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第1223話 その頃の寄宿舎では。6(情報は与えた。)

ルークとコートニーが退出した後で。


「どう動くかな?」

ターラがキティとモーリスを見ながら言う。

「・・・わからないわ。

 私達は父さんからエルヴィス家に対する不慮の事態を抑制するようにとの連絡があったし、外交局長にも過度の刺激を与える事はしないで欲しいと依頼はされたわ。」

「俺だってそうです。

 ただ、人事局は今各地方貴族から兵士の徴用を行っています。

 この方法では各地方貴族が王都に怪訝な目を向けるのは当たり前です。

 ここでさらにエルヴィス殿に何かあり、第3皇子一家の耳に入ったのなら魔王国方面3貴族が王都に対してどういった目を向けるかわかった物ではありません。

 こんな時に王立学院でのゴタゴタはごめんです。」

「モーリス君、徴用なんて辛辣ね。

 でも事実かも。」

キティが憐れんだ顔をさせる。

「父から今回のジーナ殿の入学は相当揉めたと聞いています。」

ターラが言う。

「でしょうね。

 それにキタミザト卿は先の慣例の暴行の犠牲者・・・あれで貴族会議のメンバーが入れ替えられたというのが王都の文官達の一貫した印象、第2騎士団もそうだけど・・・

 はぁ・・・そんな経験をしているキタミザト卿が主家の跡取りの為に用意したメイドでしょ?

 異種族とか奴隷の首輪とかのキタミザト家に不利になるような要素を持ってるにも関わらず入れるという事は何があっても精神的にも肉体的にも負けない人材のはず。

 武力は鮮紅殿に匹敵していても私は驚かないわよ。」

「・・・単騎で騎士団と渡り合えると?

 獣人という事で私達人間種より長命で能力は多少高いと教わっていますが、そこまでの人材なのでしょうか?」

ターラが首を傾げる。

「獣人とは長年隣接しているが、能力の把握は完全には出来ていないというのが本音の所なのだろう。

 ・・・ちなみにキタミザト卿がウィリプ連合国から連れて来た獣人3名だがな。

 王都守備隊員と1対1での連続戦闘を5人まで勝ち抜くのだそうだ。

 軍務局と人事局がその事に高評価をしていてキタミザト卿の引きの強さと見る目の正しさを実感しているらしい。

 用意していた初期の訓練内容を軽々と終わらせ、今は小隊行動とか言う多人数戦闘の訓練をしているんだそうだ。

 これも想定より相当早く熟すだろうというのが見通しらしい。」

モーリスがため息をつく。

「・・・キタミザト卿の見る目が正しく、一番最初に部下にした獣人・・・」

「ターラ、それとね。

 さっきのルーク君だけど、一部の人達には有名人なのよ。」

「彼がですか?」

「そうです。

 彼は先月でしたか?

 街の裏稼業の者に因縁を付けられ身ぐるみ剥がされて、路地裏で気を失っていた所を見つけたのがたまたま王都に来ていたエルヴィス殿。

 そしてエルヴィス殿は王城に連れ帰ってケアをかけたのがキタミザト卿。

 名もわからぬ者を助ける気概があるお二方なんだけど・・・ルーク君がキタミザト卿の配下の息子とわかると次の日にはキタミザト卿が動いてね。

 即日、実行犯を確定し、所属している裏稼業の家を1つ潰したのよ。」

「潰した?」

「正確には警備局の取り締まりに協力して、内通している貴族との癒着情報を見つけたという事らしい。」

「らしい?」

「手柄は全部警備局に譲ったというのが報告書を見た外交局員の印象よ。

 私も一部見せられたけど、元々3日連続捜査を実施する予定で組まれた日程だったのだけど、初日からキタミザト卿が協力した所のみ貴族との癒着の証拠が大量に出てきて、他の裏稼業の家の捜索が2日延長されて徹底的に取り締まりをしたという噂が軍務局で立った程、成果が凄かったのよ。

 まぁその時の証拠で有益な情報がいっぱい手に入ったから警備局の評価は王城内でも良いのよね。

 父さんの外交局もその情報が入って来て『警備局が大手柄だったんだぞ』と興奮していたわ。」

「・・・つまりは・・・

 警備局はキタミザト卿に恩義があると?」

「そうだけど、違うな。

 キタミザト家は家族や部下や部下の家族に何かあると即時対応・・・即時臨戦態勢が整うという事、そしてジーナ殿は主家の跡取りを守る為に送り込まれるメイドという事だ。」

「・・・父親達が必死になる訳ですね。」

「だからそう言っている。」

「まぁ私にはジーナ殿の入学確定と同時に今回の一連の顛末が教えられたけど・・・

 王城は思ってたより大変なんだなぁと思ったわ。」

「俺もです。

 まさかこうもいろいろあるのだとは思いもしませんでした。」

「ん~・・・私、キティ先輩やモーリスより与えられている情報が低い気がするんだけど。」

「ターラ、これに関してはあまり深入りするのは勧められないわ。

 貴女の父君の判断は間違っていないと思う。

 必要最低限がわかっていれば良いのよ。」

「そうだな。

 全容を知ると王都が嫌いになる可能性がある。」

「え・・・そんなに闇が深いの?」

「深いと言うか・・・たぶん私の父が言う情報とモーリス君の父君が言う情報は同じ物を見ながら違う情報を言っている可能性があるわ。

 そしてターラの父君も私達2人の父親とは違う印象を持っているはず。」

「そうなのでしょうか?」

「残念ながらね。

 『所属する所が違えば見方は変わる物』

 面通しの際に私の父や外交局長と話していると良く出た言葉よ。

 なので、この事に関してはこれ以上の議論を貴方達とする気は無いわ。

 私達がする事は王立学院を安定させる事。

 そのための情報の共有はするけど、議論は父達の文官がするべきであって私達学院の生徒がする事ではないからよ。」

「「わかりました。」」

キティの言葉にモーリスもターラも頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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