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第1086話 次の目的地(ウスターソースの話。)

ベッドフォードの店と通りを挟んだ向かい側。

「繁盛していますね。」

「ベッドフォード様の店は連日お客様がいらっしゃるようです。」

「ふむ。問題なさそうですね。」

武雄と隣にいるジーナが話している。

「・・・アリス殿。あそこって何のお店なのですか?」

「ウスターソースの製造と販売ですね。」

「あぁ。なるほど。」

エリカが頷く。


「あ。キタミザト様。」

武雄に声をかけて来る人物が。

「ん?あ。ヒルダですか。

 こんにちは。」

「はい!父がお世話になっています。

 キタミザト様は王都では?」

「昨日帰ってきましたよ。

 今は私のやりたい事を実践している人達に挨拶回りです。」

「あ~・・・青果屋さんですか。

 キタミザト様が販売してから毎日あの感じです。」

ヒルダもベッドフォードの青果屋を見て言ってくる。

「ふむ・・・街の噂はどうですか?」

「ウスターソースという魔法のソースが大人気です。

 うちも1小樽買いました!あれは凄いです!

 噂としては酒場やレストランで出している店が増えたって親たちが言っています。

 あと店によっては別途料金で出している所があると聞いています。」

「別途料金?なぜですか?」

「いえ・・・料理の値段を上げない為らしいですけど・・・詳しくは知らないです。」

「原価・・・高くないのになぁ。」

「どうもウスターソースに手を加えているという噂も聞いていますが・・・」

ヒルダが言い辛そうに言ってくる。

「それは良いのですが。」

武雄は気にもしないようだ。

「え?良いんですか!?」

ヒルダが驚く、ヒルダの中では自分が作ったソースに手を加えられるのは「味が足らない(・・・・・・)」と言われているので悔しいと思うのだが、目の前の発起人は違うようだ。

「あの~・・・タケオ様。普通はソースに手を加えられると怒ると思うのですけど?」

アリスが横から入って来る。

エリカもウンウン頷いている。

その様子をヒルダが見て「あ。私の感覚は普通なんだ」と安堵する。

「え?手を加えちゃいけないなんて私は言っていません。

 自分達の料理に合うように塩加減等々工夫を凝らすのは料理では当たり前でしょう?

 ソースは手を加えてはいけないなんて誰が言ったのです?」

「え・・・いや。タケオ様が作ったソースの味が足らないと言われているようなものですよ?」

「ええ。良いのではないですか?

 その店の料理には合わないのでしたら合うようにすれば良いのです。

 それで美味しい料理が提供できるのなら良い事です。」

武雄が頷いている。

「はぁ・・・まぁタケオ様が良いと言うなら良いのですが・・・」

アリスが難しい顔をする。


「アリス殿。苦労しますね。」

「でしょう?」

エリカとアリスが隣で労い合っている。


「これは挨拶に行くと邪魔しちゃいますかね。」

「平気だと思いますよ。

 店先で売っているの店長さんではないですから。」

「そうなのですね。」

「はい。」

ヒルダが頷く。

・・

「お邪魔します。」

武雄達は店に入って行く。

「いら・・・アリスお嬢様!?」

「こんにちは。ベッドフォードさんは居ますか?」

「はい!奥で会議中です!

 そのまま入ってください!」

店先の女性が武雄達を奥に連れて行く。


「お邪魔します。」

武雄が声をかける。

「お。キタミザト様。アリスお嬢様。いらっしゃい。」

ベッドフォードが片手を上げて出迎えていた。

「大将。売れていますか?」

「ああ!こんなに売れるとはな!

 おかげで今後の見通しが大変だ!」

「死なないようにしてくださいね。」

「・・・おう。わかっている。

 人も雇ったし、負担は少なくなっているはずだ。」

「それで・・・この集まりは?」

室内を見ると明らかに文官の者が2人居た。

「キタミザト様。

 今ベッドフォード様のこの後の製造工場の話をしていたのです。

 裏の街区を買い取るか今農地の所に建てるかの条件を洗い出しています。」

「・・・問題になりそうなのは匂いでしょうか?」

「ええ。裏の街区で匂いが出ることを嫌がる人もいるのは事実なのですが・・・かと言って農地にまで持って行くと今度は製造地が離れてしまうのでベッドフォード様のこの店と製造工場への移動負担が増してしまいます。

 あと賃料等々もありますね。」

「ここに至っては何も言えませんが・・・

 ちなみにいつぐらいなら新種のソースを追加で作れますか?」

「「し・・・新種!?」」

武雄以外の面々が固まる。

「タケオ様。何を考えたのですか?」

アリスが聞いて来る。

「いえ。今のウスターソースに手を加えてもう1種類作りたいのですよね。」

「それはどういった物ですか?」

「今のウスターソースは水気が強いですからね。

 もう少しとろみをつけたいのです。

 たぶん、ウスターソースにトマトソースと少々のハチミツを入れてもう少し煮込めば出来ると思うのですよね。」

「美味しいのですか?」

「私としては揚げ物に合うと思うのですよね。」

「今度食べさせてくださいね。」

「ええ。構いませんよ。」

アリスと武雄が話している。

「キタミザト様・・・それは売れると思われますか?」

文官が恐る恐る聞いて来る。

「ええ。思いますけどね。」

「・・・すみません。

 そのソースはレシピが確立してからで良いでしょうか?」

「わかりました。

 私がエルヴィス邸で作ってみます。」

「はい。お願いします。」

文官が頭を下げる。

「じゃ。大将。私達はこれで。

 また落ち着いたら来ますから。」

「お・・おう。わかった・・・いや。わかりました。」

ベッドフォードがぎこちなく頷く。

「では。」

「おじゃましました。」

武雄達が店から出て行く。

・・

「新種・・・作らないといけないんですよね?」

ベッドフォードが文官に聞く。

「当初と想定が違って来てしまいます・・・

 今のでも問題ないと思いますが、一度持ち帰って新種のソースを作れる場所があるか。なければ他の物件も見直してきます。」

「はい。お願いします。」

ベッドフォードが頭を下げるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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