第1098話 当主達の仕事。(領内の事とクレープか。)
エルヴィス爺さんの書斎にて。
「ふぅ・・・流石に濃いの。
フレデリックも見ると良い。」
エルヴィス爺さんが武雄の報告書を読み終え机に報告書を置き、椅子に浅く座り直し腕を組んでため息をつく。
「では。失礼します。」
フレデリックが報告書を見始める。
「出だしからビエラ様なのですね。」
「ふむ・・・だが・・・これは変な話じゃの。
一般の者が魔物を売るという事実じゃ。」
「ええ。
まぁ表立ってはしないまでも裏ではまかり通っているのでしょうね。
そして人間もでしょう。」
「じゃろうの・・・ウィリプ連合国の闇は深そうじゃ。」
「はい・・・ふむ。王城に侵入した賊と再度会ったと・・・精霊魔法師。
向こうの上位の施政者もしくは軍部の者が精霊魔法師ですか・・・
厄介ですね。」
「施政者ならば戦場の最前線では活躍しないじゃろうが軍部の者だとしたらちと厄介か・・・」
「こちらにはタケオ様のパナ殿、アリスお嬢様のコノハ、スミス様のマリ、ジーナのパラス、スズネ様のテト、テイラー店長のニオですね。」
「その中で戦闘で使えると言っていたのはマリにテトか。
ニオは防御だったかの?」
「はい。
ですが、5年後の戦争ではどれも戦場には出せません。」
「ふむ・・・タケオだけじゃからの。
まぁ向こうの事は向こうで対応して貰うしかないかの。
魔王国はどうじゃろうの?」
「精霊魔法師の情報はそもそもが秘匿されていると思われます。」
「我が国もそうじゃからの。
まぁ秘匿というより認知させないという所か・・・まぁこの街では普通に出歩いているからの。」
「街中では混乱は見られないとの事です。」
「ふむ・・・街の皆は鈍感なのかの?」
「アリスお嬢様もいますし・・・特に精霊が居るから戦争に勝っているという風でもありませんので。」
「そうじゃの。
皆の努力で平穏が維持されているという認識だろうの。
そこに精霊が居る居ないは関係ないか。」
「そうですね。
と・・・ふむ。ベルテ一家は闘技場の元剣闘士なのですね。
・・・酷い内容です。」
「そうじゃの・・・タケオに会った事が吉と出ると良いがの。」
「はい。
それと・・・王都に置いて来た奴隷3名ですが・・・
ヴィクターの子飼いという所は知っていましたが、改めて向こうにも知らせたという事ですね。
それと魔王国 第4軍 先行偵察隊所属ですか。
魔王国も5年後の戦争に何か仕掛けるという事でしょうね。」
「そうじゃの。
表立ってというわけではないと思うがの。」
「我らも用心するべきでしょうね。」
「そうじゃの。
異種族は採用したいが紐付きは勘弁したいの。」
「政治的な思惑が入り込まないように・・・純粋に引き留めておけるように街の魅力を高める方針が必要でしょう。」
「ふむ・・・簡単に考えれば食と働き口の多さかの・・・」
「食はこれからでしょうが、確かに働き口の多さも魅力になるでしょうね。
街中に異種族が多くなれば同族意識で街を守る仕事をしてくれる者が増えるのは当然です。」
「ふむ・・・じゃが街からは難しいかもしれんの・・・」
「そうですね。各町でも構いませんが。
そういった事はまずは東町が適しているかもしれませんね。」
「じゃが、あまり積極的ではないという話じゃの。」
「ええ。
報告では村では自給自足程度の農地とあとは冒険者で生計を立てているという事ですので。」
「難しい問題じゃの。」
「はい。
推移は見守らないといけないでしょう。」
と執事が来て昼食の用意が出来たと伝えて来るのだった。
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エルヴィス家の厨房にて。
「これ・・・どうやって焼いたんですか?」
武雄が目の前の皿に乗っかる不審物・・・プリンが乗ったピザを眺めていた。
「美味しそうだろう?」
料理長が良い笑顔を武雄に向ける。
「・・・はぁ・・・生温かいプリンを乗せたパンなんて食べたくもないですが・・・
行きます!」
武雄が覚悟を決めて一切れ取ると口に入れる。
「・・・」
「・・・どうだ?」
「再考。」
「そうか・・・」
料理長がうな垂れる。
「と言うよりですね。
甘いパンがダメとは言いませんが、食事パンと菓子パンは別でしょう。
それに何でも焼けば良いという考えがダメですね。
ピザ生地にトマトソースを塗ってプリンを入れて・・・これはチーズですか?
トマトソースにプリンが合うと思いませんが・・・
だったら・・・まず生地を焼いておく。その上にプリンを下地として塗ってからバナナとかリンゴとかイチゴ、あと生クリームを使ってフルーツパンにして食べた方が美味しいですよ。」
「ふむふむ。
他にはどうだ?」
「そこまで行くとピザ生地にする必要はないかもしれませんね。
生地を甘くすればフルーツも美味しくなるかも・・・あ。クレープなんかも良いかもしれないですね。」
「クレープ?」
「ええ。砂糖と卵を小麦粉に混ぜて薄く焼いた物にフルーツと生クリームを入れて巻く食べ方ですね。」
「ご主人様~♪食べたいですぅ~♪」
ジーナが期待した目をしている。
「あぁ・・・これはうどんの用意をしたらクレープ作りですかね。」
武雄が苦笑するのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
皆様、本年もありがとうございました。
今年も誤字脱字が多い文章になってしまって申し訳ありませんでした。
アクセス数を見る事で皆様が毎日読んでくださっているという事を実感し、やりがいと勇気を頂けている事に感謝しています。
来年も引き続き誤字脱字のご指摘や道具の使い方等のご教授で迷惑をかけたりするかもしれませんが、当作品を楽しんで頂けたらと思っています。
皆様が今後もご健勝で過ごされるようお祈り申し上げます。
2018.12.31 ゼロ竹




