第1142話 王立学院で過ごす方法。2(自覚症状がない自惚れ屋さん。)
「他に居ない・・・ですか?」
ジーナが聞いて来る。
「そうですよ。
自分より上位者が居ないという状況はつまりは自分の地位を脅かす者が居ないという事です。
そうなると人は『少しぐらいなら我が儘を言っても良いだろう』となり、自身の周りに自分を煽ててくれる者達を配置し始めます。
そしてもっと煽てて欲しいから皆に言うんですよ。
『あいつは俺より成績が悪いんだ、バカなんだから俺の言う通りにするべきなんだ』、『あいつは俺より外見が醜い、なんだあの顔は?あんな者は虐げられて当たり前だ』とね。
周りもその者の反感を受けたくないから『そうですよね。貴方の言う事は正しい』と煽るんです。
そして『あの人の矛先が自分に来ないように』と周りの者達が下位と見下している人達に手を出し始め、本人も『皆がしているなら俺もしないと示しが付かない』と手を出し始め・・・イジメの構図が完成するんです。」
武雄が呆れながら言う。
「ご主人様、酷い人達が居るものなのですね。」
「ええ。
ですが、そういった事に加担した者達は社会に出れば大半は駆逐されます。」
「駆逐?・・・ですか?」
「組織というのは馬鹿ではありません。
成績が良いから、外見が良いからだけでは採用はしないんです。
成績が良くさらに何が出来るのかを見ています。
自分の組織に入れた場合、部下達に馴染むのか、組織を維持するのに十分であるか・・・とね。」
「なるほど・・・でも、大半という事は少しは入るのですね?」
「入りますね。
それも主犯格の自惚れていた者ではなく、そういった事を表立ってやっていなくとも引き金を引いていた・・・つまりは上手く立ち回っていた者達が入ります。
そういった者達は強かです。
責任は自惚れている者に押し付けて自分達は責任を問われないようにしていきますからね。」
「・・・最悪ですね。
ですが、そういった者も社会に出れば何も出来ないのではないのでしょうか?」
ジーナがジト目で言ってくる。
「最悪ではあるのですが・・・能力がないかというのはどうでしょうか。
他者を煽てるコミュニケーション能力と誰を攻撃すれば地位が確保出来るかの状況の判断力、自身の能力に自惚れない自覚がないと取り巻きなんて出来ないんですよね・・・」
「つまり・・・私やスミス様が警戒すべきは自惚れている者ではなくその取り巻きという事ですか?」
「ん~・・・そうとも言えるしそうとも言えないですよ。
そもそも自惚れている人は何かしらの能力は高いんです。
口が上手かったり、機転が利いたりするものです。」
「ご主人様のような事をするのですね。」
「・・・私ですか・・・
私が自惚れているのかと言われると・・・わかりませんね。
自惚れているというのは自覚症状はありませんからね。
困ったものです。」
「自覚症状がない?」
「ええ、基本的に自惚れになりたい者なんていません。
ですが、気が付かぬうちになっているんですよ。
自惚れているというのは『特別な扱いを当然だと思っている状況』ですからね。
そういった状態の時は周りが見えていません。
『毎日美味しいお肉が出る。それは地域の経済が良いからだろう』とか『良い服が格安で手に入るようになった。それは原材料が安くなったからだろう』という場合は、実際はその者に納入される物の品質だけが良かったり、特別に値引きされているだけだったりもします。
『あいつは成績が悪い。それは努力をしていないからだろう』、『あいつは何をしてもどんくさい。それは何も考えてないからだろう』という場合は、相手がどんな努力をしているのか、本当に怠けているのか。確認も他者への共感力もなくただただいつも自分基準で物事を計っています。
・・・この『だろう』っという所が怖いんです。
要は調べもせず、相手の感情も考えずに自分の考えていることが正しいと無意識に思い込む事が自惚れなんですよ。
そして注意すべき周囲の人間は自分に対して煽て上手なのです。
誰も注意はしてくれません。」
「あ・・・悪循環です。」
「ええ、そうですよ。
なので・・・まぁ自惚れ屋さんもその取り巻きも注意しなさいとしか言えないんですよね。
それにどちらかといえばスミス坊ちゃんもジーナも自惚れ候補ではありますよ。」
「私がですか!?」
「ええ。
私やアリスお嬢様が後援に居て、滅多に会えない王家に普通に会いに行けて、各能力は高い。
そしてこの容姿。
皆がもてはやしそうですよ。」
「だよね~。
古今東西、名が知られる英傑の周りには名声にあやかりたいと近寄って来る者が必ずいるのよね。」
「コノハ、私は英傑ではないですよ。」
「何言ってるのよ。
ジーナは能力だけなら英傑クラスも狙える逸材よ。
あとは取り巻きよね。」
「良い人材と当たれば英傑、悪い人材が当たれば独裁者ですかね。
いや~寄宿舎でどう変わるか楽しみですね。」
「ね~。」
武雄とコノハが楽しそうに言う。
「ちょ・・・ちょっと待ってください。
ご主人様はそんな大事な時期の私を寄宿舎に入れるのですか?」
「はい、その大事な時期だからこそ友人が必要なのですよ。
多感な時です。どっちに転ぶかはわかりませんが・・・ジーナに取って良き友人が作れたら良いですね。」
武雄がにこやかに言うのだった。
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