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第1177話 武雄とアリス。(武雄の考察。)

2人が書斎から去って。

「・・・」

武雄は再び広場の会場図を見ながら思案している。

「タケオ様、気になる事があるのですか?」

「・・・ええ・・・まぁ・・・」

武雄がそう言いながら考えている。

「重要な事ですか?」

「重要・・・重要ではないんですけどね。

 気になるのですよね・・・」

「何がですか?」

アリスが武雄の手元を覗くがわからないようだ。

「いえ・・・所々、隣もしくは2つ隣に似たような料理が出店しているんですよね。」

「24店ですから片方に12店・・・被ってもしょうがないのではないですか?」

「んー・・・そう言われるとそうなんですけどね・・・それにこの配置自体がなぁ・・・

 アリス、動線という考えを知っていますか?」

「ドウセン・・・ですか?」

「動線計画とか計画動線とか・・・いろいろ言われるんですけどね。

 早く言うと人や物の行動や移動パターンを予測し、地図に通ると思われる所に線を書き足していって渋滞したりぶつかったりしないよう事前計画をする事を言うのです。」

「ほぉ・・・なるほど。

 という事は、タケオ様はこの配置では人が危険だという事ですね?」

「私的な考えですけどね。

 追従行動をしたいという欲求を無意識的に人は持っていると私は思っています。」

「追従行動?」

「前に歩いている人と歩調を合わせるとか道の端に沿って歩いている人の後ろではほぼ同じ位置を通るとかですね。」

「・・・あぁ、なるほど、確かにありますね。」

アリスが想像しながら言う。

「となるとこういった一つの通りの両脇に屋台を置こうとすると・・・

 まぁ・・・こうやって片側を見ながら奥に行って、反対側を見ながら手前に来るという流れになります。」

武雄がそこら辺にあった紙にペンで通りをかいて長いUターンの線を書く。

「・・・そうなるでしょうね。

 でも、タケオ様、ここって表通りの7m程度の道路ですよ?」

「んー・・・そこがわからないんですよね。

 屋台の奥行ってどのくらいを見ているんですかね?」

「・・・わかりませんね。」

「1mの奥行として歩行者用では5mを使えるとしましょうか。

 で、奥に行く人達と戻って来る人達が2mずつ使うとして・・・」

「2mずつ?」

「カップルなら並んで歩きたいでしょう?」

「まぁ・・・そうですね。」

「店の前には50㎝ずつしかない・・・『多くの人が来ても大丈夫なの?』という心配です。」

「んん~・・・タケオ様に言われると不安がよぎりますね。

 で、さっきの隣に同じ店があるというのはなんですか?」

「あ~・・・あれは『いざこざにならないかなぁ?』という事ですね。

 アリスにも今言いましたけど、私の考えだと人々の流れは一方通行です。

 となると・・・手前の屋台と奥の屋台どちらが買われると思いますか?」

「・・・んー・・・奥?」

「正解は・・・まぁ実際には正解なんてないんですけど・・・

 私は人が並んでいる方が多く買われると思っています。」

「・・・つまり?」

「バンドワゴン効果という物の解釈を使うんですけどね。

 人というのは1人より2人。3人よりも4人が美味しいと口を揃えて言うのならそれは美味しい物なのだと思い込みやすいという考えなんです。

 つまり行列が出来ているのは『美味しい物が売っているという証拠』だと思うという事ですね。

 スイーツ店とかでもそうでしょう?」

「ふむ・・・確かにがらんとしている店よりも人が入っている店の方が気になります。

 となると・・・一方は買われ続けて一方は買われない事がある可能性があるのですね?」

「一概には言えませんけどね。

 それに・・・流れの最初の方にあるか、終わりの方にあるかでも変わると思いますしね・・・」

「そうなのでしょうか?」

「ええ・・・動線の話ではないですが、流れの最初の方は『まだ似たような店がある』として買い控え、屋台の出口が見えた時は『またこの列に並ぶのは嫌だから』と味や値段を気にせず買う傾向が見られるんですよね。」

「・・・なるほど。タケオ様ならどうしますか?」

アリスが頷きながら聞いてくる。

「そうですね~・・・手前の広場と奥の次の区画の横通りを封鎖しての2箇所を広場にしてテーブルや椅子を配置します。

 通りの屋台は片側のみ配置して残りの屋台は奥の広場に配置すれば、通りの混雑は避けられそうではありますよね。

でも、結局はこの広場と通りだけ用意がされたという事は・・・今回はそれしか用意出来なかったのですから他にやりようはなかったのかもしれませんね。」

「ん~・・・配置ですか・・・」

「まぁ、1回目ですからね。

 今回、色々と経験出来れば次回開催する時に参考になるでしょう。

 今から異議を唱えても混乱するだけですよ。

 今回はこれで行く・・・それで良いのかもしれません。」

「確かまとめているのは若手の文官でしたよね。

 良い経験になれば良いのですが。」

「失敗も経験ですよ。

 さて・・・お昼寝をしますか。」

「そうですね。

 お昼寝しないと♪」

「じゃあアリスは着替えましょう。

 私は一服して戻ります。」

「は~い。先に戻ります。」

アリスが寝室へと続く扉に向かう。

・・

「ふぅ・・・」

武雄はキセルを吹かしながらもう一度、広場の会場図を見る。

「・・・フレデリックさん、若手に随分とキツイ試練を経験させますね。」

武雄はそう呟くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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