第1183話 特産品祭り。2(始まるよ。)
武雄はエルヴィス家の屋台に帰って来た。
「あ、帰ってきましたね。
タケオ様、お疲れ様です。」
エプロン姿のアリスが笑いながら労ってくる。
「ええ、ええ、どこが笑えました?」
「最後の掛け声はどうしたのですか?」
「台本通りですが?」
「え・・・あれは文官達が考えたのですか?」
「そうですよ。
参加している人達にも教えていたようで皆淀みなく手を挙げていたでしょう?」
「確かに・・・遅れもなく皆が一斉に言っていましたが。
あれ次回もするんですかね?」
「次回は進行役は辞退しましょうか。
正直恥ずかしかったです。」
「あのタケオ様が最後顔を赤らめていましたからね。
これは良い物を見れました。」
「良く見ていますね。」
「すぐ横ですもの。」
「さてと・・・用意は・・・」
「タケオ!揚げ続けるからな!」
料理長がそう言ってくる横で料理人達が一心不乱にミノムシを揚げている。
「ははは・・・頑張ってください。」
「えーっと・・・この紙の小袋に3個ずつ入れるのですよね。
そしてマヨネーズをかけてあげると。」
アリスが確認し始める。
「ケアは平気ですか?」
「はい、問題はありません。
エンマとフローラはジーナちゃんに連れられて買い物に行っていますよ。」
「うんうん、それで良いでしょう。
さてと・・・どれだけ来ますかね。」
「ドキドキですね。」
武雄とアリスが屋台でその時を待っているのだった。
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こっちはジーナ組。
「・・・」
「・・・ジーナ様、私達も同行して良いのですか?」
「ねぇ?・・・流石に他の方々と一緒というのは・・・」
ジーナ達は出だしからエルヴィス爺さん達に捕まっていた。
「ふふふ、ジーナ、エンマ、フローラ、気にする事はないのじゃ。
どうせ全ての店を回るのじゃろう?」
「そうですよ。皆で回りましょう。」
エルヴィス爺さんとスミスが頷いている。
「ははは、ジーナもタイミングが悪かったですね。」
「いえ、フレデリック様、問題はありません・・・ありませんが・・・」
ジーナがチラッと横を見る。
「うん?ジーナどうした?」
ゴドウィン伯爵がジーナの目線に気が付き聞いて来る。
まだ出だし数軒なのにゴドウィン伯爵が護衛の兵士にわんさか持たせていた。
「いえ・・・まだ始まったばかりなのですけど。
持つのですか?」
「なーに問題はない!
一気に買って食べ比べを皆でするつもりだ!」
「伯爵様が良いのであれば良いのですけど・・・
あ、すみません3つください。」
「お!俺には5個で頼む!」
「あ、僕は1個でお爺さまとフレデリックと少しずつ食べますから。」
「へい!お待ちください!」
まとめ買いの一団と化している。
「へぇ~・・・
肉の炙り焼き・・・ふむふむ。
こっちの屋台は塩であっちはウスターソース?・・・こっちは秘伝のタレ・・・何この魅力的な文言は・・・
どれも美味しそう♪」
グレンダが配置図を見ながら考えている。
「私達そんなに食べれないんだから限定しないといけないわよ。」
エラが呆れながら言ってくる。
「2人とも少しずつ食べれば良いんじゃないのか?
うちの護衛も一緒に回ってくれているし、多少多く買っても問題ないよ?」
「だよねーだよねー。」
「ウスターソースの使い方の勉強会かしら。
あ、この屋台は他が肉が中心なのに野菜炒めですって。」
「あー匂いが良い!
どれも美味しそう!」
「グレンダは何でも買いそうだね。
ゴドウィン伯爵の真似をしそうだよ。」
「あ・・・早く私の欲しい物を決めなきゃ!
このままだとグレンダが食べたい物ばかりになる。」
「ほら、早くしないと次の屋台に行くみたいだよ。」
「ちょっと・・・待って・・・えーっと・・・野菜炒めは絶対に欲しいし・・・あ・・・これ美味しそう。」
エラが慎重に自分の食べたい物を選ぶのだった。
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会場前。
最前列は子供達が一丸になっている。
「あぁぁぁ・・・美味しい匂いがする。」
「お腹空いたね。」
「えーっと・・・お父さんに貰った会場図はっと・・・」
ヒルダがポケットから会場図を出す。
「えーっと・・・皆は何を食べるの?」
「肉巡りかなぁ。
とりあえず肉は全部食べたい!
載ってる?」
子供達がヒルダの手元を覗き込む。
「あ・・・野菜炒めだって!前に作っていたやつかな?」
「秘伝のタレって何だろうね?」
「あ・・・こっちのお肉はウスターソースだって!」
「あれ?この店ってお父さん達が良く行く店だよね?」
子供の1人が指を指す。
「子供は入れない店だよ。
『大人になったらね』って言われた。」
「今日は買って良いんだろうね。」
「おし!ここは最初に行こうか。」
「ヒルダは最初はどこに行く?」
「私はエルヴィス家の所かな。
絶対に混むからあとからだといけないと思うよ。」
「なるほど・・・ならエルヴィス家に行ってすぐに大人の店に行こう!」
「そうだねー!」
「他の町の方はどうする?」
「野菜と魚でしょう?
肉優先!」
「だねー♪」
子供達は大人の思惑に囚われないのだった。
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