第1076話 エルヴィス邸に帰還。7(夕食後。常軌を逸するエルヴィス家の日常。)
客間にエルヴィス家の面々とエリカとカサンドラが来ていた。
ちなみにベルテ一家とニルデ達は夕食後部屋に帰って行った。
夕食のデザートにこし餡団子ときな粉団子が出て最初は見た目の色的に訝っていた面々も食べてからは初めての食べ物に驚くやら嬉しいやら甘いやら・・・とりあえず満面の笑顔をさせて、余韻を楽しみながら部屋に帰って行った。
「という事をコラ達に言いました。
なのでコラ相手のビエラの教育は待ってください。」
ミアは時雨の事は話さずにコラ達だけの事を話していた。
「良いですよ。1か月後ですね。
ま。ビエラはそれまでに試験小隊相手に教育させますから問題ないですよ。」
ミアが皆の前で武雄に報告をし、武雄が了承していた。
エルヴィス爺さん達は口を出さず「ふーん」と聞いていた。
ちなみにその内容にエリカとカサンドラが顔を引きつらせていた。
さっきここで自分が話した内容とは別方向で大事を始めるとミアが言い始めて、尚且つこの場の者達は「じゃその間に別の事をするか」と簡単に決めているのが信じられなかった。
エリカは「私仕事の中身を考え過ぎなのかも・・・もっと大らかに考えられるように生きないといけないんだね」と思っていた。
カサンドラはというと「こっちに就職しなくて正解だったかも」と密かに思っている。
「タケオ。よろしく頼むの。
街道もあるからの。」
エルヴィス爺さんが頷く。
「わかりました。
南西地域及び南地域はウィリアム殿下領への新規街道整備の予定地域だったはずですからミアが率先してそこに住む魔物を押さえるのは良い事だと思います。
どんな結果になろうと街道周辺の治安は良くさせます。」
武雄も容認する。
エリカとカサンドラが呆れている。
「うむ。
南町にはもう依頼はしているが、街道にも隣接させた村を作り、陸運と水運の両方の停留地にするつもりじゃ。」
「タケオ様。
こちらとしては船の停留所を考えないといけませんので早い段階で船の外見をお教えして欲しいですね。」
フレデリックが要望を出してくる。
「まだ何もしていないんですが・・・わかりました。形が見え始めたら相談にいきます。」
と武雄は言うが、「船か・・・新しく考える幌馬車との互換性もしくは作業性を考えて思案しないといけないよね」と大枠を考え始める。
「タケオ。そう言えばロバートから手紙が来ていたぞ。」
「ロバート・・・テンプル伯爵からですか。
王都でお会いした際に船の設計が出来る者を紹介して欲しいと頼みました。
その回答でしょうね。」
「うむ。
ヴィクターに渡してあるからの。」
「主。総務局より届いております。
明日朝にお持ちいたします。」
「はい。わかりました。
そういえば魔王国との輸出入はどうなったのでしょうか。」
「うむ。
今回は商隊を通してのやり取りだからの。
ローの店に発注がされたのは確認しておるの。
米の受け取りは商隊から総監部でとしているし、支払いは総監部がしてタケオに請求する運びになるじゃろう。
まだ進展はないがの。」
「・・・商隊かぁ。
魔王国側から珍しい物とか売り込みはなかったですか?
私達のウォルトウイスキーみたいな。
こっちの領主に物を見せるから何かしら試供品か試食品があると思ったのですが・・・」
「ないの。」
エルヴィス爺さんが答える。
と。タケオ達の足元にいたスライムが小棚の方に行き左回りをしているが誰も気にしない。
「そうですか・・・
普通は他国の領主相手にはしないのですかね?」
「いきなりはしないかのぉ。
じゃが、タケオのウォルトウィスキーのように売れるとわかっている物についてはしても良いと思うがの。」
「・・・タケオ様。ウスターソースはいつ対外出荷する予定ですか?」
フレデリックが聞いて来る。
「・・・始まったばかりで次ですか・・・
まぁ政策とはそういうものでしょうけども・・・ですが、先を論じる前にそもそも領内向けの生産が追い付いていないのではないですか?
私が居ない間に局長方が話し合っていると手紙は頂いていますが。」
「ふむ。
タケオ。エルヴィス家としては西町に依頼しウスターソース向けの野菜の増産を予定しておる。
開始は春からじゃの。
規模は村4つ分の年間収穫量と試算し足らない分は新たに作らせる予定じゃ。」
「・・・それはどこまでの出荷を予定しての量でしょうか?」
「領内全域と領地外へ少しの販売が出来る量であるとしか言えません。
正直に言えば西町局長にはこれ以上はまだ言えませんでした。
この量は現状の西町が管理している農地を1.8倍程度する案になります。
これ以上では局長の心臓が保てないでしょうから。
ですが、タケオ様が契約された魔王国に面している4貴族領分+魔王国分はさらに領内で作らないといけないのです。
ですので、今後の開墾計画を作る為にタケオ様の心の内を聞いておきたいのです。」
フレデリックが難しい顔をさせて言ってくる。
「・・・私はウスターソースを広めたいと思ったのは、偏にこの地の領民達を幸せにする為に契約をしてきました。
目先の利益の為に領内の民の生活が悪くなることを望んではいません。
まずは、領内の各町に商品を納入出来るようになるまでは対外輸出はする気はありません。
なので4月以降の作物増産を契機に領内販売網の整備と生産能力の安定化をまず最優先にさせたいと思います。
対外輸出はその後、再来年以降の話と思います。」
「うむ・・・じゃが、実際にウィリアム殿下とジェシー達には知られている。
少なくともジェシーの所には今月からでもある程度を入れ、ウィリアム殿下の所には領地移動後から入れないといけないの。
今年後半からの輸出量は領内と領外で調整をして行くしかないが・・・あとはベッドフォードの努力次第となるかの。」
エルヴィス爺さんが難しい顔をさせる。
「・・・ヴィクター。」
「はい。主。」
「キタミザト家の現状の財政の余剰分の算出をしなさい。
今月末時点の動産資産を含めた数字を知りたいです。」
「畏まりました。
明日の昼過ぎにお持ちいたします。」
「頼みます。」
武雄がヴィクターに指示を出し、ヴィクターが頷く。
「エルヴィスさん。
いくらかでしょうが、エルヴィス家に新たに融資します。」
「すまんの・・・」
「いえ・・・本当は私がすべきなのでしょうが、ウスターソース事業の大枠は総監局に頼っているのが現状です。
指揮をお願いしているのです。資金ぐらいは補助をさせて頂きます。」
「タケオ様。ありがとうございます。」
フレデリックが頭を下げる。
アリスもスミスも頭を下げる。
「初期段階で躓く訳には行きませんよ。
何としても作物の増産とウスターソースの工場の増産体制を上手く軌道に乗せないといけないでしょう。
今年の出来高はわかったのです。
でも今年分のジェシーさんの所への原材料がない・・・ならどこからか買うしかないでしょう。
ベッドフォードさんへの追加融資・・・上手くしてあげてください。」
「はい。
タケオ様。すぐに財政局と経済局で話し合いを始めさせて頂きます。」
フレデリックが頭を下げる。
アリスやスミスは何も言わずに真剣に領主と相談役の話を聞いている。
エリカが目を見開き驚いていた。「何て言う話を帰宅早々しているんだ?この人たちは」と思うのだった。
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