第1196話 エルヴィス領行き決定。(最速で頼むと2日で来る特急便。)
魔王国王都のレバントの店。
「んー・・・昼過ぎましたね。」
シモーナがお茶を飲みながら言っている。
「そうねぇ・・・ダニエラちゃん。説得に失敗したんじゃない?」
「・・・ダニエラが失敗なんてしないでしょうね。
今は旅の準備で遅刻しているのでしょう。」
「あら?カールラさんはダニエラちゃんをわかっているのね。」
「歴代最高の武力が行くと言ったのを誰が止められるのでしょうか・・・」
「そうなの?
となると陛下のお付だから引継ぎが伸びているのかしら?」
「・・・そうですね。そうとも言えますね。」
ブリアーニが目を細めて頷く。
「失礼する。」
と店の入り口に誰かがやって来る。
「はいはい、どちらさまですか?」
レバントが席を立ち出迎える。
「私はグラートと申します。
カスト伯爵領より堅魚の干物をお持ちしました。
こちらはレバント様のお店であっておりますか?」
少し歳が行っている風貌の男性が木箱を持って立っていた。
「え・・・はい!遠い所すみません!
私がレバントです!
どうぞ中に!どうぞ!」
「はい、失礼する。
・・・ん?」
グラートが入って来て店内を見るとシモーナと口を開けて呆けているブリアーニが居た。
「・・・カス」
「初めまして私はグラートと申します。
カスト伯爵家の執事をしています。」
グラートと言ったこの男はグラート・カスト、伯爵で領地持ちの貴族だった。
が、にっこりと挨拶をする。
「・・・わ・・・私はカールラと言います。
ブリアーニ王国の女王の侍女です。」
ブリアーニは頑張って自己紹介をする。
「あ、私はファロン子爵領で商いをしているシモーナです。」
「よろしく。
で、持って来た堅魚の干物はどちらに?」
「はい、こちらのカウンターにお願いします。
さ、こちらにどうぞ。」
レバントがカウンターにカストを招く。
「失礼する。
と、こちらが至急にとのことでまず60㎏をお持ちしました。」
「60㎏ですか!?」
「はい、それと我が領からの輸出は問題ありません。
ですが、3か月に1度の納入でお願い出来ないでしょうか。
輸送費がかかってしまいますので、年4回でお願いしたいのです。」
「年4回ですか・・・保存期間はどうでしょうか?」
「我らの方ではこれは半年から1年は問題なく食べております。
もちろん保存方法は風通しが良く、温度・湿度を低くして頂けるのが条件ではあります。」
「ふむふむ・・・最大1年ですね。
風通しの良い所で温度湿度を低く・・・と。
輸送日数はどうでしょうか。」
「我が領から王都までは約7日かかります。
これは今までの商隊の日数ですので間違いはないかと。」
「となると、シモーナさんの所を経由してエルヴィス領に付くのは最大でも2週間程度になるのか。
それに何だかんだと私もシモーナさんも他の輸送品もあるだろうし・・・
んー・・・実際は3週間と言った所ですね。」
「我が方も出来たてを出荷する運びになるでしょう。」
「ありがとうございます。
では年4回のご手配でお願いします。
と、あと値段ですね。」
「はい、こちらが年4回、60㎏ずつの輸送をした際の見積もりになります。
これが今回の至急の見積もりと請求書になります。」
「んー・・・なるほど。
品物単品が1㎏で銅貨50枚ですか。
60㎏だと銅貨3000枚、金貨3枚ですね。」
「ええ、そのぐらいはしてしまいます。
その分、品質はしっかりと管理します。」
「・・・わかりました。
では、金額もこれで構いません。」
レバントが頷く。
「はい、ありがとうございます。
そうそう我が領の商人達からお願いされましてね。
売りこみも兼ねましていろいろ持参いたしました。
こちらも吟味頂けますでしょうか。」
カストが木箱を開け、底の所から布に包まれた物を出してくる。
「えーっと・・・これは白い肉ですか?
見た事ないですね。もっと赤茶色が濃いのが多いのですが。」
「ええ、普通の肉に比べて白いのが特徴です。
あ、あちらの方々にも見ていただいて良いでしょうか?」
「あ、そうですね。
シモーナさん、カールラさんも一緒に見て貰えますか?」
「「はい。」」
2人がカウンターにやって来る。
「これはリザードマンの肉の干物になります。」
「「リザードマンの肉!?」」
レバントとシモーナが驚く。
魔王国では西南の森の中の湿地帯が主な生息地と思われていた。
東側からリザードマンの肉の干物が来るとは思ってもみなかったのだ。
「確か・・・カスト伯爵領での対魔物戦は主に湿地帯でしたね。
堅魚は湿地帯に?」
ブリアーニが「カスト殿の所は魔物との最前線だったか」と考えながら言ってくる。
「いえ、堅魚は元来海の魚なのですが、我らの領地にある奥まった湖まで遡上してくるのです。
不思議な魚なのですが・・・それを捕まえて干物にしています。」
「そうなのですね。
このリザードマンの肉の干物は美味しいのですか?」
「んー・・・割と淡白ですね。
我らとしては牛や馬、オーク肉の方が好みなのですが、我が領はこっちの方が多く捕れますのでね。
こちらが主になっています。」
「へぇ~・・・リザードマンの肉の干物かぁ・・・
西南の森の中にしかいないかと思っていました。」
「そうねぇ。
私もリザードマンの肉の干物は初めて見たかも。
こちらは通常は輸出は?」
「今まではしておりませんね。
領内で消費して終わりという形です。
この干物はワインで煮込んだりして少し柔らかくして食べるのがお勧めです。」
「なるほど・・・シモーナさん、これエルヴィス領に持って行こうか。」
「そうですね。
珍しがられると良いですね。
味を確認は出来ないのは残念ですが。」
「そうね~・・・旅の時に作りながら行ってみようか。」
「はい。」
シモーナとレバントが頷き合うのだった。
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