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第1222話 その頃の寄宿舎では。5(王都の思い。)

「さて・・・じゃあ、情報だけ渡しておこうかな?」

キティが室内の4人を見ながら異論がない事を確認する。

「まずは現状、寄宿舎には・・・あぁ寄宿舎と言う場合は王家と貴族が入っている建物を指すからね。

 こっちは宿舎と言われているから。」

キティがそう言うとルークとコートニーが頷く。

「寄宿舎には今、第2皇子ニール・アラン・アズパール殿下のご息女のエイミー殿下がいらっしゃいます。

 3年生で生徒筆頭です。

 知力、交渉力、覚悟ともに優秀で『王家とは』という考えを体現されているような方です。

 2人ともお会いした際は殿下呼びで問題ないので挨拶はしてください。」

「「はい。」」

「ちなみに寄宿舎には(・・・・・)他の3年生と2年生の王家や貴族は居ません。」

「ちょっと親御さんが問題を起こして退学されたんですよね。」

「あれはちょっとでなくても大問題だ。」

モーリスとターラがヤレヤレという風を醸し出している。

「「・・・」」

「今年は王家では国王陛下の弟君であるフィル・ジョン・アズパール大公の孫娘のグレース殿下が入られます。

 まぁこの方は・・・いろいろ面倒なので注意してください。

 次に魔王国方面貴族であるエルヴィス伯爵家の次期当主スミス・ヘンリー・エルヴィス、王立研究所 第一研究所 所長であるアルダーソン男爵家の長男イーデン・バリー・アルダーソン、貴族会議のボールド男爵家の長男カイル・ボールドが入ります。

 エルヴィス家以外は今年新任された貴族で元騎士団上がりなので・・・不慣れな事もあるでしょうね。」

「不慣れ・・・ですか?」

コートニーが聞いて来る。

「ええ、いきなり父親が貴族になったからと言って私達が貴族の行動や発言が出来るわけではありませんから。

 本人達も大人しく過ごすでしょう。」

「そうですね。」

「それと現在宿舎に貴族会議のバンクス男爵家の長男ゲイリー・バンクスが2年生でいます。」

「「宿舎?」」

「ええ、つい先日まで父君が地方貴族の文官をしていたのよ。

 この間男爵になられたのだけどね。

 モーリスやターラ達、級友達が皆で人事局に『環境を変えないで欲しい』と嘆願して本人も『宿舎で問題を起こさないので生活させて欲しい』と言って来て特例で許可しているわ。

 本人もいきなり宿舎から寄宿舎に変わるのは気が引けるのでしょう。」

「キティ先輩・・・彼は『エイミー殿下やグレース殿下と過ごすのは胃に悪い』と言っていましたよ。」

「そうだな。

 『貴族風なんて吹かせないし、今まで通りでお願いしたい』と皆の前でも言っていたな。

 本気が伝わったから皆のコネを使いまくって許可を取ったが。」

「泣きながら言うとは思わなかったね。」

「・・・まぁ私でも同じ状況下に置かれたらするでしょう。

 なので、同じ思いのアルダーソン殿とボールド殿も緊張しながら過ごすと思われます。

 こちらには頑張って貰いましょう。」

「「そうですね。」」

キティの言葉にモーリスとターラが頷く。

「私達が注目、および警戒しているのはエルヴィス殿です。

 まぁ2人が入学した理由かもしれませんが・・・

 エルヴィス殿は姉上がゴドウィン伯爵家の正室、第3皇子ウィリアム・アラン・アズパール殿下の側室、キタミザト子爵家の正室となっています。

 なのでエルヴィス殿には強大な後ろ盾が居ますので注意してください。

 さらにお付で来るジーナ殿は・・・殿で良いのでしたか?」

キティがモーリスを見る。

「呼び捨てでも構わないという話でしたが・・・どうしますか?

 そもそもお付に声をかける事もないというのが普通かと。

 エイミー殿下のお付の方は『お付の方』で通っていますが・・・」

「・・・『エルヴィス殿のお付の方』という呼称で今後行こうかな・・・

 今はジーナ殿という事で。」

「まぁキティ先輩が言いやすい方で。」

「それが一番です。」

キティの決定をモーリスとターラが追認する。

「ジーナ殿はキタミザト子爵家よりエルヴィス伯爵家に貸し出すメイドとなっています。

 異性を付けるというのはそうないという事ですけど。

 まぁ向こうにも思惑があるのでしょう。」

キティが頷く。

「ジーナ殿の種族は人間から狼に変身する型の獣人で、キタミザト子爵がカトランダ帝国に行かれた際に購入した奴隷となっている。」

モーリスが伝える。

「書類上を見るとそうなんだけど。

 我が国では奴隷は25年で解放する事という法律が出来てね。

 ジーナ殿は期限付き奴隷という事になっているの。

 本人も了承していて聞く限り普通の給料も出ているみたいなので王都としては黙認する事になっているわ。

 それで・・・」

ターラがキティを見る。

「黙認する背景としては、王都の文官達はこれを異種族雇用の契機と見ています。

 まずお付として異種族を入れ徐々に増やしていきたいという目論見です。」

「王都としては法を順守してくれるならば国民と認めているので、奴隷の首輪以外は全く問題ではない。

 奴隷の首輪についても王都で問題になっていないので俺達王立学院も気にしない事となっている。」

「それにジーナ殿はキタミザト子爵や鮮紅殿に可愛がられていると聞いていますし、王家の人達にも面通しが済んでおり、能力を認められエイミー殿下や皇子ご一家と普通に会話する仲であると報告されているわ。」

3人の先輩たちが矢継ぎ早に説明する。

「「・・・」」

ルークもコートニーも何も言わずに聞いている。

「まぁ・・・結局の所、『エルヴィス家の2人には邪な事をしないでおいてね』と言う事です。

 もし2人に何かあれば上の方が大変な事になる可能性もあります。

 生徒として級友として普通に接してください。」

「それとジーナ殿に対して何か良からぬ企み等があった場合はまず俺に報告してくれ。

 教職員に言うと上が動きかねない。

 まずは生徒自身で対応するしかないからな。」

「私達でなくても今年は王都の文官の子供が数名入るからその子達に連絡してくれても構わないわ。

 まぁ彼女達に報告させもするんだけど情報は多い方が良いしね。」

「・・・ちなみに今年入る文官の子供はもう先輩方の派閥に入ってるのですか?」

「ええ、面通しは終わっているわ。

 いや~・・・あれは怖かったわ。」

「俺だってそうだ。」

「そうだよね・・・私達が普段、会わないような人達だったよね。」

3人の先輩は面通しの際の事を思い出したのか苦笑している。

「そうなのですか?」

コートニーが聞く。

コートニーとしては「子供同士で会ったのでは?」と簡単に考えたが。

「人事局長と総務局長と外交局長が居たよね。

 なんで私達の父親の局長がくるのかな?」

「それに警備局長、財政局長も居ましたよ。

 キティ先輩挨拶しなかったのですか?」

「私は父に連れられて外交局の方々と話していたし、挨拶はそこそこで。」

「俺は父に連れられて挨拶ばかりでしたが。」

「私もそつなく皆様に挨拶でしたよ。

 おっと話が逸れましたね。

 キティ先輩、他にありますか?」

「無いですね。

 ルーク、コートニー、一応事前注意という事で言っておきましたが、気が向いたら私達の所に来れば良いです。

 派閥とか関係なく話をしましょう。

 では、2人ともありがとう。」

「「はっ!」」

ルークとコートニーが席を立ち退室して行くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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