第1068話 134日目 ドラゴン戦。(塹壕戦術とは。)
前回作った露天風呂を手直し用意が終わり女性陣が入っている。
「・・・はぁ・・・」
武雄が焚き火を見ながらウトウトしていた。
「所長。眠そうですね。」
アーキンが聞いて来る。
「ええ・・・肉体はケアで回復しても精神的には疲れました。」
「所長。あの塹壕・・・でしたか。
あのやり方は私達もするべきでしょうか。」
「・・・さて。
私としてはまずは小銃の慣れを最優先にしたいですね。
小銃は魔法は使いませんが、遠くの物をしっかりと狙うという行為は疲れます。
魔法でもそうでしょう?」
「そうですね。
確かに狙って撃つのは精神的に疲れますか。」
「同時になんでも出来たら良いのでしょうけど。
初めての物を同時に何個もなんてしない方が良いですよ。
塹壕での戦い方の経験は小銃がまともに扱えるようになってからでしょう。」
「はい。わかりました。
・・・所長。これから戦争の形態は変わるでしょうか。」
「・・・さてね。
個人の意見で戦争形態が変わるというのは通常ではあり得ません。
ですが・・・その個人が圧倒的な成果を残したのなら周りは少しずつ変わらざるを得ないというのはあるでしょうね。
なのでウィリプ連合国でどういった戦闘が行われるかによって変わるかもしれませんね。
さて、今回見せた塹壕での戦い。
アーキンさん。小銃を装備した際の戦い方は見えますか?」
「小銃は魔法師の射程外への攻撃方法という考え方と今回の魔法を塹壕を作る為の補助に回しての戦闘。
2つを考えた場合、防御をする際に敵の侵攻速度を抑え込む遅滞行動の一環として有意義であると思います。」
「なるほど。遅滞行動ですか。
続きを。」
「はい。
戦闘域から例えば・・・関までの間を事前に何列にも横に塹壕を作っておきます。
そして相手との距離が350mもしくは400mに達した所を1回もしくは2回撃って後ろの塹壕に移動する。
これを何回もする事で向こうの魔法師の射程に入る前にこちらが攻撃を仕掛ける事が出来るならば、こちらの魔力の消費をある程度抑えて防衛が出来るのではないでしょうか。」
「・・・ですが、何列か後退したら一番最初に使っていた塹壕がバレます。
相手が塹壕に入って来てしまいませんか?」
「そこは所長がしたように埋め戻して置けば良いのではないでしょうか?
完璧に戻すというよりも膝くらいまで戻せば塹壕として使えないので問題ないかと。」
「・・・なるほどね。
それも良いかもしれませんが、戻すのに魔力を使うのは勿体ないかもしれないですけどね。」
「確かに・・・小銃を使うメリットがあまりなくなってしまいますかね?」
「ま。そこはやりようですよ。
今考える事ではないでしょうね。」
武雄が頷くのだった。
「キタミザト様。ドラゴンと対峙してどうでしたか?」
「どうもこうも・・・やる気は起きませんね。
こちらの攻撃は何も通用しないのですよ?
逃げ回って気を引いて、さらに逃げて・・・
過去の皆さんはどうやって対応していたんですかね?」
「あぁ。そこはフレアウォールやフロストウォールといった中級魔法に魔力をかけてジリジリと体力を削って行くんですよ。」
「面倒そうですね。」
「ええ。割りに合いません。
なのでドラゴンとやり合う時は大変らしいですよ。
一応、王都の騎士団3個小隊もしくは貴族の騎士団で4個小隊で出来ると言っていますけどね・・・さっきのあれを見るとやり方をしっかりと見極めないといけないという事はわかりました。」
「・・・となると防御だけで見れば私は王都の騎士団3個小隊分となるのか。
うちの試験小隊はゆくゆくは3個小隊になるから何とか対応出来るという考えで良いのかな?」
武雄が考える。
「・・・そのドラゴンを挟んでの戦力評価やめませんか?
実際にはドラゴンなんて対応した事ないですし。」
アーキンが呆れながら言う。
「ダメですか?」
「ダメです。」
「ベルテさん達のエルフの国の方はどうだったのですか?」
「そうですね~・・・
そもそもドラゴンは気性が優しいのでどこかを攻めるとかもしませんが・・・
極稀に遊びに来てのんびりと滞在してワインを買っていきましたかね?」
「・・・相変わらず暇人ですね。」
武雄が声を出して呆れる。
アーキンが「え?ドラゴンは気性が優しい?」と違う事で驚いている。
「ビエラやクゥを見てればのんびりと過ごしているのはわかるのですけどね。」
「まぁ言われてみればそうですね。」
アーキンも同意する。
「はぁ・・・良い湯浴みでした。」
エリカ達が戻って来る。
「おかえりなさい。」
「久しぶりの空を見ながらの湯浴みは最高でした。」
エリカが焚き火の輪に入って来る。
「さてと。男連中で風呂に入りますか。」
「「「は~い。」」」
武雄達が立ち上がり露天風呂に向かうのだった。
・・
・
「あ~♪」
ビエラも焚き火の輪に加わりお茶を飲んでいる。
「ビエラ殿。どうでしたか?」
「楽ちかった♪・・・意外と・・・タケオ・・・強い♪」
ビエラが言う。
「所長はこの国で上から数えても一桁台は確実な強者ですけど。」
ブルックが苦笑する。
「あ~・・・」
ビエラが難しい顔をさせる。
「ん?どうしましたか?」
「いえ。ブルック様。ビエラは『タケオが上位だと魔王国には勝てないかな』と。
たぶん。主よりも強い方が多いと言いたいのだと思います。」
「はい!」
ビエラがミアの説明で返事をする。
「私達は人間ですから・・・個人で魔物に勝てるとは思っていませんよ。
だから兵士が居るのです。
何とか侵攻させないようにしないといけないのです。」
「あ~・・・あ。」
ビエラがウンウンと唸っている。
「ビエラ。な~に言っているんですか?
『ま。あの陛下なら侵攻はしないだろう』とは。魔王国の陛下を知っているような口ぶりですね。
自堕落なドラゴンが何を知ったかぶりを。」
「あー!」
「嘘おっしゃい!」
ビエラとミアが睨み合う。
「ははは。まぁまぁ。
前の街で買った菓子がありますよ。
男性陣が帰ってくる前に食べちゃいましょうか。」
ボーナが菓子を出してくる。
「あ~♪」
「いただきま~す♪」
ビエラとミアが我先にとお菓子に手を伸ばすのだった。
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