第1234話 一旦帰宅。(過去の政策を検証しようと先行投資の判断は難しい。)
エルヴィス邸にて。
「あ、タケオ様、おかえりなさい。」
玄関を入った所でアリスがお茶を持っていた。
「はい、ただいまです。」
「アリス、たたいま。」
「きゅ。」
「アリス様、戻りました。」
「はい、3人ともおかえりなさい。
もうすぐ昼食ですよ。」
「「は~い。」」
「きゅ~。」
とビエラ達3人は食堂に向かって行く。
「えーっと・・・もうすぐと言ってもまだ出来ていないんだと思うんですが。」
「席で待っているんでしょうね。
タケオ様、キャラメル配りは終わったのですね?」
「はい、その後にラルフ店長の仕立て屋で打ち合わせをして、テイラー店長の魔法具商店でお茶をしてきました。
午後は鈴音と試験小隊の訓練場で面談してきます。
たぶん、他の面々とも話してくるでしょうね。」
「そうですか。」
「アリスは何をしているのですか?」
「あぁ、エリカさんと客間で話し合いです。
お爺さまは執務室に戻っています。」
「何を話しているのですか?」
「いえ、街の中心地をどう活性化させようかとか管理方法とかの話ですね。」
「・・・それってウィリアム殿下達と話す事ですよね?」
「ええ、そうなんですけど・・・
どうも実感が薄いようでエルヴィス家がこの街でしていた政策の書類と実際の結果を見て見識を広めたいみたいです。」
「エルヴィスさんやフレデリックさんが良いと言うなら平気ですが問題ないですか?」
「あ、そっちは了承を貰っています。
フレデリックからはむしろ『全部見てください』と言われました。
あはは・・・エルヴィス家は人手不足なのでしょうか。」
アリスが苦笑している。
「・・・あ~・・・エリカさんを外部からの監査に利用しようと?」
「はい、お爺さまも『自分達でしっかり見ているつもりだが、抜けがあるかも知れぬからの。
エリカ殿が見たい物を見て、聞きたい事は聞いて構わぬ』とお墨付きを出しました。
知らない王都の人間に調べられるより顔がわかっていて後ろ楯もしっかりしている人に見られた方が気が楽ですから。
ですけど・・・うちの政策を見てウィリアム殿下領で上手く出来るのでしょうか?」
「出来るかどうかはわかりませんが、実際に実施して失敗や成功をしている報告書は使い勝手は良さそうですね。
あとはエリカさんがウィリアムさん達が実施するかどうかを判断出来る資料を作れるのかですね。
今は何を?」
「総監部と経済局から10年ほどの政策提言案を持って来て貰って確認しています。
午後に余裕があればその内実施した物の結果と費用の資料の確認ですね。
私も一緒に過去の政策を確認しています。」
「・・・倒れないでくださいね。」
「タケオ様、疲れたら甘い物が食べたくなると思いませんか?」
「適度な糖分は必要でしょうね。
今日の夕食後のティータイムのスイーツはなんでしたかね?」
「15時くらいにも欲しいと思いませんか?」
「私は出かけますから欲しかったら料理長に言ってください。」
「タケオ様はどちらに?」
「試験小隊の訓練場です。
鈴音と面談してきます。」
「そうですか。
あ、そういえばコノハが何かアルコールランプとかいう物と内装壁というのをテイラー店長とハワース商会に依頼すると言っていたのですが、してきたのですか?」
「あ・・・忘れましたね。
あとでテイラー店長の方は鈴音に頼んでおきますか。
私は鈴音と面談が終わったらハワース商会に立ち寄ってきます。」
「わかりました。
タケオ様、昼食までは?」
「アリスとエリカさんの話を聞いていますかね。」
「では、客間に行きましょう。」
アリスが先導するのだった。
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ラルフは自分の店に入る。
「皆さん、戻りました。」
「店長、おかえりなさいませ。
先ほどまでキタミザト様がいらっしゃっていました。」
受付の女性店員が声をかけて来る。
「そうか・・・それは残念ですね。
トレンチコートの増産は上手く行きそうです。」
「王都からの依頼という話で出て行きましたが?」
「ええ、少し早いですが昼食で店を閉めますか。
皆に報告した方が良いでしょう。」
「はい、わかりました。
では、皆を集めます。」
女性店員が皆を呼びに行くのだった。
・・
・
「というわけで、トレンチコートが色別で作れそうです。
生地の方は問屋が調整する事で合意して裁縫の方も本格的にミシンが稼動する事でなんとかなりそうという見通しまで話してきました。」
「んー・・・その話は王都の仕立て屋経由なんですよね。
第1騎士団だということですが・・・700着でしたか?大丈夫なのですか?」
「全種類満遍なくというのはわかるのですが・・・
兵士達だと一回り大きいのが好きだろうからLLやLをもっと多くさせた方が良いと思うけどなぁ。
その辺は提案されるのですか?」
「色違いが出来るのはわかったのですが、何種類作る予定なのですか?」
「えーっと・・・
まずは王都の依頼の回答だと白と青が可能かの依頼でしたが、赤と黒と茶色も出来るという事です。
まぁ正確には今の生地に色を入れる事になる運びという事ですけどね。
染めるのもちょっと特殊な原料と色が抜けないようにする液体にも浸けるとの事で若干高めなんですよね。」
「店長、そこは見積もりに上乗せで回答ですよね?」
「原価のUPは致し方ないです。そこは特注品という事で生地を選ぶなら今後も割増しですね。
今、問屋に見積りを依頼しています。
それと700着の納期については現状の他の注文の合間で作るから正直に月何着かという回答しかできません。
サイズの提案については・・・特に言わない事にしました。
あくまで向こうで商売をしている仕立て屋からの依頼ですので私達よりも実情は知っているでしょう。
提案は向こうがすれば良い、今回に限っては個数の提案はしないとしました。」
「わかりました。
店長、工場用にミシンを発注しますか?」
「そこは・・・組合長と話し合いですね。
今の所は現状の慣熟作業中の延長でとしか言えない・・・のですが・・・あと8台くらいは入れないと700着は出来ないですかねぇ。」
「リボンとか言う特殊糸は大丈夫ですか?」
「サテラ製作所に依頼を出す予定です。
今の所、リボンが作れるのはあそこだけですからね。」
「店長、うちの店にも入れませんか?
研究所の作業服がキタミザト様に了承得られました。
それに制服もありますし、エルヴィス家の騎士団の制服も今年は多く作るという話を聞いています。
2台くらい入れませんか?」
「んー・・・事前に買うとは言っていますが・・・キャロルさんと話してみますかね。」
ラルフが想像以上に早く注文が来ている事に悩むのだった。
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