第1106話 入学を控えて。(ルークの観察。)
王都の下から数えた方が良い方の安宿にて。
「えーっと・・・制服は頼んだ。
提出書類も問題ない・・・費用もまだあるっと。」
一室にてルーク・マイヤーが荷物を確認していた。
父親達は2日前に王都を出立し、今はエルヴィス領に向け旅をしている。
安宿の一室にはベッド以外は引っ越し用の小箱が何個か積まれていて寝るスペースしかない状態だった。
「確か・・・今日の夕方には・・・いや実質明日には寄宿舎に入れる・・・だったかな。
はぁ・・・もう戻れないか・・・俺大丈夫なのか?」
ルークがベッドに仰向けになって寝ながら呟く。
「・・・少し外でも歩くか。」
ルークは気晴らしに散歩に出かけるのだった。
・・
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「ん~・・・」
ルークは喫茶店に入りテラスでのんびりと通りを見ているのだが、通りの反対側で女性3人と男性2人が馬車屋の店員と交渉しているのを眺めていた。
「ちょっと。これ通常より高いんじゃないの?
中古なのに新品並みじゃない。」
「そうは言ってもねぇ。お嬢さん。
時期が時期だからね。
中古もあれば売れてしまうんですよ。」
「そこをなんとか。」
「もう少し安くしてくださいよ。」
「そうは言ってもねぇ。
売ってやりたいが今が書き入れ時なんでうちも商売だからねぇ。」
男性2名も食い下がっている。
「ケイちゃん。これが相場みたいだね。
中古ってこんなに高かったんだ。」
「そうだね。
ジーニーが何か言っているけど・・・幌馬車としての物は良いのかな?
確か。軸を良く見るんだっけ?」
「御者の訓練はしたけど・・・幌馬車の良し悪しまでは習わなかったよね。
軸と車輪と馬の装具は事前点検だったよね。」
女性2名は用意された幌馬車のチェックをしているようだ。
「親父達は値段も気にせずに決めて確か2台買って向かったんだっけ?
まぁ最終的な金額については店員に安くして貰ったという事だったけど・・・
あの人達では店員の方が上かなぁ。」
ルークがため息をつく。
「ありゃ。こりゃ不味いわね。」
「不味いというか・・・そもそも交渉した事ないんでしょうね。
不慣れ過ぎですよ。」
ルークの隣の席の女性2人も向かい側の出来事を楽しそうに見ている。
一人は活発な感じの女性、もう一人は落ち着いた感じの女性。
共にルークよりも年上なのは確実でしっかりと結婚指輪がされていた。
「「「ん?」」」
ルークと女性陣2名が顔を合わせる。
「どうも。」
「どもども。」
「ごきげんよう。」
3人とも挨拶をする。
「少年。あの5人組をどう見る?」
活発そうな女性が聞いて来る。
「え・・・そうですね。
俺・・・僕も交渉なんてした事ないので言えませんが・・・
店員の方が上手いのではないのでしょうか。」
「そうかぁ。
本人達は一生懸命話しているんだけどなぁ。」
「足りませんね。
・・あの程度では足元を見られてしまいます。
もっと他の店と比較したり商店で卸している人に声をかけたりすれば良いのに・・・」
「セシリーさん。手厳しいですね。」
「デリアさんが甘いのよ。」
「それは否めません♪
だって彼女達は私の後輩ですもん。」
「魔法師専門学院ねぇ。
戦闘技術も必要だけどああいった際の交渉術も教えれば良いのに。」
「いやぁ~。それは時間的に無いでしょうね。
下手に教えるべきではないですよ。
それは所属先に着任してからじっくりと学ぶ事ですね。」
「・・・そうかもね。
さて・・・彼女達どうしましょうか?」
「ん~・・・助けてあげても良いけど。
今は経験の時なのかな。」
「じゃ。このままで。
デリアさん。買い物の続きをしましょう。」
「はい。セシリーさん。了~解~です。
多めに買わないといけなそうですね。」
「ま。これも後進の育成と捉えましょう。
では。少年。ごきげんよう。」
「少年。失礼するよ♪」
「あ。はい。」
女性2人が去っていく。
「んー・・・後進の育成かぁ。
俺もエルヴィス領に行く時は事前に幌馬車の価格は調べておいた方が良いか。」
ルークは通り向かいを見ながら言うのだった。
・・
・
王城近くの3階建ての建物の出入口に幌馬車が1台横づけされており男性が荷物を積み込んでいた。
「あ。ドム。戻ったよ。」
「あぁ。デリア。おかえり。
多めに買って来たんだな。しっかりしている。
すみません。セシリーさん。
買い物に付き合って貰って。」
「いえいえ。構いませんよ。
アンダーセンさんにはむしろこっちがお礼を言わなければいけませんよね。
私達の引っ越しを手伝ってくれているのですし。
オーラは部屋ですか?」
「トレーシーは今は部屋の掃除していますよ。」
「そうですか。
子供達は?」
「あぁ。うちの娘の面倒を見て貰っています。
部屋で父親の掃除の監視をしてくれていると思いますが。」
「ふふ。さて。ちゃんと監視をしてくれているか確認に行ってきますね。」
セシリーが部屋への階段を上がって行く。
「・・・ドム。確かセシリーさんってクラーク議長の娘さんでしたよね。」
「らしいな。
結婚の挨拶の時に初めて会ったそうだ。」
「・・・それとっても大変そう。
それにしても貴族の娘が一般に降りてくるんだね。」
「・・・セシリーさん。家事は完璧らしいぞ。」
「え!?本当!?
貴族の娘なのに・・・」
「なんでトレーシーとくっ付いたのかは未だに謎だ。」
「感じる物があったんだよ。
私もそうだもん。」
「そういうもんか。」
「そそ。そういうもん。」
「「ん?」」
アンダーセンと妻のデリアは上を見るがすぐに上を見るのをやめ荷台に腰かけて休憩を始める。
トレーシーが居る部屋からセシリーの怒号が聞こえたように思うが気にせずにのほほんと皆が降りて来るのを待つのだった。
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