第1115話 テイラーと鈴音に依頼。(指導と防衛と鉋の製作。)
「で、タケオ、柔道の話をしに来たのか?」
「あ、そうでした。
違いますね。
えーっと・・・テイラーさんに2つほど依頼なんですけどね。」
「私にですか?」
「はい。
今度、米を作る為に農業従事者を雇ったのですけどね。
魔法適性があるので初級の魔法を教えて貰えませんか?」
「私がですか?」
「はい。
魔法小隊には既にアニータ達をお願いしていますからね。
それに新人さん達も来ますし。」
「どのくらい出来るようにすればよろしいですか?」
「ケアとファイアとアクアは出来た方が生活は楽そうですよね。
あとは本人がしたい事をさせれば良いと思いますよ。」
「わかりました。
明日にでも行かせて貰っても構いませんが・・・ご本人達の住んでいる所とか魔力量とかはわかりますか?」
「はい、住んでいる所は研究所の所の先の」
武雄が紙に書きながら説明を始める。
・・
・
「ベルテさん一家4名とニルデさんとジルダさんですね。」
「ええ、王都で計りましたが全員が魔力量が2000以上です。
ですが、一応テイラー店長の方でも調べてください。
それと発動出来なかったら例のケアを入り切りさせられる指輪を渡して・・・面倒なので出来る出来ない関係なく渡しておいてください。」
「ははは、わかりました。」
テイラーが苦笑する。
「武雄さん、名前を聞いた感じだと男性か女性かがわからなかったのですが。」
「そうですか?
ドナートさん以外は全員女性ですよ。
特に3名ほど美女です。ボーナお母さんはドナートさんの奥様ですので手出しは厳禁ですよ。」
「キタミザト様、私は節操という言葉は知っています。」
「でしょうね。
ですけど、どちらにしてもしばらくあの一家には穏便に過ごさせたいのです。
元奴隷でしてね・・・かなり嫌な事もさせられていたので当分はそういった事を考えさせたくないのです。」
「そうですか。
わかりました、その辺は踏み込まないようにします。」
「はい、お願いしますね。
と、もう一つは万が一の際の街の防衛協力の依頼です。」
「街の防衛協力?・・・ふむ・・・」
「陛下からは了承を得ていますけどね。」
「それ絶対ですよね。」
「いいえ。文書にする気もありませんし、私からの口約束です。
今年の中ごろに私達はこの街を留守にする予定です。
なので、その際に何かあったら城門の防衛かもしくはエルヴィス家の屋敷の防衛をして頂きたいのです。
鈴音達研究員はこの街に居ますから、一時的にその救援をしてくれれば良いです。」
武雄が説明をしているのを見ている鈴音だが「トレーシーさんの名が出ないという事は言ってはいけない事なんだ」と考えていたりする。
「・・・半ばですか?」
「実際は夏辺りかなぁとは思いますが・・・不確かな情報ですので気構えだけですね。
それに頼れる戦力は居ませんし。」
「アリス様は?」
「たぶんゴドウィン家の姉君が帰って来るでしょうからその警護でしょう。」
「ジェシー様ですね。」
「ん?前に会いましたかね・・・
メガネの時に居ましたか。」
「ええ。それもですが、この間もキタミザト様が戻って来る前にご来店されています。」
「そうなのですね。
ジェシーさんは身籠られているので万が一の際は避難してくる予定なんです。
なのでアリスお嬢様は警護ですよ。」
「なるほど。
わかりました、出来る範囲で助力いたします。」
テイラーが頷く。
「ええ、お願いします。
これは諸々の経費としてください。」
武雄はリュックから革袋を取り出しテイラーの前に置く。
「・・・わかりました。」
テイラーが中を見ないでしまう。
「あと鈴音、ブラッドリーさん達は居ますか?」
「親方ですか?
今連れてきます。」
鈴音が奥に呼びに行くのだった。
・・
・
「鉋・・・ですか?」
ブラッドリーが聞いて来る。
ブラッドリー達3親方が武雄の口や黒板で説明された事を鉋の概要を考えながら聞いている。
「ええ、黒板に書いたように。
元々は材木の表面を手前に引きながら削って平らにする木工加工用工具なのですけどね。
これをこう・・・裏返して箱に収まるようにして欲しいのです。」
「ふむ・・・箱や見た目は何とかなるでしょうね。
ですが、その刃の出を調整出来るようにして、あまつさえ逆向きにしても落ちない構造という所が難しそうです。」
「いや・・・昔何かの資料で見た事があるの。
何じゃったか・・・冒険者組合の創設者関連の資料だったような・・・
・・・確か、上下で2枚の刃を作り下の木を削る刃を抑えるために上の刃と台座で挟むという方法じゃったはずじゃ。
丁度、キタミザト様が示した構造を見て思い出したの。」
ボイドが考えながら言ってくる。
「爺さん本当か?」
「あぁ・・・だが当時は皆が文章だけの説明を見て懐疑的になってな。
『挟み込んでも調整するのに時間がかかるだろう』と言ってその後は気にもされなかったの。」
「・・・?・・・鉋って台座の側面部を叩いて刃の出を調整すると習ったような・・・」
「「「え!?」」」
武雄がボソッと呟くと3親方が武雄を見る。
「側面部を叩いて調整ですと?」
「ええ、木のトンカチで軽く叩きながらだったと。」
「「「軽く叩く!?」」」
「・・・少なくとも思いっきりとか力いっぱいというわけではなかったはずです。」
「ん~・・・」
「これはやってみましょうか?」
「上手く行けばハワース商会に売り込めるかもしれぬしの。」
親方連中が考えるのだった。
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