第1153話 改めてキタミザト家の人員は異常。(そんな事言われましても。)
村の入り口。
「では皆様、エルヴィス伯爵の屋敷でお待ちしております。」
「あ~♪」
夕霧とビエラが皆に頭を下げて街道を横切って森の中に入って行く。
「・・・お母さん、あれは良いのですか?」
子供が横に居る女性にコソッと言ってくる。
「気にしてはいけませんよ。
お父さん達が何も言わないのですから言ってはいけません。」
だが、本人の目にも「街道を横切って森の中って」と疑っていたりする。
・・
・
森の奥からホワイトドラゴンが飛び去って行くのだった。
「お・・・お父さん!!
ド・・・ドラ・・・ドラゴン!」
子供が指を指している。
他の子供や奥様連中は固まっている。
「あぁ・・・そうだな。
マイヤー殿、ビエラ殿はホワイトドラゴンだったのですね。」
「成獣では初めてだったな。
たぶん・・・ヴィクター殿が皆の前では変身するなと言っていたのだろう。」
マイヤーが諦めている。
「・・・早いですが・・・夕食にしますか。」
「そうだな。
この後の質問攻めがわかっているのが辛い所だ。」
「ええ・・・」
皆が宿に戻っていく。
・・
・
マイヤーの部屋で父母会が開催され子供達を部屋に残して各夫婦が食卓を囲んでいる。
「で・・・貴方、どういうこと?」
マイヤーの妻が言ってくる。
他の妻連中も頷いていたり真剣な眼差しを向けて来る。
「どう・・・か。
見ての通りだ。」
「全っ然わからない!」
「だろうな・・・ベイノン。」
マイヤーが説明を部下に振る。
「総監殿・・・こっちに振らないでください。」
「お前が適任だろう。」
マイヤーがすまし顔で言ってくる。
「はぁ・・・情報分隊だったことがこう来るとは・・・
そもそもキタミザト家は公にしているのに知られていない事が多い家ですけどね。
まず所長のキタミザト卿は呑気で才気がある方です。
奥様は言うも更なりですが、さらにコノハ殿とスー殿の2精霊の加護を擁しています。
直下の執事はヴィクターとジーナという元魔王国の伯爵と伯爵令嬢で獣人。
直属の夕霧殿は希少なエルダームーンスライムという知られていないとはいえ伝説級のスライム。
そしてビエラ殿は齢600歳を超えるドラゴンでありその子のクゥ殿が在籍。
妖精のミア殿に精霊のパナ殿が付き従っています。
ミア殿に関してはエルヴィス領内で魔物の統括をするみたいですね。」
「・・・どこの精鋭部隊よ・・・」
奥方の1人がガックリとする。
「で、研究所の人員は王都守備隊から8名、エルフ2名、魔法師専門学院の卒業生が2名。
トレーシー元魔法師専門学院の学院長と他2名。
あとは向こうで何かしているでしょうが、街での協力者が若干名でしょうね。
私が知るのはその程度です。」
ベイノンが言う。
「「・・・」」
奥方連中は何も言えない。
「まぁ・・・むしろ我々以外の人員は非戦闘要員という括りなんですよね。」
「だな。
ビエラ殿とクゥ殿は客将程度ですかね。」
「今のキタミザト家に喧嘩を売る者はいないだろうな。」
「命知らずというより、自殺願望者でしょうか。
『灰燼に帰す』を本当に出来てしまう人員ですしね。」
「・・・私達はどうすれば良いの?」
「何もする事はないし、普通に暮らせば良いと思うが。
・・・何かしたいのか?」
「いえ・・・注意する事があればと・・・」
「正直な話、俺達ではわからないな。
向こうに行った事あるのはマイヤー殿だけですね。」
「俺も数回だし、警護の仕事でだからなぁ・・・
まぁ街中はのんびりしている・・・と思う。
街は至って普通の地方都市だ。
所長が手を加えているから今はどうなっているかは知らないが、そこまでは変わっていないだろう。」
「何だか緊張してくるわね。」
「とりあえず行ってみないとわからないという事はわかりました。」
その場の面々がため息交じりに思いを馳せるのだった。
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試験小隊の訓練場。
「きゅ♪」
「あ、帰ってきましたね。」
ミルコに抱えられているクゥが指した方向にドラゴンが飛んでいる。
とドラゴン(ビエラ)が優雅に着地する。
「おかえりなさい、ビエラ殿。」
ブルックが近寄り首を撫でる。
「・・・」
コクコクとドラゴン(ビエラ)が頷く。
とパカッと口を開ける。
「ん、戻りました。」
口の中からビエラの唾液でぐっしょりした夕霧が出て来る。
「・・・酷い恰好ですね。」
「ん、洋服が汚れました。
これはフレデリックにお願いして洗濯して貰いましょう。」
夕霧が自分の状態を見回しながら言ってくる。
とビエラが獣人の姿に変身する。
「あ~♪」
「ビエラ殿、お疲れ様です。」
「アーキン、戻った!
ご飯食べる。」
ビエラがお腹を押さえて言ってくる。
「まだ間に合いますね。
ですが・・・夕霧殿が・・・」
「ん、すぐに着替えます。」
と夕霧が小屋に向かって行く。
「マイヤー殿達は元気でしたか?」
「マイヤーと・・・ベイノン達、元気だった。
子供・・・多かった!」
「なるほど、特に病気もしていないようね。
まぁあの人員なら病気や怪我もするわけないか。」
「そうだな。
と、アニータとミルコは明日の用意は出来ているのか?」
「「はい!」」
「明日は1日立ちっぱなしの予定だからね。
制服で参加だから折り目もしっかりとしている物にしないとなぁ・・・
あとで確認かな?」
「「うぇ・・・」」
アニータとミルコが嫌な顔をする。
「2人ともそこはしょうがないだろう。
明日は所長達の挙式だ。
部下がヨレヨレの制服では他の方々に馬鹿にされてしまうからな。」
「「は~い。」」
2人が渋々返事をしてくる。
「ん、お待たせ。」
夕霧が着替えてやって来る。
片手にはぐっしょりとした衣服が・・・
「城門で何か入れられる物を借りましょう。」
「ブルック・・・お腹空いた。」
ビエラが悲しそうな顔をしている。
「ええ、では行きましょうか。」
皆で移動し始めるのだった。
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