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第1152話 夕飯の支度。(いつの間にか出汁のレパートリーが増えている。)

エルヴィス家の厨房。

「明日は本番なのに・・・良いのか?タケオ。」

料理長が隣にいる武雄に言ってくる。

「テンプル伯爵家から良い物が届いたと聞きましてね。」

「いや・・・それはそうだが・・・

 で・・・この白身の魚が魚醤を使った煮つけというやつだな。

 こっちの紅魚がパスタ行き、こっちの小さい魚達がすり身にしてのつみれという物だったな。

 準備は・・・問題なさそうだ。

 はぁ・・・それにしてもこれを王都でか。王城の料理人は驚いていたろう?」

「ええ。『何でこんな事に気が付かなかったんだぁ』と騒いでいましたよ。」

「あぁ・・・その気持ちはわかるな。

 魚醤を使っての煮つけか・・・タケオ、砂糖を少し入れるのか?」

料理長がメガネをかけて武雄が書いたレシピを見ながら言う。

「ええ・・・ん?・・・そういえば堅魚がありましたか・・・」

「ああ。スープに使うか?

 一応、シイタケの戻しを始めているが間に合うぞ?

 前回の残りを使い尽くしそうだがな。」

「ん~・・・」

武雄は迷う。堅魚節の使い道『スープ』か『煮つけの隠し味』か。

捨てがたい・・・どちらも捨てがたい。

だが、今後の事を考えるとシイタケを全面に出しておき、堅魚節はあくまでエルヴィス家とキタミザト家での楽しみにした方が良いのかもしれない。

シイタケは今後の研究課題だから量産の見込みはある。

しかし、堅魚節は輸入品。

普及させるにはいささか量が心許ない。

他地域というならカニも海老も・・・下手したら小魚の干物でさえ入手困難になりかねない。

安定供給は・・・シイタケを成功させるしかないのか・・・

出来る出来ないは別としてキノコの栽培場はやはり領内の食料事情が良くなる機会にはなるだろうし、他領に出荷できるようになれば需要が増えて取り組んでくれる方々も増えて行くだろうし・・・

「・・・いや、シイタケの出汁のみにしましょう。

 堅魚は次回の輸入まで時間もかかるでしょうからね。

 我々だけで楽しむべきです。」

「そうだな。

 さて・・・試作が出来るまではタケオ、明後日の事なんだがな?」

「特産品祭りですね。」

「あぁ。アリスお嬢様の感想を元に鶏肉に細切りしたジャガイモをまとわせ揚げる『ミノムシ』という物を作ったんだ。

 これを出すのだろう?」

「ええ。

 確かに特産品祭り用に『鶏とポテトのミノムシ揚げ』を考えましたね。」

「それがな・・・アリスお嬢様が納得しないんだ。」

「・・・鶏の胸肉を一口サイズにして細長く切ったジャガイモを付けて揚げるのですけど。」

「最初はモモ肉だったんだが、脂っこいとの事で胸肉にしたんだが、アリスお嬢様は『何かが違う』と言うんだ。

 あ、ちなみに鶏肉はもう頼んであるからな。

 総監部にも許可を得ている。」

「そうですか。

 手配ありがとうございます。

 ・・・味が違うのですかね・・・」

武雄が考える。

「タケオ、一回作ってくれ。」

「ええ。

 とりあえず片隅で作りますか。」

武雄が片隅で料理を始めるのだった。


------------------------

マイヤー達はエルヴィス領最西端の村にもうすぐの所に来ていた。

「マイヤー殿、何もありませんでしたね。」

御者台のアーリスが隣にいるマイヤーに言ってくる。

「まったくだな。

 オークぐらいは出るかと思ったが・・・」

「ええ。昨日は野宿でしたが・・・所長の痕跡がありましたね。」

「湯浴み場があったな。

 所長たちはあそこで湯浴みを毎回しているのだろう。

 手直しして俺らも使ったが、なかなか良かったな。」

「ええ。所長と一緒に野宿をした経験から湯浴み場をすぐに作れましたね。

 湯を作るのに苦労しましたが・・・」

「・・・ファイアとアクアを同時にだからな。

 やった事なかったので力加減が大変だ。

 所長は普通に難なくしているが・・・あれは特殊なんだろうな。」

「ええ。

 所長が率先して湯浴み場を作りますし、お湯張りもしちゃいますからね。

 それでいて夕食まで作っているし・・・どちらが部下かわからなくなりますね。」

「・・・今度から気を付けよう。」

「ですね。

 と、村の入り口が見えて・・・誰か立っていますね?」

「そうだな・・・何かあるのか?」

「さて・・・?」

マイヤーとアーリスが首を傾げるのだった。

・・

簡易宿舎という名の村長の家の離れ。

「失礼します。」

マイヤーが扉を開ける。

「マイヤー、あ~。」

「ん、マイヤー、お疲れ様です。」

ビエラと夕霧が野菜をポリポリ食べながら片手を上げて挨拶してくる。

「村の入り口でお連れ様が来ていると言われて来てみたら・・・なぜお二方が?」

マイヤーがジト目で聞いて来る。

「あー・・・ユウギリ!」

「ん、様子見。

 タケオとアリスは明日は挙式の為、屋敷から出られないし、何やら忙しそう。

 私とビエラはヴィクターに言われて、マイヤー達が何人来たのか確認しに来ました。」

「・・・今日ここに来ると知っていたのですか?」

「ん、マイヤー達が出立した日は知っている。

 ヴィクターが逆算してくれた。

 なので今日には着くだろうという事で見に来た。」

「・・・そうですか。

 ここはエルヴィス領ですよね?」

「ん。昨日の野宿の場所からエルヴィス領という認識で問題なさそう。

 それにあそこはクゥが居た場所らしい。

 それは聞いています?」

「あぁ、あの場所がですか。」

「ん、えーっと・・・マイヤー達は何人居るのですか?」

「はい。わかりました。

 それとなく皆を見に行きましょう。」

マイヤーに連れられてビエラと夕霧が外に出るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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