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第1218話 その頃の寄宿舎では。1(エイミーとグレース。)

「・・・」

エイミーが自室の一番お気に入りのヌイグルミに祈りを捧げていた。

「・・・あのぉ・・・エイミー?

 祈っている所を申し訳ないんだけど・・・」

アルが後ろから恐る恐る声をかける。

「アル!私は真剣よ!」

エイミーが祈りの体勢は崩さずに目を開き答える。

「うん、わかってる。

 でも、流石に体の一部を豊かにしたいという願いは・・・叶わないんじゃ・・・」

「アルは言いました。

 祈りを捧げれば叶う事もあると。

 本気で信ずる事で自分に暗示をかける事が出来れば、普段より成果が上がる事もあるのだと。

 私は自分に暗示をかけているんです。

 望む成果を手にする為に!」

「・・・栄養が行きますように?」

「否定はしません!」

「はぁ・・・たぶんスミスは大丈夫よ。」

「エルヴィス家は姉妹3人ともあの胸です。

 ・・・侮れません。」

「いや・・・侮るとか・・・そういうことでは・・・

 あ・・・隣に引っ越してきたみたいよ?」

アルが壁を見ながら言う。

「グレースが・・・とうとう来ましたか。」

エイミーが立ち上がる。

と扉がノックされると同時にアルは姿を消す。

エイミーが扉の方を向き1つ深呼吸をして気合を入れる。

「・・・どうぞ。」

「失礼いたします。

 エイミーお姉様。4月よりお世話になります。

 グレースです。」

目の前でエイミーより若い女性が恭しく礼をしてくる。

「グレース。

 ようこそ王立学院へ。

 わかっているとは思いますが、問題事は起こさないように。」

「承知しております。

 ですが、基本的に私から起こした(・・・・・・・)事はございません。

 エイミーお姉様、そこは語弊なきようお願いいたします。」

「・・・淑女たれとは言いませんが・・・もう良い加減落ち着いてね。

 本もちゃんと読んでね。」

「私はいつも落ち着いておりますし、本も最近読み始めています。」

「そぉ・・・何かあれば私が貴女を制しなくてはいけないけど・・・」

「エイミーお姉様が私を?」

「私の力ではグレースを止めるのは無理なのは承知しています。

 まったく・・・アリス様を見習うとか言っておいて、一番に武力なんて見習わなくて良いと思いますが。」

「いいえ!エイミーお姉様!アリス様は文武両道!男性文官や武官にも物怖じせず意見を言うと書いてあります。

 これは男性に対しても互角の力があるから発言が出来ると読み解きました。

 私も男性に力で来られても振りほどける力を付ける事こそ大事なのです。」

「・・・はぁ・・・グレース・・・

 私は会った際にお話もいろいろしていますが、アリス様は頭の回転が速いのです。

 そして地に足の着いた真っ当な意見を言っています。

 力があるから発言が出来るのではなく、ちゃんとした施政が出来るから意見が皆に通るのです。

 決して力があるからではありません。」

「そうでしょうか?

 所詮は地方の文官達です。

 いくら貴族令嬢といえど女性が政策に口を出すのは訝しがられるのではないでしょうか?」

「・・・エルヴィス家の文官が女性の意見だからと訝しがる?

 グレース・・・どこの文官の話をしているの?

 エルヴィス家は王都の東北部で魔王国軍と対峙していて、収支がカツカツな貴族なのよ?

 良い意見を採用し続けないとあっという間に領民が困窮してしまう可能性がある状況下において、女性だ男性だと意見への拘りなんてあるわけないでしょう?」

「ふ・・・エイミーお姉様もご存じない?

 最近そのような話が王都で噂されているのですよ?

 確かにエルヴィス家がそうと聞いてはいませんが、それはアリス様がしっかりと意見を言って周知しているからでしょう。

 他の貴族ではそうはいかないかと。」

「・・・ふ~ん・・・

 ニール殿下領(私の家)では聞いた事はないわね。」

「それはニール伯父様の施政が良いからでしょう。

 それに王家の女性の意見を蔑ろにする訳ありません。」

「それは貴族領もなのでは?」

「果たしてそうでしょうか?」

「・・・まぁ良いわ。

 ここで私達が論ずる事ではないわね。

 グレース、これからは節度ある態度をしてくれると信じています。」

「はい、わかっております。

 あ、それと1つ確認なのですが、エイミーお姉様の隣の部屋、203号室は王家でも貴族でもない貴族のお付が入ると先ほど説明されておりますが、本当でしょうか?」

「ええ、本当よ。

 だから?」

「・・・王家の隣に貴族のお付とは・・・よろしいのですか?」

グレースが目を細めながら聞いて来る。

「今回の処置は特例です。今後ともされるとは聞いていません。」

「王家を蔑ろにしているようにも受け止められるかと思いますが。」

「・・・お爺さまも3皇子も認めています。」

「文官達が何を言い出すのやら。」

「オルコット宰相、人事局長、総監局長、総務局長、さらにクラーク議長以下貴族会議が認めています。

 ここに異を唱える者がいるとは思えませんが?」

「・・・特例なのですね?」

「ええ、今回の処置は特例です。

 今後同様な事があればまた皆で話すのでしょうが、慣例化するとは聞いていません。」

「そうですか・・・キタミザト家はそれほどまでに?」

「正確には『も』という所でしょう。

 グレース、言っておきますが、ジーナに何かあった場合は3皇子家と警備局は確実に敵対すると考えなさい。

 もちろん私もジーナに非がない場合はジーナ側ですからね。」

「それほどまでなのですか?」

「ええ、今私は控えめに言っていますからね?

 グレース、内乱に発展するよりかは切る事を選択するのが、国家の意思です

 その意味・・・解っていますね?」

とエイミーは言いながら「さらに少なくともエルヴィス家とゴドウィン家、各皇子家の妃達が同調したらアシュトン子爵家、テンプル伯爵家が加わる・・・最悪だ」と思っている。

「・・・わかりました。」

「意見をぶつけ合うなとか触れ合うなと言う事ではありません。

 議論も必要でしょうし、競い合いも良いかと思います。

 ですが・・・悪質な場合は指導しますからね?」

「はい、わかりました。

 では、エイミーお姉様、失礼いたします。」

グレースが退出していく。

「はぁ・・・パットより面倒になりそうだなぁ・・・」

エイミーが1人部屋でため息を付くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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