第1119話 第1皇子一家と第2皇子一家の話。(領地運営。)
第1皇子一家の屋敷内のクリフの執務室。
室内はクリフに執事長、騎士団長が居る。
「これまた、何という報告書なんだか・・・」
クリフは王都からの報告書を改めて読み、改めて愚痴をこぼしていた。
「キタミザト子爵殿はやはり相当の傑物ですね。」
執事長が頷いている。
「殿下、我らは5年後の軍事行動に参加は出来ないのでしょうか?」
騎士団長が言ってくる。
「・・・それは王都で下準備が出来ればでしょう。
殿下、向こうでも頑張ってください。」
執事長が騎士団長に言う。
「それは努力するが・・・父上と王都の局長達の判断次第だろう。
私が出れるかも定かではない。
ましてや第1騎士団を差し置いて新設の騎士団をか・・・」
クリフが腕を組んで考える。
「執事長は次の就職先は決まったので?」
「ええ、第3皇子一家・・・ウィリアム殿下方の所です。
執事とメイド達の半数も一緒にですね。
文官達は残り、この後に来る王都の管理者・・・たぶん新貴族でしょうけど・・・その者と話をする運びになるようです。」
「新貴族?・・・この地はゆくゆくはルイス殿下に継がせるのだろう?」
「ええ、私達はそう思っています。
ですが、その繋ぎの者は一度この領地を運営するんですよ?
殿下が来たからと素直に明け渡す事は無いでしょう。」
「なら・・・パッ」
「それは今話せないな。」
騎士団長が言う前にクリフが止める。
「「・・・」」
「皇子の派遣は時の王・・・正確には親が決める物だ。
父上も孫を領主にする事を明言はしないだろう。
そんな事をすれば私の意見が今後通らなくなる。
私が向こうに着任していくつか政務をこなせるようになって初めてパットの研修方法が提案出来るという物だと思っている。
事実、私がこの地に来ることを決めたのは父上が戴冠してからだ。
先代の陛下、祖父は私達への教育に意見は言わなかったな。」
「・・・そうなのですね。
殿下、この地に王家が戻って来るのでしょうか?」
「私は少なくとも3方面軍に王家は必要だと思っている。
カトランダ帝国とウィリプ連合国・・・2方面をニールに任せるのは広範囲すぎるだろう。
どうやれば民に負担なく上手く移譲出来るかか・・・王都で考えないといけないがな。」
「「ええ。」」
クリフの言葉に2人も頷くのだった。
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第2皇子一家の屋敷内のニールの執務室。
こちらは執事長とニールの2人が居た。
「あぁ・・・面倒な報告書だ・・・」
机の上の報告書の表紙を見ながらニールがぶっきらぼうに言う。
「・・・大体はこちらでも掴んでいる内容ですね。
実体験の方が素晴らしい内容ではあります。」
執事長が言ってくる。
「そうだな。
・・・それにしても戦争になる・・・か。
まぁ王都で前から話には上がっていたし、そう仕向けたのは俺達王家なんだが・・・これで皆が覚悟をさせられるだろう。」
「はい。
本格的に各局、各貴族が動く事と思います。」
「どちらにしても防衛戦と侵攻戦は初めてになるな。
うちとしてはまずは穀物価格と鉄価格は随時確認しておくしかないか。」
「はい。あと王都の軍務局と一研殿との連絡も密にされないといけないと思われます。
一研殿はこれからキタミザト子爵と戦術という分野で双璧をなすお方です。
どんな戦術を考えるか楽しみではありますね。」
「・・・一方の壁が厚く見えるな。」
「実績の違いでしょう。
ですが、一研殿は個としての才覚はありますし、軍務の事も当然わかります。
研究の事は研究員に任せておけば良いです。
新たな戦術を考え付けるのは彼しかいないでしょう。」
「確か・・・試験小隊の面々は各貴族から採用したのだったか?」
「はい。
うちにも来ましたので志願者に向かわせております。」
「バビントンの方にも文官と武官を入れたのだったな。」
「はい。
優秀な配下が抜けるのは痛手ではありましたが、問題は大きくはないかと。
4月よりの新人も才能豊かだと聞いております。」
「そうか・・・
だが、その新人達は無理はさせられないだろう。」
「わかっております。
最低限の事は出来るように早期教育は実施しますが、その後の伸びシロがどこまであるかは未知数でございますね。」
「若いってのは素晴らしいな。」
「全くでございます。
それとクリナ殿下が実施しています豆腐の件ですが。」
「勉強会を通して周知を実施しているが・・・どう動きそうだ?」
「はい。
酒場やレストランからの事前引き合いが予想を超えてあるようです。
街の中で専門店として2店を作る事になりそうです。
詳しくは後日報告書を提出してくると思われます。」
「2店舗・・・まずは様子見として1店舗のはずが・・・嬉しい誤算ではあるな。
だが、急いではダメになるだろう。市場動向の確認をした方が良いだろう。」
「はい、再度確認をさせます。」
「大豆の生産はどうなりそうだ?」
「エルヴィス伯爵領向け用の今年の分は確保しております。
ですが、今後の展開次第ではありますが・・・来年の作付け面積について、増産をするのかどうかの判断は早めにしないと農地の確保が出来ない可能性があります。」
「・・・小麦を今のままだからな・・・大規模には出来ないか。」
「ぜいたくな悩みかと。」
「そうだな。
悲観的でない政策の悩みは楽しい物だ。
その辺は出荷量が1.5倍くらいになっても良いように調整してくれ。」
「はい、畏まりました。」
執事が頷くのだった。
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