第1069話 139日目 エルヴィス邸に帰還。(コラの試練。)
武雄達は夕暮れ時にエルヴィス邸がある街の城壁が見える位置まで来ており、最後の休憩をしていた。
「・・・何事もなく来ましたね。」
「何かあったら困ります。
というよりも・・・全く魔物の気配もしないようですね。」
アーキンが武雄の胸ポケットの住人を見ながら言う。
「ですね。
領内に入ってからビエラが成獣になっていますからね。
訝しんで街道に出て来ないんでしょうね。
適度な魔物除けになった訳です。」
ミアが頷く。
「ん?・・・」
ミアとパナが街道の先の森を見る。
「主。コラとモモが来たようですよ。」
「挨拶ですかね?」
「前もこんな感じでしたね。」
「そうでしたね。」
武雄とミアが頷きあうのだった。
「「二ャ。」」
コラとモモが武雄とミアに挨拶する。
「コラも久しぶりですね。
元気でしたか?何かありましたか?」
武雄がコラを撫でながら聞く。
「二ャ二ャ。」
「主。大きい事は特にないそうですよ。」
「そうですか。
モモ。番予定の雄はどうですか?」
「二ャ~?」
モモが照れているのか顔を背ける。
「お。良い感じという事でしょうか。
モモも所帯を持つのですね。
コラ。一人で大丈夫ですか?何ならタマを戻しますよ?」
「ニャ。ニャ。」
コラが首を振る。
「主。コラは『子育てが終わったからのんびり過ごしたい』そうです。」
「・・・コラ。この地の魔物を統べてくださいね。」
武雄が「目的覚えてる?」という目をする。
「ニャ~・・・」
コラが目を逸らせる。
「主。自信がないそうです。」
「言ったでしょう。自信があろうがなかろうがやるしかないんですからね。
・・・あ。そんなに自信がないなら強制的に付けさせますよ?」
「・・・ニャニャ?」
コラが「え?何をさせる気ですか?」と恐々聞いて来る。
「うちに最強の無駄飯食らいが居ますから戦わせますか。」
「ニャー!?」
コラが一気に顔色を悪くさせる。
「ははは。そうですか。嬉しいですか。」
武雄が朗らかに回答する。
「ニャ!ニャ!?」
「いえいえ。礼には及びませんよ。
そうですよね。
魔物として一度は最上位に挑みたいという気持ちがあるのは当然ですよね。
いや。コラの気性はわかっていますよ?
娘も嫁に行くのです。この地の平和を願うのは当然。
ですが他領地ではあるものの一度敗れてしまったからとこの地のトップを辞退するのもわかります。
なので、ここで皆の前でドラゴンと互角の勝負をしてトップに相応しい所を見せたいとは・・・
いやはや。やはり私とミアが見込んだだけの事はありますね。」
「ニャ!?ニャ!!ニャー!?」
コラは武雄が話している時も武雄を制そうと前足で攻撃してきたが武雄は尽くシールドで防いでいた。
「おっと。お互い生死を賭けての戦いはしちゃダメですからね。
ある程度力加減はしないとダメですからね。」
「ニャニャ!?」
「あはは。そんなに喜んで貰うと企画し甲斐がありますね。
ビエラ!出来ますね?」
武雄がビエラを見て確認する。
「はい!任せ・・・て!タケオ!」
ビエラが返事をする。
「ニャ?・・・?」
コラが武雄への攻撃をピタッとやめてビエラに顔を向ける。
「あ。彼女。人化していますがドラゴンですからね。」
「・・・!?」
コラがこれでもかというくらい口を開ける。
「あ~♪」
ビエラが悪い顔をさせながら「よろしくね。お嬢ちゃん♪」と言い放つ。
コラは卒倒するのだった。
周りの皆はと言うと。
「あ~・・・キタミザト様とビエラ殿が楽しそうにしている。」
エンマが呆れていた。
「笑顔でラジコチカの全力攻撃を防いでいるのは誰もおかしいと思わないのかな?」
「それにしても・・・あのラジコチカ・・・コラと言われていましたか?
凄く涙目になっているのキタミザト様は気が付いていて言っていますね。
可哀相に。」
フローラも呆れ、ボーナがコラを気遣っている。
「とりあえず。キタミザト様の意向に逆らうと何かペナルティがあるという事はわかったな。」
ドナートが頷く。
「タケオさん。あくどいわ。」
「あくどいというよりも計画犯ですよ。
あれ。絶対元々からさせる気だったんです。」
「そうかなぁ?」
「ええ。見てください。アーキン殿達の目を。」
「ん?・・・憐れんでいるわ。」
エリカがアーキン達を見て答える。
「あの目は知っています。
良く訓練で見ていました。同類を憐れんでいるのです。
つまりビエラ殿と試験小隊は模擬戦が待ち受けているのですよ。」
「発足したてよね?・・・解散させる気なのかな?」
「まさか。
キタミザト殿は皆を一旦死の淵まで行かせたいのでしょう。
そこを超えれば大概の事は出来るようになりますし。」
「いや。タケオさんの小隊って王都守備隊でしょう?
その辺の訓練もされているんじゃないの?」
「・・・再教育なのではないでしょうか?
手っ取り早くするにはドラゴンに頼むのが早そうですし、この間キタミザト殿が体験していますから。」
「ん~・・・実体験に即した訓練かぁ・・・」
エリカが考える。
「第3皇子一家では出来ませんからね?」
「そこは・・・思っていないけどね。」
エリカが考えを深めるのだった。
「ニルデ。あの猫可愛いね。」
「そうだね。
あとで触らせて貰おうか。」
ジルダとニルデだけは我関せずを貫いていた。
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