第1209話 いつもの飲み仲間。(棚と金庫とソース。)
「いや~・・・仕事終わりはここだね~。」
モニカがワインを飲みながら言う。
「・・・モニカ、ペースが早いぞ。
それにしても中濃良いな。
キタミザト様の言う通り、確かに揚げ物に合う。」
キャロルが揚げ物を堪能している。
「やっと・・・やっと!キタミザト様の了承を得られたんです!
これで明日から研究所向けの家具を本格的に作れる!
明日からの事も考えて今日は従業員を早めに帰したし景気づけですよ。」
「・・・建方の親方が夕方来たんだが・・・モニカは内容は知っているか?」
「・・・あー・・・金庫?」
「話は行っているんだな。」
「うち断りましたからね。」
「モニカの所でも断る事があるんだな。」
「んー・・・本や食器の棚の引き出しとかならいくらでもするんですけど、金庫は・・・うちの職人では無理ですよ。」
「そうか。」
「キャロルさんは受けたんですか?
キャロルさんが金庫を作っているとは聞いた事がないですけどね。」
「受けた。
そもそも金庫自体の需要がなく、私でも2回程度しかないがな。」
「・・・そうかぁ。
据え付け型だと需要は少ないですかね。」
「あぁ貴族や豪商用の金庫だからなぁ。
一般家庭向けの小さい金庫ならうちまで話は来なかっただろうが・・・
モニカ、具体的に聞いたか?」
「いえ、金庫と言われて断りましたからね。
あ、でも本棚辺りに設置するとか言っていましたからサイズと重さの仕様が来ると思っていますよ。」
「・・・そうか・・・」
「詳しくは言えない感じですか?」
「すまんな。あまり詳しくは言えないんだが・・・棚の耐荷重はいくつを想定している?」
「全体・・・ではないですよね、サイズは?」
「一般的な書籍を立てかけた大きさだな。」
「棚としては高さ40㎝だとして一番不利な真ん中として・・・下から2段目なら20㎏いけるかいかないか・・・
仕切り板を上手くすれば30㎏はいける・・・かな?」
「そうか・・・モニカ、40㎏はいけるか?」
「本棚の構造と材質の変更をしないと・・・今からでは無理ですね。」
「・・・そうか。
15㎏なら何段目までいけそうだ?」
「・・・3・・・4段までですかね。」
「んー・・・そうかぁ。」
キャロルが頷く。
「参考になりましたか?」
「あぁ・・・私達も明日から取り掛かるが、早々に設計を終わらせて建方の親方とモニカに相談する場を用意する事にする。」
「了解しました。
とりあえず、本棚の製作は最後の方に回しておきます。」
「あぁ、そうしてくれ。」
キャロルとモニカが頷くのだった。
「ベッドフォード、どうですか?ほほほ。」
「俺・・・死ぬかもな。」
ベッドフォードが真剣な顔付で言うが。
「まだ平気そうですね。」
「そうですね。ほほほ。」
そんなベッドフォードを見ながらラルフとローがにこやかに頷く。
「気遣って!」
「大丈夫、大丈夫。
ダメだと口に出来ている間はまだ動けます。」
「ほほほ。
追い込み過ぎてもダメでしょうから休日は設定した方が良いですかね。」
「・・・その休日が難しいんだよ~。
決めなきゃいけない事も多いし・・・
それにソースの工場の清掃までは終わったんだけど、今は材料の仕入れ方法で難航中だ。」
「あれ?前に他の店からも売れ残りの融通を受けて仕入れると言っていませんでしたか?」
「あぁ、だが、ここに来て野菜炒めの流行が・・・原価を少し圧迫し始めてな。」
「あ~・・・ウスターソース人気ですね。」
「文官達との話合いでは夏以降に一旦今の流行が収まるのではないかという話になったし、来年にかけて西町が本気になるだろうと言っていた。」
「凄い話ですね。」
「ほほほ。
景気が良いですね。」
「とりあえず今の流行中は原価と利益がトントンなんだわ。
予定している個数の販売が出来るのかが心配だし、融通してくれる皆もわかってはくれているが目先の利益で野菜を売りたいというのはこっちもわかるしなぁ。
無理強いは今の所出来ない。
はぁ・・・原料の調達が出来なければ雇用の維持が短くなってしまって不平を言われそうなんだよなぁ。」
「そこは皆さんわかってくれるのではないのですか?」
「そうだと良いんだが・・・なるべく当初からの予定個数を作るようにしないといけないと思うんだ。」
「まぁ、そうでしょうね。
そうしないと返済計画も難しいでしょう。ほほほ。」
「そうなんだよ・・・
今のこの街を見ていると作れば売れるというのはわかったから、売れないというのは今は心配していないんだ。
文官の提案で無理のない返済計画にして貰っているが、それは定数が作れる事が前提なんだ。
これが崩れるのがなぁ・・・」
ベッドフォードが悩む。
「とりあえず、今は原価と売値が同じで利益が無くても、作るしかないでしょう。
今基盤が出来れば定期購入に繋がりますし。」
「はぁ・・・そうだなぁ。
おーい、赤の4つ目!2本な!」
ベッドフォードが店員にワインを注文する。
「・・・ほほほ。飲みすぎですね。」
「奥様に怒られますよ?」
「今は飲ませてくれ~。」
ローとラルフが同情の目をベッドフォードに向けるのだった。
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