第1087話 次の目的地(馬車と下着の話。)
ヒルダと別れた武雄達は工房の前に来ていた。
「タケオ様。今度はここですか?」
「ええ。
お邪魔します。」
武雄が入って行く。
「いらっしゃい・・・キタミザト様!
王都からお戻りになられたのですね!」
ローチが作業服姿で出迎える。
他の作業員も手を止めて会釈してくる。
「ええ。戻りました。
なので工房を見に来ましたよ。」
「はい!ありがとうございます!
皆!休憩だ。」
「いえいえ。様子見だけですので皆さんの手を止める事はありません。」
「そうですか。
いや。緊急に修理の依頼がきているので・・・すみません。
おい!軸と荷台の調整を任せたぞ!」
「はい!しておきます!」
作業員達が整備を再開させる。
ローチに連れられて簡易応接に皆が座る。
「すみません。キタミザト様。アリスお嬢様。」
ローチが恐縮している。
「良いんですよ。気になさらずに。
で。社員の皆さんは了承してくれましたか?」
「はい!新しい幌馬車の研究の話をしたら皆が乗り気です。
それとテイラーから軸受けの試作が出来ていると伺っています。
まだ1軸分との事ですが・・・」
「この後行きますからその時に聞きますね。」
「はい!ありがとうございます。
実際はどのくらいから試験を始めますか?」
「ん~・・・今は挙式等々でバタバタしていますからね。
4月に入って研究所が正式に立ち上がれば・・・でしょうか。
船の件もありますからね・・・」
「はい。
設計の方はどうなっておりますか?」
「そういえば・・・確認しますね。
たぶん来ているはずですから・・・まぁ当分は馬車関係の研究ですね。」
「はい。
わかりました。」
ローチが頷くのだった。
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研究所用の訓練場。
「グルルゥ・・・」
「きゅ~・・・」
ドラゴン状態のビエラとチビッ子のクゥが昼寝をしていた。
腹を上に向けて。
「ニャ?」
「クルッ。」
「ガウッ。」
コラ達3主が傍で座っている。
「・・・なんでドラゴンがお腹を上に向けて・・・仰向けで寝ているのよ。」
鈴音の肩に乗っているテトが呆れていた。
「ドラゴンってお腹を上に向けて寝るのですね。
お腹冷えないかな?」
鈴音が感心しながら頷いている。
「・・・スズネさん。そこは感心しちゃダメですよ。
と。準備は終わりましたよ。」
「んー・・・これが棒ベアリングを取り付けた台車なのですね。」
鈴音が目の前の台車(板にベアリングで軸を固定した4輪の大き目の台)を見ながら言ってくる。
「荷が乗っていないので、ベアリングのあるなしでの差は感じないと思いますけどね。」
「これを試験して行くのですね?」
「荷台に付けてから試験だとは思います。
とりあえず今は動くかどうかの確認ですね。・・・スズネさん。これで良いと思いますか?」
「全然わかりませんね。
動くには動くのですけど・・・もっと整地した道で確認した方が良いのではないですか?
ここって小石が多いので抵抗が高そうですし。」
鈴音が台車を前後に押したり引いたりしながら言う。
「なるほど。
なら一旦小屋の横に置いて確認場所を検討してみましょうか。」
「・・・というよりも動きの確認だけなら店先で良かったのではないですか?」
「・・・確かにそうですね。」
テイラーが頷く。
「いや。それやる前に気が付くでしょう?」
テトがツッコむのだった。
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ラルフ店長の仕立て屋の店の奥にて。
「なるほど。
これは動きやすそうですね。」
アリスがスポーツブラを試着していた。
「もう少し締め付けを緩く出来たとは思うのですが・・・アリスお嬢様。いかがでしょうか?」
「私はこれでも平気ですね。
もう少しだけ締め付けが緩くても問題ないかもしれません。」
アリスが剣の素振りをしながら言っている。
「わかりました。
アリス様。もう1着試着願います。」
「はい。わかりました。」
「ジーナ様。こちらはどうでしょうか?」
「ん~・・・下側が緩く感じます・・・
私のより上の方用なのではないのですか?」
「なるほど。緩く感じるのですね・・・
今、下側の布をどうするか決めかねていまして、何種類か試したので締め付け感の違いを確認しています。
・・・では。ジーナ様。こちらはどうですか?」
「はい・・・こっちですね。
ん?あれ?こっちは今度はしっかりと収まります。」
ジーナが新しいスポーツブラを付けて左右に腕を回して感触を確かめる。
「なるほど。
あ。下のはどうですか?先ほどから試着して頂いていますが。
ブラの方と同じ感じで締め付けがあるようにしたのですが。」
「下は問題ないですね。
ただ、少し緩く作って欲しいですね。」
「はい。わかりました。」
「・・・」
「・・・あ。美味しい。
ブラの開発も大変なんだね。」
エリカとカサンドラがアリスとジーナの着替えを見ながらお茶をしていた。
カサンドラは「王都にも卸して貰おうかな?」と思い興味深々で見ているのだった。
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一方の武雄はと言うと。
「ほぉ。男性用の下着ですか。」
「男性用の運動用下着・・・確かに女性用と一緒に売り出すのはありですね。」
ラルフや設計陣と話をしていた。
「ええ。今はトランクスが一般的ですが、今よりも汗の吸収が良くなりそうな密着型の下着を作ってみてはどうですかね。」
「ふむ・・・密着型・・・」
「キタミザト様。こんな感じですか?
太腿まで伸びていた生地を股関節まで短くしてみましたが。」
職員がラフ画を見せる。
そこにはトランクスの密着型。ボクサーパンツの絵が描かれていた。
「これも良いですね。
ですが・・・こういった風も良いのではないですか?」
「両足の付け根部分までカットですか・・・
んー・・・斬新です。」
「先ほどのはボクサーパンツ。こっちはブリーフという形ですかね。
どちらも肌に密着する型でしょうけど。
結局は股間周りがしっかりと出来るかでしょうね。」
「ううむ・・・これは少し社内検討ですね。」
ラルフが腕を組んで考えている。
「あ。無理に製品化はしなくて良いんですよ。
男性用もいろんな種類があれば良いなぁと思っただけですし。
本気で走ったりする際に収まりが気になる人もいますし、汗を吸収して速乾が出来るなら股間周りの病気も減りそうですし。」
「わかりました。
とりあえず一回検討をして見ます。」
「はい。ありがとうございます。
と。奥はまだかかりますかね?」
「いえ。今日は試着だけだと思いますので・・・
あとは何回か着た状態でアリスお嬢様とジーナ様に運動をして頂く運びになるかと思います。」
「なるほど。では待ちですね。」
「はい。お茶を用意いたします。」
ラルフがそう言うと店員がお茶を持って来るのだった。
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