第1137話 戦時食はどうするのよ。(どんどん作ろう。)
「あと食材以外でしたい事だと缶詰めですが・・・」
「「「缶詰めかぁ・・・」」」
武雄の言葉に精霊達が項垂れる。
「その反応は・・・難しいと?」
「そうねぇ~。
缶自体は出来ると思うわよ。」
「蓋を密閉するのがなぁ。」
「こればっかりは・・・それに保存期間もですね。」
「・・・ふむ。
容器は出来ても蓋をするのが難しく、さらに中身の消費期限も怪しいと。」
「「「・・・」」」
マリとニオは目を瞑ってしまう。
だが、コノハは何か言いたげな目線を武雄に向ける。
「・・・ん?なんですか?コノハ。」
「いや・・・別に?」
だが、コノハは武雄を見ている。
「・・・缶詰って鉄缶の容器に食材と調味料を入れてから缶と鉄蓋を2巻きか3巻きして完全密封をして、中の空気を抜けば出来ると思っているんですよね。
そうすればある程度の期間保存が出来ると思うんですけど。」
「うん、原理はあってるわよ。」
コノハが頷く。
「でも難しいんですよね。」
「そりゃあね。
缶自体を過熱させて中身も煮立った物を入れて蓋をするのよ?」
「・・・煮立った?・・・蓋?・・・
加圧注入技術?」
「そ、タケオは前に私達に言っているのよ。
実はやり方としては似たような技術なのよ。
で、蓋を閉める方法は?」
「過熱している缶の蓋を2巻き程度に・・・危険ですね。」
「そ、缶詰製作はそんなに楽じゃないわ。
さらに中身を入れて蓋をしてからさらに中の雑菌を殺す為に110から120度程度で7、80分缶を蒸さないといけないし、それに缶も腐食を考えれば内側に何かしらコーティングが必要ね。
特に今しようとしている初期の缶詰なら人力だからなおさら大変ね。
この次の段階だと完全自動化させないといけないけど、これは今直ぐにはどうにも出来ないわね。
スズネのミシンやタケオが作ろうとしている駆動部を応用し、さらに真空技術やらないと完璧な物は作れないわよ。」
「ん~・・・これは一旦、概念だけ書いておきますかね。
あとは缶詰ではないでしょうけど、乾パン作ってみましょうか。
これなら持ち運び用に缶に入れるだけでそこまで過酷な労働条件ではないと思いますし。
とりあえずここから始めていきますかね。」
「あ、金平糖入れようよ。」
コノハが言ってくる。
「確かあれって水に溶かした砂糖を雨のように降らせながら鍋をグルグル回すんですよね。
どれだけ労力が必要なんですか。」
「確か2週間だったかな?」
「・・・そんなにかかるならまずはキャラメルを普及させたいですね。」
「「キャラメルあるの!?」」
コノハ達が驚いている。
「あれ?言いませんでしたか?」
「聞いてない!スズネは知っていたの?」
「ええ。
エルヴィス家で出しているやつですよね。
前に武雄さんが各省庁に持って行ったのを見ましたけど、私の口には来ていませんね。
まぁキャラメルって大変そうなんで欲しいとは言いませんけどね。」
「あれ?鈴音に渡しませんでしたか?」
「貰っていませんよ。」
「じゃあ、研究所が始まったら用意しますかね。」
「おっしゃ!」
鈴音がガッツポーズを取る。
「タケオ~・・・」
コノハが捨てられた子猫のような顔をさせる。
「いや、コノハはエルヴィス邸内で食べれるでしょう?」
「食べれるの?」
「あれは執事やメイドさん達への感謝の念から作っていますからね。
使用人達の控室に行けば用意されていますが・・・欲しいなら料理長に言えば良いんですよ。」
「なんだ~。アリスに言っておこうっと。」
コノハがホッとしている。
「タケオ、某は・・・」
マリが捨てられた子犬のような顔をさせている。
「・・・ジーナ宛に月一でお送りしますよ。」
「かたじけない。」
「そうだ。コノハ、キャラメルを包む紙を考えているんですけど。
何かありますか?」
「・・・グラシン紙は・・・無理か。
ならオブラートは?あれならでんぷん水を薄く乾燥させれば何とかなるんじゃない?」
「コノハ、薄くとはどのくらいですか?」
「40μm。」
「えーっと、mmの次だったかな・・・
1/1000×1/1000だから・・・コノハ無理ですね。」
「じゃあ、紙の表面に薄く油を引いて乾燥させた油紙ってのもあるわよ。
でも物によっては匂いや味が移っちゃうんだよね~。」
「バターはどうですか?」
「そもそもバター自体が固化しなかったっけ?
匂いと味がないオリーブオイルとかは?」
「匂いも味もないオリーブオイルだとサラダオイルになっていますよ。
今の所、無味無臭のオイルはないですね。」
「とりあえず何種類か作ってみなさいよ。」
「そうですね。
油紙あたりなら作れそうですね。」
タケオが頷くのだった。
「すっごく盛り上がっているんだけど?」
エリカがジト目で武雄達を見ている。
「あれがキタミザト様でしょう。
私はもうあの方では驚くことをしませんのでこれが普通なんですよ。」
カサンドラがお茶を飲んでいる。
「・・・お姉様、これって・・・王都で流行るのではないですか?」
「ん~・・・そうよね。
ジーナちゃんが王立学院で食べてたら欲しがる人達が増えるでしょうね。」
「門外不出でしたか?」
「一応、販売するとはタケオ様は言ってはいないけど・・・どこかの段階ではするかもしれないですね。」
「ん~・・・」
スミスが考える。
「ほぉ、スミスが何か考えておるの。
まぁ当分は領内の事だけじゃろう。
鶏肉料理の方が先に街に出さないといけないからの。」
「お爺さま、早くしないと後ろが立て込んでいますよ?
タケオ様、料理の数を増やす気満々なんですから。」
「いや・・・今現在、順序を考えている最中なのじゃ。
もう少し待ってくれるかの?」
エルヴィス爺さんが汗をかいて孫たちを押し留めるのだった。
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