第1164話 立食会のちょっと前。(準備は大変だ。)
再びエルヴィス邸・・・の武雄達の寝室。
「はぁ・・・意外と疲れましたね。」
武雄が部屋の窓を開けて風に当たりながら体を癒している。
「タケオ様、これからもっとですよ。」
「・・・折り返しですよね?」
「ええ、行程的には・・・ですが、挨拶回りは気苦労が凄いですからね。」
アリスはメイドに化粧をし直して貰っている。
「一番気を付ける事は何でしょうか?」
「そうですね・・・
タケオ様は新参者という事は皆が知っています。
一部の組合はタケオ様の指針を受けて動いていますので問題は無いでしょう。
ですが、他のほとんどの組合はタケオ様を見た事すらない者もいると考えるのが普通です。
エルヴィス家の武官や文官からの間接的な話のみです。
その中に襲撃の撃退もあるでしょうが・・・話は話と高を括っている者がいてもおかしくありません。」
「という事は・・・顔を知らない者達に顔を売るというのが本来の目的ですね。」
「ええ。
ですが、今協力いただいている組合もしっかりと話をしないといけないというのもあります。
彼らからすれば自分達がタケオ様の下支えをしていると自負しています。
今後の協力の強化の為に仲が良い事を示したいというのはあるでしょうね。」
「・・・凄く面倒そうです。」
武雄がゲンナリとしている。
「初対面の組合はお爺さまを連れて行くと良いと思います。」
「あ!なるほど。」
「あとご婦人を帯同されていらっしゃったら指輪やネックレスを褒めるのが一般的です。
相手の身体的な事に触れてはいけませんよ。」
「・・・そうですね・・・
となるとアリスに最初会った時にしたのはマナー違反ですね。」
「そういえばそんな事もありましたね・・・懐かしいですね。
・・・ん?・・・タケオ様、今何と言いましたか?」
アリスが武雄の方を振り向こうとする。
「アリス様!顔を動かさない!」
「はい・・・」
アリスがメイドに怒られる。
「あの時はすみませんでした。
オッドアイが綺麗でしたのでね。」
「ふふふ♪
いきなり褒められましたよね。
あまり・・・いえ、私は目で褒められた事はありませんから驚きました。」
「もったいない。
こんなに綺麗なんですけどね。」
「えへへ♪
また褒められました。」
「アリス様!」
「ごめんなさい!」
アリスが再び怒られる。
「さてと・・・私は扉前に行っています。」
武雄がアリスの前を通って退出しようとする。
「はい、わかりました。
あ、タケオ様。」
「なんですか?アリス。」
武雄が何気に顔を向ける。
アリスは違和感の正体がわかる。
「えへへ♪いえ・・・すぐに行きます。」
アリスはにっこにこで武雄を送り出すのだった。
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ジーナは広間の扉前で進行表の上に懐中時計を置き、行程の確認をしていた。
「ん~・・・若干、遅れ気味ですかね・・・」
「ジーナ、料理の最終出来上がり時間が来ましたよ。」
メイドが厨房から紙を持って来る。
「ありがとうございます。
・・・最後のスイーツが遅れそうなのですか。」
「正確には2つ前のメインの肉料理等の配膳時間が長くなっている感じはするわね。
各料理の製作時間はいつも通りの感じよ。」
「配膳時間・・・並べてから食して貰うまでの時間を多めにとっているのですね。
ローストビーフ・・・ですか。」
「ええ。キタミザト様が戻ってからいろいろ出ているけど、このローストビーフは事前に切っておけて冷めても美味しさが変わらないから立食では重宝するわ。
味も何種類かのソースで変わるしね。じゃあ私は厨房に戻ります。
ジーナ、これジーナの分よ。」
とメイドがジーナにキャラメルを渡してくる。
「ありがとうございます。」
「私は次は配膳用意ね。」
メイドが去って行く。
ジーナは周りを見て人が居ない事を確認してキャラメルを口に運ぶ。
「んん~♪甘さが染みわたります♪
疲れた時の甘い物は格別です。」
ジーナが小さな幸せを噛みしめている。
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夕霧達はというと・・・エルダームーンスライム皆で厨房の一角に陣取っていた。
「夕霧殿!すみません。
処理をお願いします。」
「ん、これは終わりました。」
「はい!ありがとうございました。」
「あ、夕霧殿、こちらもお願いします。」
「ん、おいて行ってください。すぐに片付けます。」
「はい!ありがとうございます。
空いている食器は回収します。」
料理人が次から次に残飯を持って来ていた。
「ユウギリ、ここが今日の仕事?食べてばかり。」
「ユウギリ、こういうの良いっスね。」
「次から次と栄養価の高い物が・・・これが美味しいという感覚なのですか。至福ですね。」
「これもタケオのおかげですね。」
「王都に行ってしまうとこういった事はなかなかないのでしょうね。」
「そこはジーナに依頼するしかないでしょう。」
「ん、ハマカゼ、イソカゼ、ジーナに迷惑をかけてはいけない。
私達の事は出来るだけ他の者には知らせてはいけない。
だからと言って、皆に見せないように秘密にするとボロが出ます。
なら堂々と皆に見せながら核心は見せない事の方が秘密という物は守られるのです。
なので、ジーナには出来る範囲でイソカゼの食料を確保して貰うしかない。」
「「はい!わかりました。」」
夕霧が狼スライム2体を戒める。
「あ、夕霧殿、追加です。」
「ん、どんどん持って来て構いません。」
今日は夕霧達にとってもパーティーなのだった。
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