第1193話 さて、残った者達は。(5貴族の打ち合わせ。)
エルヴィス家の客間。
ジーナとスミスを見送った者達が集まっていた。
「では、始めようかの。」
エルヴィス爺さんがエリカに声をかける。
「はい、こちらが現在王都において考えられている第3皇子一家の異動に関する日程になります。」
「「「「・・・」」」」
エリカが4貴族に1冊ずつ冊子を渡す。
「んー・・・11月中旬以降かの・・・」
「はい、現状でアルマ殿下、レイラ殿下の出産が8月中から9月上旬予定となっています。
産後の様子を見てから最終判断をするとは思いますが、現状では11月中旬に移動を開始し、体に無理の無いようにゆっくりと進もうかと考えています。
キタミザト様は王都から第3皇子一家とその騎士団と共に移動をお願いします、私と文官と兵士は先行し受け入れ態勢を整えます。
殿下方の到着4日前までには3伯爵様も屋敷に来て頂き、殿下方をお待ちするという流れになると考えております。」
「ふむ・・・流れはわかったのじゃが・・・
各騎士団の数の規定がないという事は全部でなくて良いかの?
戦争ではないからの出来れば100名以下で・・・極力少なくしたいのじゃが。」
「はい、私共の街も今急ぎ整備していますが、生憎宿に限りがございますので各家で30から50名程でお願い出来ますでしょうか?
・・・正直な所、騎士団方相手の宿はこれから増やす算段でおります。
ですので割と正確な数値を言って頂けると余計な出費にならずありがたいです。」
「うむ、なら・・・わしは40名の2小隊にさせて貰うかの。」
「俺も構いません。
親父殿に合わせます。
俺らも40名で良いだろう?」
「私も構いません。
タケオさんは何人ですか?」
「試験小隊は20名の1小隊ですね。
今年の分は声をかけ終わっていますし、11月ぐらいなら来年の人達に声をかける時期ですね。
まぁウィリアム殿下達と旅をするのに合わせて王都でスカウトでもしますかね。
王都守備隊や第1騎士団に声をかけないといけませんね。」
「はぁ・・・王都の騎士達は能力や技量は高いが地方では扱いきれないと採用は敬遠されるのが普通なんだがな。」
ゴドウィン伯爵が呆れている。
「そうなのですか?」
「平均値が高すぎて地方の騎士団に入れても浮いてしまうんです。
王都と同じ訓練を騎士団にも出来たらと思いますけど、地方は地方でそれぞれに事情もありますからね。
騎士団も訓練ばかりしている訳ではなく見回り等々をしていますから専門的な事に特化している人達を入れるのは難しいんですよ。
それにエルヴィス伯爵領のように山が多い所もありますし、テンプル伯爵領のように海に面している所もある。
それに合わせて騎士団に求められる能力も違いますからね。
そこに王都守備隊や第1騎士団といったエリートが来られても・・・軋轢にしかなりませんよ。」
テンプル伯爵が苦笑している。
「・・・まぁ・・・わかります。
確かに王都のエリートと、地場のエリートの間にイザコザは付きものでしょうね。
そしてそれをまとめる貴族は辟易すると。」
「そうです。
だから地方貴族は王都のエリートの採用は難色を示すのです。」
テンプル伯爵が答える。
「・・・タケオさんはどうして王都守備隊を採ったの?」
グレンダが聞いてくる。
「・・・暇そうでしたし、ベテランなら経験があるのでいろいろ教えてくれるかなぁと。」
「いや・・・タケオさん、暇そうって・・・」
エラが呆れている。
「暇そうというのは冗談ですが、『そろそろ後輩に譲るか』という顔をしていたのは事実ですよ。
なので、『研究所で今までの経験を生かして武器の評価とかをしながら働きませんか?』と声をかけたら第一線から退く覚悟をして来てくれています。
今の所、1小隊しか居ませんし皆さんに脅威を与えるような戦力にはなり得ないんです。
それに私が自ら好んで最前線に立ちませんからね。
なので昇進や名声が欲しいような若手ではなく、戦力という点でも体力が低下し始めているベテラン勢を集めているんですよ。」
武雄は普通に嘘をつく。
マイヤーとアンダーセンは武雄が声をかけたが他の王都守備隊員はそもそも「異動可能」と言っていた隊員で選別したのはアンダーセンだ。
武雄はこの面子には別に本当の事を言う必要もないし、試験小隊が脅威でないと思わせないといけない。
ちなみに武雄の部下は皆が隊長、副官、次期班長が勢ぞろい。
それも各分隊(近衛、魔法、情報)から採ったので何の仕事を請け負ってもそれに適した知識を持った者がいる状態なのでやる気になれば結構な戦力なのだ。
「ふーん・・・ベテラン勢を揃えるのは陛下は許可をしているんですよね?」
「ええ、『王都守備隊と第1騎士団の再就職先によろしく』だそうです。
まぁベテラン勢なら戦術という新しい考えをするのに必要な知識は持っているはずですからね。
私に盾突かないで真面目に仕事を熟す人を探しただけです。」
「タケオさんに盾突く人かぁ・・・居ないんじゃないですかね?」
「そうですよ。
タケオさんを蔑ろにすれば王家やアリスが報復しそうですし。」
エラとグレンダが苦笑している。
「私へ恭順しないと王家と妻が文句をですか・・・
ですが、実際には王家はちょっと違うでしょうね。」
「そうですか?」
「ええ、王都で各王家にお会いしていますけど、私の部下の振る舞いに口を出すような人達ではないという印象でした。
私の部下に何か言いたいなら私を通す人達です。
それに部下が言う事を聞かないのは私の指導力がない事ですからね。
そこは頑張るしかないですよ。」
「そうかなぁ?」
「そうですよ。
それに私の許可なく私を飛び越して私の部下の意見を聞いたり指示したりしてはいけませんし、されたくはないのは王家、貴族関係なく誰しもがわかる事ですよ。
逆に言えば・・・何かあれば物凄く私が言われるという事ですね。」
武雄は「でもマイヤーさん達には陛下への報告をお願いしちゃっているんですけどね」と思っている。
要は「自分の知らない所で報告をするな」という所で内容を吟味する気にはなっていないのだった。
「・・・そうか、これは失礼な事を言ったかな?」
「いえ、特に失礼ではありませんが、私に取っては部下は部下ですし、上司は上司ですよ。
私の部下達もその辺は重々承知しています。
あの人達は最高峰の兵士です。
仕事は真面目にしてくれると信じていますよ。」
「そうかぁ。
王都に対して介入してくるという偏見が知らず知らずのうちにあったのかな?
王都の兵士や文官を入れるとなーんか怪しいんだよね。」
「そうですね。
タケオさんの部下も王都からタケオさんとエルヴィス伯爵の監視として派遣されているのかと思いました。」
エラとグレンダが話しているのだった。
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