第1168話 立食会。4(一番の被が・・・協力者。)
「ははは、キタミザト様、やっとでございますね。」
「ええ、やっと手を繋いで歩けます。
それにしても仕立て屋組合には助けて貰ってばかりですね。
私の第1弾がラルフ殿の所から始まったのですから。」
「何を仰いますか、我らこそ声をかけて頂いてありがたく思っております。
王都にウィリアム殿下領、そしてゴドウィン伯爵領に卸せる日が来るとは思ってもいませんでした。
それに工場の設立・・・今年も忙しくなりそうです。」
仕立て屋組合の組合長とラルフが武雄と話している。
「冬に向けてのダウンジャケットとダウンベストですね。」
「はい、それとこのダウンジャケットとダウンベストなのですが、一括でうちが生産しますが、販売は領内全域でしようと思っています。
今、領内の仕立て屋達に話を振っている最中で最低でも各町に1軒は欲しい所です。」
ラルフが言ってくる。
「ほぉ・・・なるほど・・・
確かにそれの方が売りやすいですね。」
「組合としても今年は挑戦の年になると考えています。」
「あとはどれだけ自由度を上げるべきなのかですね。」
「はい、王都へのトレンチコートのようにお客様の任意で違いが出せるように何か用意しようかと思っています。
今は名前を入れるかを考えていますが・・・キタミザト様、他に考えはありますでしょうか。」
「そうですね・・・あ、ワッペンなんてどうですか?」
「「ワッペン?」」
「ええ、簡単に言えば研究所の制服の襟章のような物です。
これの色、形、絵柄を変えて販売すれば良いのではないでしょうか。
人は他人とどこかしら違いを出そうという心理が働きますからね。
そこを逆手に取りましょう。」
「なるほど・・・となると職業別、性別、作る意図によって欲しい絵柄が変わりますね。
貴族や国の物にはした事がありますが、それを個人向けにするのですか。」
「想定しているのはキタミザト様と話した時の店外や農作業、林業等の外で働く方々でしたが・・・
数十は考えないといけないと思いますね。」
流石に2人ともやり手の店長、すぐさま脳内でどうあるべきかを考え始める。
「ええ、肩、腕、胸、腹・・・付ける箇所も多種多様で良いではないですか。
あとはサービスとして1個までなら無料とすれば皆さん喜んでくれますよ。」
「「!?」」
組合長とラルフが驚く「作業を無料化」は基本的にしない事が常識だった。
「む・・・無料ですか。」
「ええ、1個までなら・・・例えば無料にするサイズは小さくしてその場で出来るようにしてあげれば喜んでもらえますよ。」
「「その場で!?」」
「となると・・・作業の簡単なものかぁ・・・
そうですね・・・沸騰したお湯を入れた薄手の鍋を押し付ければ張り付くような糊を使って、店先で貼り付けてから補強の為に上下を軽く縫えば早く済みますかね。」
「「糊!?」」
「まぁ・・・とりあえずそんな所ですが、どう出来るかは試行錯誤すれば良いのでしょうね。」
「け・・・検討いたします。」
「じ・・・実現できるようにいたします。」
2人が声を絞り出す。
「はい、お願いしますね。
・・・あ、ラルフ店長、夏用に『ステテコ』作って欲しいので後日店に行きますね。」
「はい!?
ステテコとは!?」
「夏用のズボンの下に履くインナーですよ。
それはまた行った時に説明しますから。」
「はい・・・わかりました。」
ラルフが茫然となりながら頷く。
「では。」
武雄がにこやかに次の人の所に行く。
「ら・・・ラルフ・・・」
「はぁ・・・立食会が終わり次第、組合員を緊急招集します。
各店の職人も数名同行でよろしいですね?」
「あぁ・・・頼む・・・
ラルフも増々大変そうな年になるな。」
「今、私が倒れる訳にはいきませんが・・・倒れたらよろしくお願いします。」
「お前の代わりは居ない。
良く寝て疲れを取ってくれ。」
「それしかありませんね・・・」
2人のお祝い気分が一変するのだった。
ラルフ達の隣にいたサテラ製作所の長、キャロルは・・・
キャロルは武雄をマジマジと見ている。
「キャロル殿・・・どうしましたか?」
アリスが声をかける。
「アリス様、本日はお招きありがとうございます。
・・・ラルフ殿やモニカ達がキタミザト様と話した後に・・・あのような顔を。」
「キャロル殿・・・毎度の事です。」
アリスが悟った目をして言ってくる。
「毎度・・・あれが・・・毎度・・・」
「ええ・・・サテラ製作所はタケオ様から何か請け負ってはいないのですか?」
「キタミザト様とスズネ様からミシンの製造と改造依頼を頂いています。
あとはチャックの試作と見積もり依頼があります。」
「・・・タケオ様が2つだけ?
・・・そうですか・・・サテラ製作所は今後の盾の製作の要でしたね。」
「はい、それまでのつなぎの仕事と思っています。」
「つなぎなどと言わずに増々の発展をされる事と思われます。
これからもキタミザト家をよろしくお願いします。」
「はい、謹んでお受けいたします。」
とアリスは話しているが「タケオ様がその程度の依頼しかしないということは・・・これからということですか」と納得しているのだった。
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