第1188話 特産品祭り。7(終盤戦。)
開始2時間半が経過。
エルヴィス家の屋台にて。
「・・・終わったね・・・」
「凄かった・・・これがキタミザト家とエルヴィス家の・・・いや貴族が出す店なんだね・・・
本当に凄かった・・・両貴族が慕われているってわかったよ。」
「確かに・・・国元の町で女王様とか騎士団長とかが屋台に立てばこうなるのかなぁ。
疲れたぁ~・・・」
エンマとフローラが後ろの机で突っ伏していた。
エルヴィス家の屋台は30分を残して完売。
今は武雄とアリスが列に並んだ人たちと一言挨拶をしていた。
皆も「もうないのは残念でしたが、行列でしたものね」「早く来ればよかったです」「挨拶出来るだけでも満足です」等々、品切れについては問題になっていなかった。
「はぁ・・・えーっと・・・これが西町の塩漬けなんだね・・・美味しいなぁ・・・」
「こっちのもピリッとしているけど後引くよ。」
エンマとフローラは西町と北町の塩漬けを食べながら武雄とアリスが挨拶を終えるのを待っていた。
料理人はというと油の後始末や食器具、残りの食材の片付け、残飯の処理等々撤退の用意をしているのだった。
・・
・
「はぁ・・・結局休憩なしでしたね。」
「ケアはしていますけど、精神的に疲れましたね。」
武雄とアリスが机に突っ伏していた。
「タケオ、アリス様、食べられるか?」
料理長が聞いてくる。
2人の回りから机一杯に今回の特産品祭りの各屋台の品々が並んでいた。
料理人達が冷めた料理を温め直して出していた。
「ん・・・食べますよ。」
「私も食べます。」
2人が起き上がる。
と、いろいろな単品料理が並んでいた。
「ん~・・・肉料理というより焼き肉が多いですね。」
「まぁそれは致し方ないだろう。
屋台の大きさもあるし、材料を置いておくにも空きスペースがないからな手の込んだ物は出来ないぞ。」
「そうですね。
では、軽く温め直して頂きましたし、軽く打ち上げしますか。
おかげさまで完売しました。今日はお疲れ様です。頂きましょう!」
「「お疲れ様です!頂きます!」」
皆が思い思いに料理を手に取り始める。
・・
・
「おー、タケオ、トニクがあるな。」
料理長が言ってくる。
「トニク?・・・何ですかそれは。」
「エイクスという魔物の肉だな。
この辺ではあまり獲れないんだ。
ゴドウィン伯爵領が一番獲れるな。」
「へぇ~・・・赤身なのですね?」
武雄はじーっと肉を見ながら言う。
「あぁ脂身が少ない肉になる。肉々しい肉だな。
で、傷みも早くて日持ちもしないんだ。」
「そうですか。
あ、本当だ。うん・・・肉を食べているって感じですね。
若干臭みがありますかね?」
「あぁ。だから普通は焼くならオークや鶏肉が一般的で他の肉は煮る事が多いか。
屋台でトニクとは・・・値が張るだろうが、店の評判は上がりそうだな。」
「そうですね。
珍しい肉が出るならまた食べに行きたいという人が居るかもしれませんからね。」
武雄が頷く。
とエンマとフローラがチラチラッと武雄を見ているのを武雄が気が付く。
「ん?・・・2人ともどうしましたか?」
「い・・いえ!なんでも!」
「ええ!なんでもありません!
あ!キタミザト様!そっちの野菜炒めを取って頂いて良いですか?」
「あ!私も食べたかったのー!」
「ええ、構いませんよ。」
武雄が野菜炒めの皿を取ってエンマに渡す。
「そうだ、タケオ、ハチミツのレモン水やマヨネーズなんだがな。
あれを喫茶店で売ってみたいんだが」
「へぇ~・・・良いんじゃないですか?」
「売るのを躊躇って・・・良いのか?」
料理長が驚く。
「え?・・・ええ、構いませんが。
街中へのレシピの公表はエルヴィスさん達に任せていますけど、製品を売ってはいけないとは言われていませんからね。
喫茶店の専用の印でも作って売りましょうか。
でも、片手間で作るのでしょうからそこまで大規模には出来ないでしょうね。」
「でもタケオ様、マヨネーズは絶対に評判になって、小瓶で売るにしても日に何百個も売れるかもしれませんよ?」
「え・・・そうかぁ・・・そうなると卵の仕入れ数が問題になるんですよね・・・
となるとマヨネーズを1樽作るのにかかる費用と労力の確認をして、それで何個出来るか考えないといけないですね。
売るにしても本業の料理に支障があってはいけませんからね。
料理長、喫茶店で出すとなると経費等々はエルヴィス家持ちにした方が良いでしょうが、まずは販売出来るようにフレデリックさん達に説明をしないといけませんね。」
「やはりそうなるな。
だが、タケオが良いというなら実現は容易いかもしれないな。」
「そうですかね・・・
喫茶店の準備もありますし、小瓶の大きさや価格の設定、卵確保に向けての下準備とマヨネーズ作りと瓶詰の作業時間の確保・・・大丈夫なのですかね?」
「んー・・・それを言われると調整が大変そうだな。
まぁそれも含めて企画案を出すさ。」
「ええ、そうしてください。」
武雄が頷く。
「あ、これは南町のパスタですか?
綺麗な色をしていますね。」
「こんなに色が出る物なんだな。」
「味は・・・色の元になった野菜の味は薄いか?」
「どれどれ・・・でもしますよ?
これぐらいの方が良いのではないですか?」
「んー・・・これは研究の価値がありそうだな。」
「こっちは東町の魚ですか。
・・・酸っぱい匂いがしますね。」
「ビネガー漬けらしいぞ。」
「面白い物を作りますね。」
タケオは各屋台の評価をしながら料理を摘まむのだった。
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