第1229話 147日目 やっぱり頼りになるのはこの店だね。(ステテコを試作しよう。)
武雄が朝食後に各局や兵士の詰め所にキャラメルを届け、挨拶を終わらせて今はエルヴィス邸に向かって歩いていた。
「・・・お日様が高いという事は結構な時間になったかな?
ん~・・・なるほどね。」
武雄が時計を見て確認する。
と先の路地からビエラとビエラに抱えられているクゥとビエラの頭の上にいるミアが顔を出してこちらを見ている。
なぜか3人とも顔から疲労が見える。
「・・・何しているんですか?」
武雄が近寄り聞く。
「主がキャラメルを持って出掛けたのでどこに置きに行ったか見ていました。」
「あ~・・・」
「きゅ・・・」
ミアの言葉にビエラとクゥが頷く。
なぜだかチビッ子達は正直に答えてくる。
「いや・・・皆の分は屋敷に置いてありますよ?」
「はい、それは知っています。」
「はい!」
「きゅ!」
3人が頷く。
「?・・・なのに付いて来たのですか?」
「はい、主がどこに置いて来るか見ていました。
まぁ、ちょっと・・・いやかなり邪魔が入りましたが。」
「邪魔?」
「マイヤー様の娘さん達、王都から来た子供達が触ろうとして追いかけてくるんです。
主、あれです・・・王都に居る子供は妖精だろうが、ドラゴンだろうが珍しい物に触らないと生きていけないんですよ。」
「あ~。」
「きゅ。」
ミアの言い分にビエラとクゥが頷く。
「いや・・・流石に住んでいる街の子供限定で特異な行動をするという事はあり得ないのではないですか?」
「そうですか?
この街や領内の町や村だと遠巻きに見ているか会っても挨拶程度ですよ。
触れてくる者はいません。
アン殿下もクリナ殿下も大変でした・・・やはり王都に住んでいる人間は変なんです。」
ミアがワナワナさせながら言う。
「アン殿下もクリナ殿下も地方に住んでいます。
あの時はたまたま王都に居ただけでしょう。
それに子供ならミア達の可愛さで触りたくなるのではないですか?」
「・・・まぁ否定はしませんが。」
「あ~。」
「きゅ。」
皆が難しい顔をする。
「で、主、どこに行くのですか?」
「キャラメルは配り終わりましたから・・・
そうですね・・・昼までラルフ店長の仕立て屋に行きますか。」
「あ~・・・あそこですか。
あそこなら子供達の襲撃もないでしょうかね。
主、お供します。」
「あ~。」
「きゅ。」
ミアが武雄の胸ポケットに入り込み、ビエラとクゥが「抱っこして」と両手を上げている。
「しょうがないですね。」
と武雄がビエラを片腕で抱っこし、もう片腕でクゥを持ち上げるのだった。
・・
・
「キタミザト様、いらっしゃいませ。」
武雄達がラルフの仕立て屋に着いて入店した所に女性店員が声をかけてくる。
「こんにちは。
ラルフ店長は?」
「今は工場に行っています。
何やら王都から面倒な依頼があったらしく向こうで話し合いです。」
「へぇ~・・・まぁ忙しそうですね。」
「はい、おかげさまで。
昨日、キタミザト様の研究所の試験小隊の方々が制服を作りに来ていました。」
「ええ、その前の所では私も会っています。」
「そうでしたか。
こちらも作業が始まっています。
あと、襟章は今朝テイラー様の所に発注を依頼に行っています。
たぶん忘れるでしょうからこちらで手配しておきました。」
「あ・・・王都守備隊と第一研究所と第二研究所は同じ襟章になった事をテイラーさんに言ってないな。
この後寄って話してきます。」
「はい、畏まりました。
今日はどのような話を?」
「いえ、夏用のズボン下に穿く下着の考案をしに来たのですが・・・」
「あ・・・そうでした。
キタミザト様とアリス様の挙式の際に血相を変えて帰って来てすぐに組合の会合に出かけてしまいましたね。
キタミザト様、うちの店長そのうち倒れますよ?」
「ん~・・・私としては催促はしていないんですけど・・・
今回の納期は気ままで良いです。」
「わかりました。
で、ズボン下というのは?」
「夏場に涼しく過ごせたらと思ったのですよね。
まぁ試作して欲しいといういつものですよ。」
「はぁ・・・わかりました。
店長はいませんが、職人を呼んできます。
あ、それと作業服のチェックをお願いします。」
「はい、わかりました。」
武雄が頷くと女性が奥に職人を呼びに行くのだった。
・・
・
で、いつも通り店じまいされ店員皆が話に加わっていた。
「ん~・・・つまりステテコというのはダウンベストの時に話して頂いた『中の空気を出さないようにすれば保温効果がある』の逆でズボンと体との間に薄布を入れる事によって『空気を通りやすくし体温を下げる』という事なのですね?」
「はい、その通りです。
なので、どちらかというと余裕があるというわけにはいきませんが、若干の隙間があるぐらいの薄布で夏場なので汗を吸い込みやすくそして自身の体温もしくは風に当たると乾く・・・速乾性の生地が必要になります。」
「ふむ・・・着心地も悪くなくて汗の吸収が良い生地ですか・・・」
職人が悩む。
「18番の生地は?」
「あれは品質が悪いだけで着心地が良いわけではないし、水は吸収するが乾きが良いかと言うとちょっと違うんじゃないか?」
「ん~・・・薄手の生地何があったかな?」
店員達は武雄が欲しい生地があるのか考え始めるのだった。
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ラルフは自分の店の扉に「CLOSE」と掲げられているのをマジマジと見ていた。
そして店内から楽しそうな声が聞こえる。
「・・・まだ昼前・・・
・・・先に組合長の所に行ってからどこかの喫茶店でお茶をしてから戻って来ましょうかね。」
ラルフは店を後にするのだった。
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