第1210話 145日目 夕食後のエルヴィス邸にて。(こっちでも話題は野菜。)
夕食も終わり、食後のティータイムはいつもの通り客間です。
「タケオ、昼に報告が上がって来たんじゃが、野菜の売上が良いみたいじゃぞ。」
「タケオ様、ウスターソースが浸透し始めて各店が安価な料理として野菜炒めを推しているようです。」
エルヴィス爺さんとフレデリックが武雄に言ってくる。
「・・・ちょっとした流行が始まりましたね。
んー・・・野菜に行きましたか。」
「タケオとしては揚げ物が流行ると思ったのかの?」
「半々でしょうか。
私としては野菜炒めも良いですし、揚げ物や肉のソースにしても問題ないと思っていたので、各店では半々で出されるかと思っていました。
屋台には肉関係が多かったですので肉の需要が高まるかと思っていたのは事実です。」
「確かにの。
屋台には肉にウスターソースの組み合わせが多かったのは確かじゃが、店としては野菜炒めの方を推すか。
ちょっとした矛盾じゃの。」
「・・・店としては肉推しだったのに領民達が野菜炒めを選んだという事かもしれません。」
「なるほどの。
作り出す方の思惑通りには客は動かぬ物ということじゃの。」
フレデリックの指摘にエルヴィス爺さんが頷く。
「基本は皆が楽しんでくれているようですので問題はないのですが・・・野菜ですか・・・
ベッドフォードさん、大丈夫ですかね?」
「はい、今日の報告がその内容でどうも収益に圧がかかっているようです。
野菜炒めの流行で需要は高まっているようですが、原料の高騰が少し気がかりだと。
一応、西町での春からのウスターソース向けの野菜の作付け面積は多く出来るだろうとの返答は来ています。
段階的には1歩目です。今後も増やしていく計画が西町から来ています。」
「需要増と原材料の費用増・・・対応策は始まったばかりですか・・・
ウスターソースを使わないでとは言えないですし、折角始まった流行に水を差すのも悪手でしょう。
それに流行は一時的でも長く愛される商品にしないといけませんよね。
段階的にでも野菜の作付面積の増加計画はありがたいですね。
なら・・・その作物が出来上がるまで、そしてウスターソースの生産数の安定の為に原材料とは違う野菜を使って今の流行を押し上げるしかないでしょうね。」
「ふむ・・・どうやるかの?」
「今すぐは思いつけませんが・・・エルヴィス家の料理人達と考えて・・・私が店頭販売をしてみますか。」
「前にタケオ様がされたウスターソースの初売りの際の店頭販売ですね?」
「はい、お店の仕入れ量や種類を変更させるというのは早々には無理でしょう。
なら、狙うのは一般家庭です。
今なら野菜不足は深刻ではないでしょうし、他のレシピもあるんだという事を知ってもらえれば分散すると考えます。
そうすれば野菜全体で価格の緩やかな上昇が見込めます。
価格の緩やかな上昇は農家の将来にも良い結果が生まれるはずです。」
「ふむ・・・1割か2割の家庭で趣向が変われば価格の上昇は緩やかになるかの。
2割とは出来過ぎかもしれぬが・・・」
「価格の上昇を抑えるのではなく緩やかに上昇させる・・・良い考えかと思います。
価格が少し上がるだけでも農家の実入りが増えやりがいに繋がりますね。
農業をしてくれる若者が増える可能性もあります。」
「ふむ・・・タケオ、それは実施の方向で良いじゃろう。」
「わかりました。
では、当分は夕食は野菜炒めですね。」
武雄がにこやかに言う。
「・・・3日・・いや2日に1回にして欲しいの。」
エルヴィス爺さんが挫ける。
「料理長と話して決めます。」
「うむ、頼むの。
で・・・じゃがの。」
エルヴィス爺さんが目線をアリス達に向けると武雄もアリス達を見る。
「楽しそうですね。」
「タケオは傑物じゃの。」
武雄達の目線の先にはアリスとエリカが将棋を指していた。
アリスは魔眼を発動し、エリカは自身の威圧で対応している。
2人とも本気で相手を威圧しながら将棋をしていた。
「・・・」
パチっ。
「・・・」
パチッ。
2人とも終始無言、その様子をヴィクターが双方のお茶を時たま替えながら眺めているそんな風景です。
カサンドラはエリカの隣に座って見ている。
「なぜああなったのじゃ?」
「知りません。
今日の夕食のメインは牛肉を焼いてトマトソースにウスターソースを混ぜた物にしていましたけど・・・
普通に楽しそうに2人とも食べていましたよね。」
「うむ・・・スイーツはレアチーズケーキじゃったしの。」
「ジャム美味しかったですね。」
「他に何かあったのかの?」
「んー・・・わかりませんね。」
武雄とエルヴィス爺さんが首を傾げるのだった。
アリスとエリカはこの勝敗をかけていた。
勝負内容は1つ。「明日の夕飯について」だった。
エリカはコロッケが良いと考え、アリスは紅魚のムニエルが良いと考えていた。
他の者が聞いたら「いや・・・どっちでも良いのでは?」と言いそうだが、2人は大真面目に勝負をしていた。
ちなみにスイーツは2人とも「甘い物なら何でも」とここは意気投合。
エルヴィス家は今日も平和なのだ。
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