第1135話 実食。(やっぱり音がなぁ・・・)
武雄や料理人がうどんが乗ったお盆等々を持って食堂に入って来る。
「失礼します。
・・・この並びは・・・なるほど。」
武雄が鈴音達が端の席に居るのを見て頷く。
「タケオ様、スズネさんが音が出るから端で良いと言ったのですが・・・
音って何ですか?」
「麺をすするんですよね。」
「すする?」
「麺を吸って食べるんですよ。
こればっかりは何とも言えませんね。
今は久しぶりのうどんなので音とかは気になさらないでください。
では、配膳しますよ。
あ、皆さん、こちらからは食べ方については何も言いませんので好きに食べてくださいね。」
武雄の号令と共に執事やメイド達が皆に配膳していく。
今日の昼食はスープ用の深皿にかけうどんを入れ、別皿にかき揚げと小さな小鉢にカレーが入ってお好きにトッピングして良いとしていた。
ちなみにうどんは初めての麺作りなのでうどんサイズからひやむぎサイズまで混在していた。
この辺はご愛敬だろう。
・・
・
皆に行き届く。
急遽用意された布製の前掛けを皆がしていたりする。
「さて、食べますかね。
いただきます。」
武雄が鈴音の横に座り皆を見回して言う。
「「いただきます。」」
皆が一斉に食べ始める。
「ほぉ、優しい味だな。
少し甘いか?」
「そうですね、お爺さま。
それに堅魚節という物の匂いが少ししますけど・・・不快ではありませんね。」
エルヴィス爺さんとアリスはまずは汁から味わう。
「スープの中の麺を取るのに結構戸惑いますね。
フォークの隙間が大きくないといけないですね。」
「これは巻き取るのが大変ね。」
「エリカ様、なら巻かずに食べたら良いのでは?」
「そういう訳にも行かないんじゃない?」
「あ、これは少し慣れが必要ね。」
「だが、素朴で体に良さそうな味だな。」
「ミルコ、これ良いね。」
「お姉ちゃん、美味しいね。
あ、かき揚げを食べてからうどんを食べると味が変わるよ。」
「「本当!?」」
皆が初めてのうどんを食べている。
一方の日本組の席には何故か箸が用意されている。
「誰ですか?箸を用意したのは。」
「あ、私~。
うどんと蕎麦にはフォークではなく箸でしょう。
まぁ今回だけは貸してあげる。
タケオ、スズネ、箸を作っておいてね。」
「コノハ、ありがとう。
では遠慮なく使わせて貰いますかね。」
武雄が頷くのだった。
「・・・武雄さん・・・カレーは卑怯です。」
鈴音はコノハが箸を用意したのは出してきた時にお礼を言っていたので今さらは言わず、今はカレーとかき揚げを見ながら途方に暮れた顔をさせながら呟く。
「たまたま今日の夕飯用に用意されていたので拝借したんですよ。
私もかき揚げを作ってしまったので困っていました。
使うも使わないも鈴音次第ですよ。
あ、もちろんカレーは少しとろみはつけましたよ。
私はまずはかき揚げからっと。」
武雄はかき揚げをかけうどんに投入し、ズブズブと汁に沈める。
「カレーを拒否するなんてありえませんよ。
それにしてもどうしよう・・・かき揚げも良いよね。
カレーは絶対だけど後にして・・・ん?」
と鈴音がコノハの配膳を見ると、なぜか皿が2つある。
正確には空の皿が追加されていた。
「コノハちゃん、なんで空の皿があるの?」
「ん?それは当然、かき揚げうどんとカレーうどんをそれぞれ味わうために空いている皿を用意して貰ったからよ。」
「ひ・・・卑怯。」
鈴音がジト目でコノハを見るがコノハは気にしない。
「さっきまでうどんの指導をしていたんだもの。このぐらいは労働の対価よ。
それより伸びちゃうわよ?」
「くっ・・・まずはかき揚げから!」
鈴音も食べ始めるのだった。
・・
・
ちゅるん。
「・・・ふぅ、美味しかったぁ~。」
鈴音が最後の1本を食べ満足な顔をさせる。
「うむ、我も久しぶりに食べたが満足だ。」
「ええ、まさかうどんが食べられるとは某も思いもしなかったですね。」
「ほんとあの部屋に居た時には思いもしなかったわ。
堅魚節、十分ね。」
ニオとマリとコノハが感想を言っている。
「さて・・・どうでしたか?」
武雄がエルヴィス爺さんの下に行き聞く。
「うむ、うどんは美味しかったぞ。
じゃが・・・」
「タケオ様、食べる時は音を出してはいけないと思います。」
エルヴィス爺さんは難しい顔をするし、アリスは苦言を言ってくる。
スミスもエリカも頷いている。
「あぁ、やはりですか。
こればっかりはなぁ・・・私や鈴音が育った場所は麺を食べる際はある程度音が出てしまうのが当たり前でしたし、音を出して食べても良い食べ物でしたからね。」
「タケオ様もパスタは音を立てないじゃないですか?」
「ええ、しませんね。」
「なぜうどんは良いのですか?」
「そういう文化ですから。
それにフォークのように1口毎にまとめて食べるとかもしませんのでね。
ある程度、一気に口の中に入れないといけなかったのですよ。
気を使ってもある程度は音が出ちゃうんですよね。」
武雄が苦笑する。
「あ、皆さんが使っていた細い棒ですか?」
「ええ、私や鈴音は箸といって細い棒を2本で食べる食文化の中で過ごしていました。」
「え?でもタケオさん、普通にフォークとナイフを使いますよね。」
「ええ、使いますよ。
肉を食べる時はフォークとナイフ、米や魚、麺を食べる時は箸と使い分けをしていましたね。
まぁとりあえず皆さんの前ですすって食べないようにすれば問題ないでしょうね。」
「まぁ・・・個人で楽しむ分には・・・
ですが、他の方が居た際は厳禁でお願いします。
流石に外聞も悪いですし、もしかしたら怒る方も居ると思います。」
「はい、わかりました。
鈴音達にも言っておきますね。」
武雄が頷くのだった。
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