効率が良い最長距離となる。
で、その距離を超えると消費魔力が増えるからな。その辺も確認する方が良いだろう。
魔法の最大射程は250mを想定した方が良いがまずは15mから始めてみようか。」
アーリスが言ってくる。
「「はいっ!」」
アニータとミルコが返事をする。
「アニータとミルコの適性が高い魔法は何と言われた?」
「私は風系です。」
「僕は土系です。」
「そうか。
なら、そうだなぁ・・・アニータはエアロで手の中に風の塊りを作ってみようか。
ミルコはストーンだな。」
「風の塊りですか?」
「うん、エアロは『そよ風を当てている』と感じているが『風の塊りを当てている』というイメージも出来る。
アニータ、えーっと芝生を少しちぎってくれ。」
「はい。」
アニータが地面の芝生を少しちぎる。
「こうやるんだ。」
アーリスが両手の自分の前で両手で物を持っているようにする。
「アニータ、上からかけてくれ。」
「はい。
え?」
アニータがアーリスの手の中で芝生がくるくると回っているのに驚く。
「ゆっくりで良い、まずはこうやって風を回し続けるという事が基本だな。」
「わ・・・私にも出来ますか?」
「ま、初めは難しいかもしれないが、1回出来るとその後は簡単に出来るぞ。
当てるのではなく回し続けるんだ。
とりあえずやってみようか。」
「はいっ!」
アニータが目を輝かせる。
「次はミルコだな。
ストーンは出来るか?」
「はい!
ストーン。」
ミルコが手に拳よりちょっと大きめの石を出す。
「少し大きいが、うん、問題ないな。
ミルコ、これを丸く出来るか?」
「丸くですか?」
「ああ、今はゴツゴツとしているが、丸くして見ようか。
こんな風に。」
アーリスが綺麗な球を作り出す。
「このぐらい丸く・・・ん~・・・」
ミルコが手の中で作っては下に落し、作っては落しを繰り返し始める。
「・・・2人ともゆっくりで良い。
まずはその場で満足のいく物を作って見なさい。」
とアーリスが後ろの人達に近づく。
「・・・こんな感じですよ。
上手く行けば威力調整が完璧に出来る魔法師が出来上がる。」
「・・・風や石を綺麗に球体にか・・・
確かにイメージの向上にもなるし、自分の方から距離を取る事で維持する魔力の効率化と省力化になるか。
アーリス、これ守備隊に奏上したらどうだ?」
「あ~・・・まずは2人が出来てからでしょうね。
それに上手く出来るかもわかりませんし。」
「そうか・・・じゃあ俺らもしてみるか。
距離は同じくらいで良いんだな?」
「ええ、同じですが・・・まぁ皆さんは2人と違いますからね。
徹底的に指導させて貰いますけど。
ブレア殿。」
「了解。
まぁあの2人を見て要領はわかりましたね。
この人員に得手不得手を言っても意味ないか・・・じゃあ、全員ストーンでしましょう。
まずは初めてだし・・・皆15分以内に拳大で綺麗な球体を作り出す事。
出来なかったら腕立て100回にしますか。」
「「嘘!?ヤダッ!?」」
「ははは、皆守備隊なので10分でも良いでしょうが、まぁ最初ですからそのぐらいですか。」
皆が慄くのをアーリスが笑っている。
「特にアーキンとブルックは指導教官だ・・・失敗するなよ?」
ブレアの最後の言葉が重低音すぎる。
「「はっ!」」
アーキンとブルックが冷や汗を流す。
「じゃあ、するか。
アーリス、ブレア、一応、この場の指導官なんだ、助言は頼むぞ。」
「「はっ!」」
「皆車座になれー。」
マイヤーが軽く声をかけるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




