第1233話 鈴音と打ち合わせ。(怪我だけはするな。)
武雄とテイラーが雑談をしていると奥から鈴音が暗い顔をしながらやってくる。
「あぁ・・・テイラーさん、やっぱりダメでした。
一から考え直しです。
あ、武雄さん、いらっしゃいませ。」
「ええ、いらっしゃいました。
鈴音どうしたんですか?」
「いえ・・・槍の柄の注入試験で失敗しまして。
今日は後片付けと装置が壊れてないか確認していたのですが、一部の強度が足らなくて壊れてしまいました。
んー・・・減圧って難しいですね。」
鈴音が考えながら言ってくる。
「鈴音・・・一応聞いておきますが、どこの部分が壊れたんですか?
テイラー店長から棒が抜けたと聞きましたが。」
「はい・・・えーっと・・・紙はこれで良いか。
その前に装置の概要なんですが、まず円筒形の筒を用意して下部と上部を教えて貰ったフランジというやり方で蓋をしたんです。
で、上部の方に穴を開けて中に棒を入れる。
筒内では内円の径-2㎜の4㎜厚程度の板を配置し、棒の先端とくっ付ける。
で内円の板と筒との隙間はとりあえず内円の径+1㎜の円板状の消しゴムを4㎜板の上部に取り付けて終了。
あとの筒から出ている棒の端に紐を付けて高い台を作ってそこに滑車を取り付けて、紐の端部に重りを乗せて一気に引き上げる。
以上です・・・が、失敗しました。」
「うん・・・どうせ棒と内円の板の繋ぎ目が破断でもして取れたか減圧を失敗して上部の蓋に当たって棒の先端を壊したのではないですか?」
「・・・どうしてそう思いますか?」
鈴音が口を尖らせて言ってくる。
「紐っていうのは選定が間違わなければそうそう切れないんですよ。
ステノ技研の職人が安全性を見ないで紐の選定をするとは考えづらいですからね。
あとは内円の板と棒の取付方法が甘かった、そもそも減圧出来ずにただ単に加速しながら上部の蓋に激突して壊したか。
どちらにしても加重をかけるのがいきなりだった可能性はありますね。
徐々に荷重をしていたにしても壊れる程となるとどこかの段階で減圧が無くなって一気に動いたのかもしれないですね。」
「うう・・・ちなみに武雄さん・・・内円の板の取り付けはこうやって棒の端部と板の厚みの所の2か所に穴を開けて小棒を入れて挟み込むように固定するんです。」
「ガタがありそうですね。」
「そこは消しゴムのゴムの弾力で何とかなるのですが・・・
ここが壊れたんです。
上部の蓋に当たってボッキリと。」
と鈴音が小棒を指す。
「・・・小棒をもっと太くすれば良かったのに・・・」
「高さ10㎝の空間を30㎝程度まで引っ張る程度の試験だったので・・・このぐらいで良いかと。」
「ん~・・・確かにその程度の高さを引っ張るならそこまで必要じゃないような・・・
材質かなぁ・・・なんでしょうね。」
「今、親方達が材質の確認しています。」
「どうやってですか?」
「叩いて・・・溶かしてもう一度作るとか息巻いてます。
次は押さえの小棒も引っ張る棒も3倍くらい太くする予定です。」
「・・・まぁしたいようにしなさい。
ですが、怪我だけはしてはいけませんよ。
試験をする時は安全に気を付けてください。」
「はい。」
鈴音が頷く。
「それと鈴音は今日の午後は空いていますか?」
「何もありませんね。
何かするのですか?」
「では、13時半ぐらいに試験小隊の訓練場で。
少し話をしましょう。」
「はい、わかりました。
話すだけですか?」
「ええ、面談ですね。」
「・・・親方連れて行った方が良いのでしょうか・・・」
鈴音が目線を右往左往させながら言う。
「私は鈴音の担任ではないですから保護者の同席は必要ありませんし、こちらから日常生活に何か言う事もありません。
鈴音がしたいなら聞きますよ?」
「いえ!必要ありません!」
鈴音が慌てて止める。
「とりあえず話をしましょう。
まぁ雑談です。」
「はい、ならノートと鉛筆を持って行けば良いかな。」
鈴音が頷く。
「えーっと・・・テイラー店長に言う事は終わりましたかね。
テイラー店長はありますか?」
「いえ、これと言って報告する事はないかと。
あ、小銃改4の拳銃ですが、2丁め必要でしょうか?」
「そうですね・・・はい、確かに必要です。
それと小銃改1を追加でください。」
「壊れましたか?」
「いえ、ジーナに与えたので、予備が常備に移行しますから予備を作らないといけないでしょうね。
それと小銃改3の攻城用も1つ追加ですね。」
「となると小銃改1と小銃改3、拳銃を1丁ずつですね。
スコープはどうしましょうか?」
「標準装備品で、あとステノ技研に依頼して試験小隊全員分のスコープを作ってください。」
「えーっと・・・小銃に取付けをしますか?」
「いえ、持ち運んで遠方の監視に使わせます。
小銃はまずは400mで裸眼で当てられるように訓練しないといけません。
確か来月半ばには出来るような事を言われていますからその後に訓練開始でしょう。」
「わかりました。
それと・・・一つ思ったのですが、スズネさんの武器はどうしますか?」
「ふむ・・・護身用ですか・・・」
武雄は手のひらサイズの銃がある事は知っているが映画で見た程度なので何とも言えず、さらには魔力量は500程度なので無理は出来ないだろうと思うのだった。
「まぁ・・・とりあえず警棒でしょうね。
拳銃や小銃はまだ持たせられないでしょう。
あとはテトが上手くやる事を期待しますが・・・第一には逃げる事、逃げ先はエルヴィス邸、研究所、そしてここでしょうね。
この3か所ならそれなりの戦力がいますからね。
対処は出来るでしょう。」
「「わかりました。」」
鈴音とテイラーが頷く。
「さてと、私は一旦屋敷に戻ります。
では、鈴音、午後に訓練場で。」
「はい、わかりました。」
「ほら3人とも昼食を取りに戻りますよ。」
「「はい。」」
「きゅ。」
武雄が席を立ちビエラ達と店を後にするのだった。
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