第1100話 楽しい厨房。(堅魚節はかつお節。)
「・・・」
武雄は目の前の出汁が入ったお椀を3種類を見ていた。
1つ目は堅魚節を沸騰して火から退けたお湯に30秒程度を入れた物。
2つ目は堅魚節を沸騰して火から退けたお湯に1分程度入れた物。
3つ目は堅魚節を沸騰して火から退けたお湯に3分程度入れた物。
ちなみにそこはやっぱり素人。堅魚節は薄くは削れなく厚かったり粉状になったりした。
粉は粉のまま、厚くスライスしたのはみじん切りをして細かくして使用していた。
「・・・」
で。武雄の感覚では1つ目の方が旨味のみが出て来ており、他の2つは苦みが出てきているように感じるのだった。
「ご主人様。何を悩んでいるのですか?」
ジーナは出涸らしになった堅魚節に魚醤を和えた物をツマミながら聞いてくる。
武雄はそんなジーナを横目に見て「ジーナ。それはタマ用に作ったんですけどね。そんなに食べたらタマの分がなくなってしまいますよ?」と心配をしていた。
「ん~・・・」
武雄の感覚ではかつお節と同程度と見ていたが・・・煮出しが想像より短いのが気になっていた。
「ご主人様?」
「ジーナも舐めてみましたがどれが良かったですか?」
「えーっと・・・干し蟹や干しシイタケのようなあっさりとした口当たりなら1つ目ですが、3つ目も良いかと思います。」
「3つ目?・・・苦みがありましたよね。」
「はい。魚臭かったです。
ですけど、それもまた魚を食べているという感じになりました。」
「ふむ・・・魚臭いのが逆に良いと。
ちなみにお客様に出すにはどれだと思いますか?」
「1つ目ですね。
臭みに好き嫌いがあると思います。
ならあっさりとした味の方が万人に受けると思います。」
「なるほどね。
なら1つ目で良いでしょうね。」
「ご主人様。うどんという物は作るのですか?」
「明日にしましょうか。」
「明日ですか?」
「ええ。今から作ると夕食の邪魔をしそうですからね。
明日の朝に用意して昼食用に作ってみましょうか。」
「はい!」
ジーナの表情が「明日も美味しい物が!」という期待の目を向けられているのを武雄は感じるのだった。
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食堂にて。
「美味しい!アリス殿!このパン美味しいですよ!
いろいろな具材が細かく入っていて!こっちは肉、こっちはソーセージですか?
あっちもこっちも違う感じで良いですね!」
「ですよね。
王都ではタケオ様は作りませんでしたものね。」
「うぅ・・・!アリス殿。これ殿下領で出したいです!」
エリカが怒った顔をアリスに向ける。
「ま・・・まぁ。このピザはそもそも秘匿するような具材は使っていませんし・・・
ですけど。まずはうちの領内で流行らせてからにしてください。
その後なら良いと思います。」
「いつ流行らすんですか?
来月ですか?再来月ですか?」
「いつかなぁ~?タケオ様に聞かないといけないですね。」
「!?・・・なんでこの場にタケオさんが居ないの!?」
「タケオ様。なんか新しい料理を作っているみたいですよ?」
「・・・相変わらずですね。
まぁ良いです。作っているのなら後で食べさせてくれるのでしょう。」
エリカがウンウン頷いている。
「アリス。エリカ殿。食事中に政治の話は品がなさ過ぎじゃ。」
「すみません。お爺さま。」
「申し訳ありません。」
「そう言った事は食べた後で十分間に合うのじゃ。
今は目の前の料理を楽しみなさい。」
「「はい。」」
アリスとエリカが「美味しいね~」と言いながら食べている。
その横でスミスが「・・・お姉様。エリカ殿にこのピザ食べ過ぎると後々体型が大変な事になると言わないのですか?」と見ているのだった。
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武雄は厨房で書き物をしてた。
「えーっと・・・さっきの量でこの量が出来るんだから・・・
1回の食事で出す量は・・・んー・・・
料理長。これを出汁の一角とするならどのくらいの頻度にしますか?」
「そうだなぁ。
スープ担当。どう思う?」
「シイタケと小魚の出汁がメインですね。
蟹は値段も高いので何か催し物があればですし、この堅魚節も魔王国から仕入れるというのでしたらあまり頻度は高くないでしょうね。」
「月一で入れて貰うと仮定して・・・風通しの良い場所に保管をするにしても2週間程度でしょうかね。」
「輸送もあるからなぁ。
1週間半・・・10日前後と見るべきだろうな。」
「毎日出すと飽きられるか・・・週に3度が限度ですかね。」
「となると・・・月々15㎏か・・・」
料理長が武雄の手元を見ながら言う。
「15㎏じゃあ輸出してくれませんかね?」
「いや。してはくれるかもしれないぞ?
向こうも定期的な品物を入れられるメリットはあるだろうしな。」
「なら月一で15㎏買う時の値段を教えて貰いましょうか。
ついでに今回すぐに15㎏買うという話もしておきます。」
「おう。わかった。
まぁ主には上手く説得してくれ。」
「受け持ちは米と同様キタミザト家になると思いますよ?」
「そうだな。窓口は1か所の方が良いからな。
手に入ったら言ってくれ。」
「はい。わかりました。」
武雄が頷くのだった。
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