第1199話 研究所の話。1(暇人の勝負と強盗との知恵比べ。)
エルヴィス邸の客間。
「んー・・・では、ここに。」
「そう来ましたか・・・んー・・・では、ここ。」
アリスとエリカが将棋をしていた。
「あの~・・・アリスさん、エリカさん、私ここで良いのですか?」
鈴音がお茶を飲みながらアリス達の対局を見ている。
「ええ、今お爺さまもタケオ様も執務中ですからね。
始めたばかりで邪魔はしてはいけませんよ。
もうすぐマイヤー殿達も到着するという話なのでタケオ様は切り上げて来ると思いますからそれまで・・・ここですね。」
アリスが話をしながら指している。
「んー・・・」
エリカが腕を組んで考え始める。
「それまでスズネさんもここでお茶をしていましょう。」
「はぁ・・・」
「スズネさん、送られてきたその・・・曲はそれほどの物なのですか?」
「はい、とてもではないですが今の世にあってはならないくらい完成されている曲です。
私と武雄さんが居た所では10人中7人は聞いた事があると言っても過言ではないくらい有名な曲です。」
「へぇ~・・・スズネさんは演奏出来るのですか?」
「流石にすぐには・・・教えてくれる先生も居ないので独学となると・・・
んー・・・やはりすぐにはお聞かせする事は出来なそうです。」
「そうですか。
今しばらく楽しみに待った方が良いのですね。」
アリスが頷く。
「ここですね。」
「・・・んー・・・そこかぁ・・・
あ、スズネさんものんびりしていて良いですよ。」
「はぁ・・・わかりました。」
鈴音がボーっとアリス達の将棋を見るのだった。
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武雄の書斎。
「・・・研究所の3階がこうなりましたか。」
武雄が机に図面を置いて見ている。
「はい、いかがでしょうか。」
「まぁ・・・使い勝手は良さそうですね・・・まだ広くないですか?」
「これでも小さくいたしましたが?」
「・・・そうですかぁ。
これ以上は難癖でしょうからね。
良いでしょう。これで行きましょう。」
「はい、畏まりました。
それとハワース商会から本棚の段数についての確認が来ております。」
「本棚の段数ですか?」
「はい、
本棚の下段は小物を入れる扉付きの棚ですが、その上の図鑑用の棚を1段にするか2段にするかの確認です。
1段にするなら一般的な書籍用を3段に2段にするなら書籍用は2段にとあります。」
「・・・ちなみに本棚は何個出来ますか?」
「個・・・組で言えば横幅が同じ物を2組になります。
こちらとこちらの対面です。」
「なら、1組は全て書籍用にして後の1組は1段が図鑑用3段が書籍用にしてください。」
「よろしいのですか?」
「構いません。
手元に置くのは頻繁に使う物だけでしょうからね。
図鑑のような大きな物は2階行きですよ。」
「畏まりました。
あと、建方の親方から金庫をどうするか聞かれておりますが、いかがいたしましょう。」
「・・・3階のですね?」
「はい。」
「ふむ・・・パナ。」
「はい、なんでしょうか。」
パナがチビッ子状態で武雄の肩に現れる。
「コノハを呼んできてください。
聞きたい事があります。」
「わかりました。」
パナが姿を消して去って行く。
「主?」
「・・・」
「いや、こういった事は皆様の意見を聞きたいのですね。」
「はぁ・・・ヴィクターはどこが良いと思いますか?」
「主の部屋が定番ですし、もっと言えば本棚かと。」
「なるほどね。」
「主はどこですか?」
「そうですね~・・・自分が強盗になった気分でどこにあると思うか・・・ですよね。」
「いや・・・主?その考えはいかがな物でしょうか。」
「この部屋は侵入されない、取られないと思うから自分の所に集約するのです。
でも入られて当然と考えると・・・普通は考えもしない所に置けば意表が突けるでしょうね。」
「そういうものですか。」
ヴィクターが考える。
「タケオ、連れてきました。」
「タケオ、呼んだ?」
チビッ子のパナとコノハがやってくる。
「ええ、コノハにも意見を聞こうと思いましてね。」
「これは研究所?
へぇ~。パナちゃん良い所に部屋があるわね。」
「そこは私の居城となります。」
「引き籠るのね。」
コノハが呆れる。
「今は3階の事をお願いしますね。」
「うん、で?」
「金庫の位置を考えています。」
「専門家ではないんだけどなぁ・・・タケオ、北はどっち?」
「ヴィクター。」
「こちらですね。」
「じゃあ、ここが良いかな?
この位置ならお金が貯まりそうよ。」
コノハが1点を指す。
「・・・そこは家令達の仕事場ですね。」
「なるほど・・・面白いですね。
じゃあ、キタミザト家のお金はここの金庫にしまいましょう。」
武雄がコノハの案を受け入れる。
「主!?
ここは階段の目の前ですし、壁も扉もない場所です。
こんな所では盗ってくださいと言っているような物です。」
ヴィクターが驚く。
「それで良いんですよ。
どうせ私は使いません、管理してくれるのはヴィクター達ですからね。
あ、開けるのに私の了承が必要にしますか。
鍵を私の所で預かるとかにして、出したかったら書類に記載して、ヴィクターとマイヤーさんと私の連名で開けるような書類の書式を作りましょうか。
それに個人的なものとして私とマイヤーさんの方にも本棚に金庫を設置してください。
出来れば結構わかりやすくしてあげたいですよね。」
「本をズラすと現れるとか本を倒すと蓋が開くって正統派な金庫だよね。」
コノハが頷く。
「んん~・・・家令の場所に金庫ですか・・・
となると書類を置く棚を奥にしてなおかつ並列にして一番奥まった所で見えないように置いておきましょうか。」
「ふむ・・・なら、追加でヴィクターの机の後ろに1個ですね。」
「主・・・金庫だらけですが?」
「1つの階で4つも金庫があるなんて強盗からすれば面倒な組織だと思われるでしょうね。」
武雄が笑っている。
「はぁ・・・1つの階に複数の金庫とは・・・そんな事普通は考えないと思います。」
「良いじゃないですか。
それに私やマイヤーさん、ヴィクターも個人で金庫があった方が便利なのは当然ですからね。
持ち歩けない書類も多くなるでしょうし。」
「はぁ・・・わかりました。
親方には4つで考えるようにして貰います。」
「ええ、お願いしますね。」
武雄の笑顔を見ながらヴィクターはため息を吐くのだった。
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