第1201話 研究所の話。3(金欠研究所。)
コノハは武雄の書斎を去って行った。
パナはコノハを見送った後、姿を消していた。
「さてと、研究所としてあとは何がありましたか?」
武雄がヴィクターに聞く。
「建物の了承も得られましたし、据え付ける本棚等の建具も終わっています。
えーっと・・・こちらとこちらの書類にサインをお願いします。」
「はいはい・・・別紙の通りに実施を了承する・・・
問題ないですね。」
武雄が書面を軽く読んでサインをする。
「はい、ありがとうございます。
後は金庫の大きさですが、私共の家令の方は金貨等を入れますからある程度大きくしないといけませんが、主とマイヤー様の方はどういたしますか?」
「私としては本が横置きで数冊入る程度で構わないと考えています。
ですが、ヴィクターや親方が大きくした方が良いと言うならそちらで構いません。」
「わかりました。
話合いをして決めさせて頂きます。」
「ええ、お願いします。
あとは・・・」
「研究所の制服についてです。」
「はい。」
「私達、家令は事務処理では男性はエルヴィス家と同じ執事服、女性はエルヴィス家と同じメイド服とします。
移動及び屋外での作業にも同様にいたします。
ただし、有事の際は状況により制服や作業服を着用もするとします。」
「わかりました。
キタミザト家の家令とメイドとしてその服で事務処理や屋外の作業をするという事ですね。」
「はい、その通りです。
研究所の職員については通常は制服とし、訓練や任務内容によって作業服を着用するものとし、判断については部隊長に一任します。」
「はい。」
「制服等の補助金ですが、トレンチコートについては2割補助、制服と作業服については毎年1着ずつという制限はありますが、5割補助とします。」
「予算は足りますか?」
「毎年新規で10名分で金貨40枚を見ています。
それと既存の隊員の制服代で来年以降は金貨40枚を見込んでいます。」
「・・・はぁ・・・制服代で毎年金貨80枚ですか。」
「主、こう言っては何ですが・・・
現状の研究所予算は金貨1750枚ですが、2年目以降の人件費だけで金貨1260枚と試算しています。
残りの金貨490枚が開発と演習費となりますが、実際は備品等々で残りは金貨350枚あれば良い方かと。」
「・・・今年度の残りが金貨200枚程度でしたね。」
「今年度の残りは金貨220枚、銀貨6枚です。」
「・・・キタミザト家の収入はトレンチコートやウィスキー、ウスターソース等がありますから何とか維持出来るでしょうね。」
「はい、ベルテ一家の方にもそこから費用処理は可能かと思います。」
「問題は研究資金かぁ。」
「主、さらに言うと毎年小銃を10丁と弾丸年24000発を金貨70枚で用意するとの見積書がステノ技研より来ております。
10名に対して弾丸24000発必要と換算するとなると来年は10丁の新規の小銃と弾丸48000発です。
5年後までに3小隊60名になるという事は弾丸の費用もさらに上がるという事になりますね。
盾の販売を早々にして収入を確保しないと維持は出来ても研究が出来なくなる可能性があります。」
「そうですね・・・
何だかんだと言ってもパナにさせるスライムの体液研究は販売自体はエルヴィス家にして貰いますから向こうの利益になる。
私がするのはそこから製品を作る工房を探して、契約する事だけですが・・・」
「そこはキタミザト家の収入になるでしょう。」
「ですね。
となると鈴音にさせる駆動部ですが・・・これは早々に物が出来るわけではありませんからね。
幌馬車も改造するにしても工房の利益と私の知識面の収入となるとキタミザト家への収入ですね。」
「はい、研究所での収入は盾のみとなるかと。」
「・・・」
武雄が腕を組んで考える。
「主、キタミザト家は金銭収入の目途は立っていますが、研究所の収入が少なすぎるかと。」
「ふむ・・・武具の試験評価ですが、持ち込まれた物は経費を取りますか・・・
いや、それをすると賄賂の温床になりますかね。」
「そこは何とも言えません。
それに第二研究所だけで決められません、第一研究所にも意見を聞かないといけません。」
「盾か・・・
ヴィクター、エルヴィス伯爵領での盾は1m×1.5mの大きさだそうです。」
「はい、遠目ですが私も見た事があります。」
「・・・率直に言って・・・ヴィクター、獣人に対して地面に置きながらの盾は有効だと思いますか?」
「陣地の防御という事であれば有効かと思います。
ですが、それは動かない事を基本としているのがわかっています。
もしくは動いてもゆっくりと前進していき突撃があった場合は横および2列目の盾を上に置き隙間なく防御するという事なのでしょうが・・・
私も突撃はした事ありませんが・・・たぶん3割は抜けられるかと。」
「後ろに控えている兵士がその3割を討つ・・・か。
んー・・・有効かどうかは私ではわかりませんね。
ですが、戦術は機動力と連携で発揮する物ではあります。
その考え方から言うと・・・今の盾では私の戦術構想には不向きとなりますね。」
「となると・・・戦術を行う機動部隊用の盾と今までのような防御用の盾の2つを用意する必要があるという事だと思われます。」
「・・・ヴィクターの言う通りでしょうか。
1つは約400名の兵士用の今までの1m×1.5mのサイズの改良盾、そして騎馬にて対応する携帯に適した小型盾の開発ですね。」
「小型の盾は冒険者用にあると思われますが。」
「そこも標準化の為の試験の際に確認でしょうね。」
「・・・主・・・試験費用をどうしますか?」
「・・・はぁ・・・」
武雄が額に手を当てため息を吐くのだった。
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