第1082話 ベルテ一家の家。4(下着と挨拶。)
「ただいま。戻りました。」
「ただいまー。」
エンマとジルダが喫茶店に入ってくる。
「おかえり。
エンマ。ジルダ。何を買いましたか?」
「えーっと・・・下着買ったよ!
キタミザト様!いろいろあるんだよ!」
ジルダが報告してくる。
「ほぉ。いろいろありましたか。
着てみましたか?」
「うん!・・・いや。はい!
エンマとフローラがいろいろな形や色を着てから買ったの!
私とニルデは同じのをいっぱい!」
「あ!ジルダ!それは言っては・・・
あはは・・・キタミザト様・・・聞かなかった事に・・・」
エンマが顔を若干赤らめて言ってくる。
「残念ながら聞いてしまいましたね。
エンマさん。王都に比べて品数はどうでしたか?」
「え!?・・・えーっと・・・少ないかと・・・」
エンマが目線を落として言ってくる。
「ふむ・・・下着か・・・」
武雄が腕を組んで考える。
「タケオ様。何を考えているのですか?」
アリスが笑顔で喫茶店の入り口から聞いて来る。
「ん?種類が少ないというのがね・・・
私も思っていたんですよね。」
「下着がですか!?
私はちゃんと買っていますし、被らないように替えていますよ!?」
アリスが慌てる。
「・・・そっちでなく。
男性の下着も含めてですが、種類が少ないと思うのですよね。」
「え?男性用がですか?
あの~・・・私にはわからないのですけど・・・少ないのですか?」
「ええ。もっとあっても良いと思うのですよね・・・
まぁそれは女性用もそうでしょうけど・・・ん~・・・」
「あ。ご主人様。
スズネ様がスポーツブラという物をコノハと作りました。」
ジーナが入って来ながら報告してくる。
「スポーツブラかぁ。
サイズはしっかりと分かれていますか?」
「たぶん。
今は私用を作って貰っていますが、現在アリス様用もラルフ様の店で開発中です。」
「男性物の仕立て屋だったはずなのに・・・トレンチコートにダウンジャケット系そして第二研究所の制服と作業服。今度はスポーツ用下着ですか・・・
あの店はいろいろ始めてしまったのですね・・・何を目指しているのでしょうかね。」
「原因はタケオ様ですね。」
「否定は出来ませんが・・・あそこは動きが良くて頼みやすいのですよね。
あ。そうだ。
ご夫婦。今度ラルフ店長の仕立て屋で冬の時に温かく過ごせる羽織り物が出ますよ。
作業する際にも温かく過ごせる予定なんですよ。」
「ほぉ・・・農作業や喫茶店にも使えるのですか?」
「ええ。完璧に寒さを防ぐ物ではないのですが・・・今よりも温かく出来る予定です。
まぁちょっとお金はかかりますけどね。」
「んー・・・もう春先ですが・・・見に行って見ましょうかね。
今回の事で余裕が少しありますし。」
「ええ。見てみるだけでも良いので行ってみてください。」
「はい。わかりました。」
老夫婦が頷く。
「それと・・・下着かぁ。
作ってみたいですが、奧が深そうですからもう少し落ち着いてからですかね。」
武雄が少し考えて頷く。
アリスは「また何か始まるの?」と思うのだった。
・・
・
武雄はベルテ一家の屋敷の中に入りドナートとボーナと座りながら話している。
総監部の文官とジーナは部屋の端に立っている。
アリスとエリカとカサンドラとエンマとフローラ、ニルデとジルダとアスセナは喫茶店でお茶をしている。
「生活は出来そうですか?」
「はい!
ありがとうございます。」
「一生懸命頑張らせて頂きます!」
「では。私からの引っ越し祝いとして・・・浜風。」
「はい。」
スライム状態の浜風が武雄の横にやって来て狼になり返事をする。
「エルダームーンスライムを貸します。
緑スライムは水溶性の肥料が作れますし、雑草取りや青スライムに水やりを教えれば重宝するでしょう。」
「伝説のエルダームーンスライムですか・・・」
「ええ。
ですが・・・非力なので番犬にはなりませんから室内で飼ってください。
食料は残飯をあげてくださいね。」
「わかりました。」
「ドナートさん。これから何をしていきますか?」
「取りあえず畑の区分けを考えて行きます。
今の所、私の中では、中央に交配させる作物用の試験農地とその奥にニルデとジルダのタンポポ用地。
その周りを腰くらいの木々で囲み 中央からこの家まで野菜を何個か作ろうかと。
そして周りは米を作ってみようかと思っています。
更に畑全体を1~2m程度の広葉樹の木々で囲むことをして行こうかと思います。
あとは区分けの境に土を盛って小道を作ろうかと思います。」
ドナートが説明してくる。
「ふむ・・・」
武雄はその場で簡単に絵を起こす。
盛り土はあぜ道というやつか。田舎に行った際に見た事あるけど畑の区画間を移動するのはこれが楽なのは確かか。
そして・・・中央に小規模の試験農場か・・・25m×30m程度か?
なるほど・・・確かに結果を求めると言っても周辺からすればそこまで大規模という括りでないから周辺の農家への影響もなさそうだし、私の趣味程度に思われる量になるのか。
これなら改良の成果が出てくればエルヴィス家の方の試験農場に移管してから大規模に行って行けば良いという事になる・・・
案外これで正解なのかも・・・あくまでうちは「小規模な最初の確認」という位置付けにすれば・・・となるとエルヴィス家の経済局の試験場から依頼を貰うという方向に持って行った方が・・・でもそれだとベルテ一家が面白くないだろうな・・・ここは話合いの場で最初はうちのやりたい事を飲ませるか・・・・・・やりたい事をさせてあげたいしな。
ま。実際は周辺で作っていない作物をベルテ一家が品種改良に選んでくれることを願うのみか。
「よし。
とりあえず。数日は生活に慣れることを主眼に置いてください。
いろいろと疲れるでしょうが、頑張ってください。
私もいろいろとあるので頻繁にはこれませんし・・・1か月くらいはゴタゴタしていると思います。」
「そうでしたね。
キタミザト様は挙式でしたね。」
ボーナが苦笑する。
「誰かしらたまに様子は見に来させますけど、何かあれば・・・
浜風。皆にスライムを寄こしなさい。
緊急時は浜風は即時退却。戦力にならないのならすぐに逃げること。
むしろ戦闘経験だけならドナートさん達の方が場数を熟しているのでこの辺の人間程度なら何とかしそうですけどね。」
「はい。わかりました。
すぐに後退し、ユウギリ達に報告に行きます。」
「そうしなさい。」
武雄が頷くのだった。
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