第1195話 旅の2組。(マイヤーとジーナ。)
マイヤー達はエルヴィス伯爵邸がある街に向かっていた。
「マイヤー殿・・・なんだか正面から集団が来ているように見えるんですけど・・・」
マイヤーと一緒に御者台にいるベイノンが聞いて来る。
「そうか・・・私の目の錯覚ではなかったか・・・」
マイヤーも気が付いていたようで考えながら言う。
「止めましょうか。」
「そうだな。
やり過ごす方が無難だろう。
おーい、後ろに止まるの合図をしてくれ!
集団をやり過ごす間休憩だ!」
マイヤーが後ろの荷台にいる嫁に声をかけてると幌馬車が減速を始めるのだった。
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「・・・あれ?ジーナ、またゆっくりになったね。」
「はい、スミス様。
速度を落としたという事は街道で幌馬車か馬車とすれ違うのでしょう。
ですが、街を出てから速さが一定になりませんね。
この間戻って来る時はこうではなかったのですが・・・特産品祭り関係でしょうか。」
「んー・・・向こうが行ってくれるまで一旦休憩しようかな?
こうまで早かったり遅かったりすると馬も疲れるだろうしね。
それに今日はそこまで急がなくても隣村には着くからね。」
「わかりました。
そう伝えます。」
とジーナが御者台への小窓を開けて指示を出すのだった。
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こっちはエルヴィス邸がある街。
「あぁ・・・昨日は食べ過ぎたかな?
ちょっと体が重いかな・・・まぁ絞れば良い問題か。
えーっと・・・紹介先との鍵の受け取りは終わっているよね。
アーリス殿の家の最終確認はこれで終了と・・・次はブレア殿ね。
奥様とお子様がいて・・・その次がオールストン殿か。」
ブルックがメモを見ながら歩いている。
「お、時間通りだな。」
ブルックが歩いている先にある建物の玄関に居たアーキンが声をかける。
「うん、アーキン達もね。
最終確認も順調ね。
アニータ、ミルコ取って来た?」
「はい!言われている人数分+2名分ですよね。」
「注文しておいたブレア殿とオールストン殿の食器を受け取ってきました。
これで最後ですよね。」
「うん。そうそう。これね。
こことその次で最後だからね。」
ブルックが頷く。
「じゃあ、手早く確認して行こうか。
部屋の確認終わったら城門だからね。」
「「はーい。」」
ブルック達が受け入れの確認をしているのだった。
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「スミス殿にジーナ殿でしたか。」
マイヤー達が止まっている所で兵士達も止まりお互いに「どうぞどうぞ」と譲りあったのだが、その際にスミスとジーナの移動と知り皆で休憩をしていた。
「はい、今日出立しないと入学式に間に合わないのです。
出迎えられなくてすみません。」
「いえいえ、滅相もない。
2人とも元気そうですね。
街は何事もなくですね?」
「はい、挙式と特産品祭りが無事に終了しました。
今日の午後にはゴドウィン伯爵様とテンプル伯爵ご夫妻方が出立する予定になっています。
マイヤー様も皆様も順調に来られたのですね。」
ジーナがスミスの横に立ちながら言ってくる。
「そう言えば数日前に夕霧殿とビエラ殿が挨拶に来ていました。
ビエラ殿が成獣姿で飛んでいましたね。」
「・・・ジーナ、そんな話あったかな?」
「いえ、聞いていませんね。
でもあの2人の行動ならご主人様は知っていそうです。」
「そうだね。
部屋の準備についても何も報告がないから不備はないだろうね。
と、では、マイヤー殿、僕達は王都に行ってきます。」
「はい、道中気を付けてください。
まぁこれだけの兵士が居れば何も無いでしょうけども。」
マイヤーが頷く。
「マイヤー様達ももうすぐ着きますがお気をつけて。
失礼いたします。」
「はい、わかっております。」
3人は軽く挨拶をして別れるのだった。
・・
・
「出立!」
90名の兵士と馬車が出立していくのをマイヤー達が見送っている。
「・・・旅立ちですね。」
「そうだな。」
ベイノンとマイヤーがボーっと見ている。
「ねぇ、貴方・・・今のはエルヴィス家の御子息様?」
マイヤーの妻が聞いて来る。
「あぁ、現状次期エルヴィス家当主が内定済み。
王立学院卒業と同時に当主になる事がほぼ確実だ。」
「はぁ~・・・若いのにもう当主かぁ。」
「お家事情とはそういう物なんだろう。
で?そういった事を聞きたいんじゃないんだろう?」
「うん、あの横に居たお嬢さんは?」
「ジーナ殿か?前に話しただろう。
キタミザト家直下の執事だな。」
「あれが・・・元貴族令嬢だったかしら・・・ただ者ではなさそうね。」
「わかるか?」
「何と言うか・・・雰囲気?
あそこまで堂々とした雰囲気を出せる者は王都でもそうそう見かけないわ。」
「ふむ・・・俺は買われた所から接しているからなぁ・・・
最初からあんな感じだったと思うがな。
ヴィクター殿とジーナ殿と所長が一緒にいると部屋の中がピリッとした雰囲気になっているぞ?」
「そんな場所には行きたくないわ。」
「本人達は気にもしていないがな。
むしろそういう物だと思っている節がある。」
「貴方・・・頑張ってね。」
「あぁ・・・なるようになるだろう。
よし!出立するぞ!」
「総員搭乗!」
マイヤー達も街を目指すのだった。
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