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第1235話 客間にて。(アリスとエリカと武雄で政策の話し合い。)

エルヴィス家の客間。

「ん~・・・アリス殿、これがこの逆の提言をしていますよ?」

「あ、本当ですね。

 でも・・・前のままにしているのですね。」

「これの次を出してきたのが2年後って・・・ん~・・・凄い文官が居ますね。

 普通結果は4、5年見ると思うのですが。」

「エルヴィス家はダメだと思ったら即修正案が入りますね。

 ですが逆の案は不可になる事も多いです。

 説得が出来なかったのかもしれませんし、まだ早いという判断だったのかもしれません。

 それに前の物が発案して6年後に良い結果が出ているようですから逆の提案を見送った判断は間違っていなかったのでしょう。」

「ん~・・・なるほど・・・

 でも、この逆の提案の内容も一理ありますね。」

「それはそうですよ。

 政策が通るという事はその案が秀でていたという事、その案を2年で覆そうというのならそれなりな論調になるのではないですか?」

「でもその内容でも却下する・・・文官は良い判断をしていますね。

 あ、この判断は経験からだけじゃないのか・・・付属資料がしっかりしている。」

アリスとエリカが資料を片手に見比べをしている。


武雄はそんな2人を見ながら「真面目なのは良いのですが、エリカさん・・・この調子だと王都に戻るの数か月後になりそうですよ」と呆れるのだった。


と武雄がアリスとエリカが見終わった資料を手に取り中を見る。

中身は論文形式で書かれている物だったが、概要を言うと他領で生産されている作物をエルヴィス領内で試作する際の評価及び記録方法を論じた物で、無作為に選んだ20個の苗の平均を基に実の数、大きさ、味、幹や葉の大きさや必要な畑の広さ等を記録し評価をすると書かれていた。

「・・・味ですか?」

専門家でない武雄が文官が付ける農作物の評価に何かを言うつもりはないが、味というあいまいな評価項目がある事に違和感を覚える。

ピーマンのように生で食する場合と火を通したり違う食材と和えた場合とで評価が異なる食材もあるはずだし、極論を言えば個人の趣向に依っても評価が異なってしまうと考えられるからだ。

味の評価とはあって然るべきだが、甚だ信用度が低そうな調査結果になりはしないか武雄は心配になる。


「タケオ様、何かありますか?」

アリスとエリカが武雄を見ながら聞いて来る。

「ありませんよ?どうしましたか?」

「いえ・・・難しい顔をされていましたので、何か思う所があるのかと。」

「特にはありませんよ。

 アリス、確かエルヴィス領でも農業試験をしていると前にフレデリックさんが言っていましたよね。」

「ええ、私は詳しくは知りませんが、経済局で取りまとめていると思います。」

「わかりました。

 今度寄ってみますかね。

 エリカさん、どうですか?」

「いや・・・しっかりしているなぁと。

 それとカトランダ帝国(実家)とは変わるんだなぁと。

 土地と政治が違えば提案も変わるのはわかってはいますが、結構違う物ですね。」

エリカが書類を片手に顔を上げて言ってくる。

「今は農業系ですか?」

「はい、やはり国家も領地も支えるのは農業が第一です。

 まずはここを見ないといけないと思いました。」

「どうですか?」

「ええ・・・王都で見た資料ではエルヴィス領はあまり恵まれていないとの一言でしたが、こうやって現地の文官達の提案や資料を見ていると少しずつ生産力を上げているのがわかります。

 ですが、若干、早急な成果を求める風潮があるように思われる論調ばかりですね。」

エリカが考えながら言う。

「あ~・・・それは私も思っていましたし、エルヴィス家の皆がわかっている事ですね。」

アリスが苦笑する。

「ええ、たぶん悠長に5、6年も待っていられないという事なんでしょう。

 私も前はそうでしたのでわかりますし、ウィリアム殿下領でも同じ事が始まるだろうとは思っています。

 ですが・・・ん~・・・先ほどの提案もそうですが、しっかりとした長い年月を見ながら成果を出す物とすぐに変えなくてはいけない物。

 これの見極めを皆でしないといけないというのがエルヴィス領の資料からわかります。

 でも・・・この提案を実際にされたら拒否出来るかなぁ・・・」

「タケオ様、もし2年前に出した農業系の提案を転換する意見書が出て来たらどうしますか?」

「・・・幅が広すぎて答えが適切かわかりませんが・・・

 そうですね・・・私が携わる事で言うなら米なら却下、農業試験的にやる新種の作物の育成もしくは改良についての意見なら言って来た者とベルテ一家と私で協議し、妥協点を探しますかね。

 農業はやるかやらないかと言った簡単な物ではないですからね。

 例えば今よりも実が2倍出来るジャガイモがあるからそちらを各農家に売り込みましょうという意見があったとして、やるに当たって経費や労力が3倍になるのならそれはちょっと違うとなるでしょう?

 なので、まずは提案者と実務者で話し合いをして、その中で良し悪しを全部洗いだす必要があると思います。」

武雄が説明する。

「あ~・・・街中に出せる量が増えるというのは施政者側として嬉しい事ですよね。」

「でも労力と費用が増えて出荷量に見合わないのなら結果として値上げになってしまいますね。

 これでは出荷量が増えても良策とはいきませんね。」

アリスとエリカが考えながら言う。

「でも実が2倍になるというのは魅力的ですね。

 なら・・・せめて今の労力のまま、実を今よりも1.1倍、出来れば1.3倍を付けれる方法を考えるというのも一つの手です。

 まぁやり方はわかりませんし、品種改良でいけるのかもわかりませんのでそこは今は話せませんが、たぶん量を増やす方法と労力を抑える方法、相反する要求がお互いが妥協できる点があると考えるのが私達施政者側が考える事ではないでしょうかね?」

「「ん~・・・ですね。」」

アリスとエリカが頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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